第二十一集 ゴウリの住む木、大猩樹!
結論から言うと、大猩拳の森へは何の問題もなく着いた。
ジーショウが懸念していた、夜行性の危険生物に襲われるという事もなかった。
それは、夜目が利くとの事で案内役となったレサのおかげ……、ではなかった。
夜目がどうこうなんて関係なかった。
「レ、レサ、あの~」
「何、エノ?
わたし、眠い……」
黒猩拳の里を発って初めて迎えた夜、日が沈み夕食を済ませると、いのいちばんに寝ようとしたのはレサだった。
てっきり暗いうちはレサが夜番をするか、何かしら対策してくれるのかと思っていたので、寝入りばなのレサに思わず声をかけてしまった。
「いや、夜に出るっていう、危険な生き物は大丈夫なのかな〜と……」
「大丈夫。
気配がない。
わたしを信用したまえ……」
そう言うと、レサは夢の世界へと旅立った。
「仕方ないニャ。
レサを信用するニャ」
「そうだね……」
結局夜はいつも通り、僕とタマが交代で番をすることにした。
ちなみにレサは昼もよく寝た。
「あの山に向かってまっすぐ歩いて……、湖が見えたら起こして……」
そんな感じで要所要所で指示をくれると、あとはタマの背中でグーグー寝息をたてていた。
「これでよく夜も寝られるよね……」
「確かにニャ〜。
でも小さいから、赤ちゃんみたいでかわいいニャ」
「そうだね。
タマ、疲れたらおんぶするの代わるよ」
「ニャー、大丈夫。
これも修行ニャ」
レサは終始こんな感じだった。
でも無事に、大猩拳の森へ到着出来たのでとりあえずは感謝だ。
レサの何かしら目に見えない力が働いていたのか、ただ運が良かっただけなのか……。
「あれ、ゴウリ様はあの木にいる……」
レサが指差した先を見ると、森の真ん中にあって、周りから頭ひとつ抜け出ている大きな木が目についた。
「行こう……」
「ニャ!」
レサはタマの胸の前で抱えられていた。
その姿は本当に人形の様だった。
「うわっ!」
「ニャ!」
大猩拳の森に入るとすぐにゴリラに会った。
二足歩行でノシノシと歩いていた。
ゴウリほど大きくはなかったけど、それでもアムくらいはあった。
僕とタマはビビっていたが、レサは至って冷静だった。
「おはよう」
まるで近所の顔馴染みに会ったみたいだった。
ゴリラの方もレサの事を知っているのだろう、レサの挨拶に手を上げて応えていた。
僕らにも軽く会釈してくれたので、僕らも返しておいた。
「サルじゃない僕らがいても、あんまり気にしないんだね」
「ゴウリ様の下には、他の国の使者が来ることもあるから。
それにワタシもいるし……」
そう言ってピースするレサ。
ジーショウが「何度も行っている」と言っていたのは、嘘じゃなかったみたいだ。
それからも何度かゴリラに出会ったが、みんなそんな感じだった。
その後、レサの指示するまま歩いていると開けた場所に出た。
その正面には、まるでお城みたいに大きな木がドーンと立っていた。
「着いた……。
ここがゴウリ様のいらっしゃる大猩樹」
木の根本には大きく穴が空いていて、そこから木の中に入れるようだった。
それにしてもなんて大きい木だろう……。
あの山みたいなゴウリが住んでるんだから当然か。
「行こう……」
「ニャ」
相変わらず、タマに抱かれたまま言うレサに従って、僕らはゴウリの住む大猩樹の中へと入った。
「うわー、これが木の中なんだ……」
「信じられない広さニャ……」
樹の中は意外に明るく、そして想像以上の広さだった。
物など一切置かれていなくて、ただ一面の広い空間だった。
その空間のど真ん中で、ゴウリがごろりと寝転んでいた。
敷物を敷いて、その上でりんごをかじっている。
それを見て、レサがタマの腕からピョンと飛び降り、ゴウリへと近づいていく。
「ん? おお!
誰かと思ったら我楽護のレサかゴリ!
よく来たゴリ!」
「お久しぶりです……。
ゴウリ様におかれましては、ご機嫌う△□◎✕◯◇ざいます……」
〈噛んだ……〉
〈めちゃめちゃごまかしてたニャ……〉
多分、レサはああいう畏まった挨拶とか苦手なタイプだ。
僕も苦手だからその気持ちはよく分かる。
でも、レサは何事も無かったかのようにスンとしている。
いい度胸だ。
ゴウリがノソノソと体を起こす。
「硬い挨拶は無用だゴリ。
どうせいつも言えないゴリ。
ところで、今日はどうしたゴ? ん?」
ゴウリが話の途中で僕らに気がついた。
タマは抱拳礼、僕はペコリと頭を下げた。
「おお!
お主等はえーと……、そう!
タマとエノだったゴリな!
豹猟拳との一件では世話になったゴリ!
今日はまたどうしたゴリ?」
ゴウリからそう問われると、タマがズイッと前に出た。
その顔には、何か決意の様なものが漲って見えた。
「ゴウリ様、お久しぶりでございますニャ。
今日はゴウリ様にお願いがあって来ニャした」
「お願いゴリ?
儂にゴリ?」
あぐらをかいて、腕を組むゴウリ。
すると、タマがガバっと両手両膝をついて土下座の格好になった。
「な、なんの真似だゴリ!」
驚くゴウリに向かってタマが言う。
「ゴウリ様!
ワタシを弟子にしてください!」
そう言われたゴウリはポカンとしている。
「弟子〜?
ネコのお主を?
ゴリラの儂が?
それはまたゴリな……」
「お願いしますニャ!」
渋るゴウリへタマがもう一度頭を下げる。
そこで僕は、カバンからアムの手紙を出しゴウリへ手渡した。
「ゴウリさん、こちら虎皇拳のアムさんからのお手紙です」
「手紙ゴリ?
アムからゴリ〜?
嫌な予感がするゴリ……」
恐る恐るといった感じで手紙を開くゴウリ。
手紙はすぐに読み終わった様だった。
読み終えたゴウリは、何故か顔色が悪かった。
「ぐっ!」
急にゴウリが片膝をつき、苦しそうに肩で息をする。
「大丈夫ですか!?」
ゴウリの下に慌てて駆け寄るが、ゴウリはそれを手で制した。
「だ、大丈夫ゴリ!
ちょっと考え過ぎただけゴリ!」
〈でも、顔色が……〉
ふらふらと立ち上がるゴウリ。
そして、タマを見つめると徐ろに言った。
「タマ、とりあえず話を聞くゴリ。
何があったか話すゴリ」
「ありがとうございますニャ!」
あまり乗り気では無さそうなゴウリだったが、話を聞いてくれる事になった。
まだ弟子入りが決まった訳じゃないけど、とりあえず良かった。
良かったけど、それにしても、
〈手紙に何が書いてあったんだ!?〉
読んでいただきありがとうございます。
アムからの手紙には何が書いてあったのでしょうか?
次回は肉球がでてきます。
よろしくお願いします。




