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勇者の失敗  作者: 林育造
10/25

第10話 余所見してたつもりはなかったんだ

少々長くなったので、分割しました。

後半は今日夜に予約投稿しています

ちょっとあれな話なので、食事が終了してから読まれることをお勧めします

おぉ、屋台だ。肉串だ。

チートは基本的に肉が好きだ。そう頻繁には食卓に上らなかったが、ビーフステーキなぞ大好物である。もちろん豚肉や鶏肉、ラム肉も有りだ。

しかも実は、そういった普通の肉以外にカンガルーやワニ、ニシキヘビの肉までも食ったことがある。別に幼少の頃熱帯地方やオーストラリアで暮らしていたわけではない。高校2年の春の遠足で河原バーベキュー大会をやった時、担任の先生が持ってきてコンロに載せたのである。カンガルーとニシキヘビはブロック肉になっていたが、ワニの脚がクーラーバッグから出てきたときにはクラス全員、「この先生に逆らってはいけないのだな」と言うことを理解したものだ。

それはともかく、ファンタジーと言えば屋台で串に刺さった肉を食わねばならない。

チートは香ばしいにおいをさせている肉串を売っている屋台に近づいた。

「おっちゃん、2本でいくら?」

「おうよ、銅貨12枚だ」

「んー、8枚にならない?」

「ならねぇよ、じゃあ10枚だ、3本12枚でもいいぜ。」

「じゃあ3本で。」


小説を見ると、屋台での買い物に於いてほとんどが言い値で買い物をしている。チートはワニ肉の担任から「外国の屋台では値切るのが基本でそれが文化と言うもの」と聞いていたので値切ってみたのだが、屋台のオッチャンはしっかり安くしてくれた。2本で銅貨8枚にはしてくれなかったが、3本で12枚にしてくれたのは、そうすると多く売れるからであろう。


チートは受け取った肉串のうち1本をフェンリィに渡した。

他の3人?みんなそれぞれ適当に好きなものを食ってます。

「わぁ、チート様ありがとうございます。」

「うん、一緒に食べよう。」

香辛料が効いててなかなか美味い。


「あ、野菜スティックがある、あれも食べよう。」

肉を食ったら野菜も食べる、これは食事の基本だよな。

チートはニンジンとセロリのような野菜?香草?が切りそろえてあるスティックをこれも値切って銅貨5枚で購入した。10本あったので半分フェンリィに渡そうとしたのだが、フェンリィはこれは受け取らなかった。まぁ、犬の獣人だけあって主に肉食なんだろう。


異世界で串焼きを食ったら、次は

「それじゃあ、ギルドに行こう。」

「??……なんですかそれは??」

「え?この世界にはギルドがないの?」

「聞いたことはありませんが、それはなんですか?」

「んーっと、冒険者互助組合かな。」

「あぁ、トレジャーハンターですね。やっている人々も少数ですがいますし、発見したものを買い取ってくれる商会もありますが、トレジャーハンターはハイリスク・ハイリターンである分自己責任です。」

説明を聞くに、意味は通じたようだ。翻訳魔術マジ便利。しかし、ギルドはないらしい。

あきらめきれないチートはこっそり後ろを向き、

「シロ、こっちはギルドってないの?」と頭上の白いネコ(チュートリアル)に聞いてみた。

『ないニャ。そもそも互助組合を作る意味が存在しないニャ。それに、ギルドは窓口が必要ニャけど、その給料分の利益が出せるとなったら必ず貴族が出張ってきて同じような組織を作って儲けようとしているはずニャ。』

「なるほど、人員を使って動かすことができる組織が成立するなら、国が一つしかないここでは貴族がそういった組織を作っているはずか……。」

「…………―ト様」

「異世界と言えば冒険者だと思ったのになぁ。」

「チート様!」

「おっ、あぁごめん、考え事してた。なに?」

危ない危ない、一人でつぶやく変な人になるところだった。


「えっと、どうやらみんなとはぐれたようです。」

「ナ、ナンダッテー」

シロと話すのに夢中になって、他の3人とはぐれてしまった。こういう屋台が並んでいるところは道を一筋間違えると、どんどん離れて行ってしまったりする。なんとなく戻ってみたが、シロと話していて景色を見ていなかったため、さらに見覚えのない場所に入り込んでしまった。見るからに、治安に問題がありそうな場所である。

チートは探査をかけてみたのだが、場所が場所だけにあまり知られたくないものが多いらしく、あちこちに”探査ジャマ―”がかかっておりそのノイズのために探査を広げられない。

「フェンリィ、あの3人のにおいとかしない?」

「こちらが風上なのか、わかりません。今日はマーキングもしてきていませんし……。」

「マーキング?……って、あぁそういうのね。」

うん、しなくてよろしい。今のフェンリィは王宮内の服装から、エプロンを取ったような格好をしている。つまり、必要最低限の衣服しか着けていない。その面積の少なさは、コンビニの18禁コーナーにある雑誌の表紙レベルである。防御になるのかと思ったが、獣人の探査能力の一つに現在位置の把握があり、そのためにマーキングしやすい格好になっているのだろうか。


「よう、にぃちゃん、ちょっとお金を貸してくれねえか?」

王道と言えば王道、テンプレ中のテンプレ、チンピラさんの登場である。チートは見かけ通り17歳、本来こんな場所にくるような歳ではないのである。

ややこしいのが出たな、と思ったチートは無視することにした。チートもフェンリィも、速めに走ればそこら辺のチンピラが付いて来れる訳がない。だが、チンピラは言葉の選択を間違えた。

「アニキ、だめですよ。さっき見たけどコイツ、銅貨ばっかりしか持ってませんでした。おまけにエーベルの肉くらいで値切りやがって、しけてやすぜ。」

「そうか、じゃあさっさとしけた銅貨を置いて、おうち帰ってお母ちゃんのおっぱいでも飲んでろや。」


「あんだと、コラ#」

ここのところチートが落ち込んでいたり、街の人たちの視線が痛くなった元々の原因はそのお母ちゃんのおっぱいなのだ。傷口を抉られて、というか、抉られた傷口に塩をすり込まれたようなものである。NGワードにより、チンピラの殲滅(八つ当たり)が決定した。

トンっと足元を蹴ってしゃべったチンピラに一瞬で近づくと、手の甲でパシッと顎を跳ね上げる。猫じゃ猫じゃの逆の動きと言えば分かる人には分かるだろう。

まったくそれらしくないが、チートとて戦闘力チートの勇者なのだ。スピードも、攻撃力もチンピラがかなうわけがない。もし、まともに殴っていればチンピラAの首が胴体から離れて転がっただろう。逆猫じゃで脳を揺らされたチンピラは積み上げたこんにゃくが崩れるような動きで倒れた。

「す、すんませんしたーー」

もしここで「やんのかコラ」とか返していれば、チンピラBも土のベッドで寝ていただろう。だが、攻撃を受ければ手を出して良い相手かどうかわかる程度には人を見る目があったらしい。チンピラBはチンピラAを抱えてそそくさと去って行ったのである。


ワニ肉の先生は、卒業してから遊びに来たらバラムツの刺身を食わせてやる、と言ってました。焼くと溶けてしまうので刺身でしか食えないが、生で食ってはいけない魚らしいです

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