アルフレートの栄光の道 後編
妃候補であり、我の幸運の珍獣、マルグリットは8歳になり寄宿学校に入った。
茶会は毎月ではなくなった。
しかしかつては我も通った、勝手知ったる学校だ。
いつでも会いに行ける。
回りの大人どもも、我が未来の妃に会いに行くのを止めなかった。
ムシャクシャした時。何かに悩んで煮詰まったような時。
気分転換に学校に行く。
すると懐かしい先生らには歓迎され、後輩どもは騒いだ。
我は人気者だからな。
学校でのマルグリットはいつも元気に怒っていて、王宮にいた時と何も変わらなかった。
ちょっとからかって、王宮に帰る。
すると、よしやるか、という気分になれた。
ただひとつだけ注意しなければいけないことがある。
マルグリットを限界を超えて怒らせてはならん。
マルグリットの炎のような怒りが、氷のように凍てつく時。
幸運の効果はなくなるばかりか、我の気持ちまで凍てついて、回復まで時間がかかるのだ…
「殿下はアダルベルトのが好きなのですか?」
ヴィムがそんな質問をしてきたので、鼻で笑ってやった。
「女として?いや、ないない。珍獣だぞ?」
「ですよねえ」
「そりゃそうだ」
見習い侍従四人は揃って満足そうに頷いた。
こいつらはマルグリットが気に食わないらしい。
まあ気持ちはわかる。
見習い侍従として厳しい教育を受けていた時に、マルグリットが王宮で自由に振る舞う姿を散々見ていたからな。
「我はあの珍獣が嫌いではないぞ。けど女ってのはなあ。もっとしとやかでかわいらしくないと。あんな獣のような様子では我の妃にならんと貰い手もいなかろう」
「確かに!」
「では、もし、別のかわいい姫が妃候補に上がったら?」
「もちろん、そっちにするさ!」
アハハハハッと皆で爆笑した。
「そういえば、ヨゼフィーネ王女のところに新しく入った侍女がすっごくかわいいって!」
「へええ!」
「見に行ってみるか?」
「行きましょう!」
やっぱりな、女はかわいいのが一番。
未来の妃はマルグリットでしょうがないとしても、かわいい恋人は常に募集中だ。
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とうとう王太子と呼ばれる立場になった。
王宮の部屋も王太子宮に移った。
見習い侍従たちは正式に侍従に上がった。
そろそろマルグリットとの婚約の儀を執り行うべきではないかと、父上たちが話していると聞いた。
そんな矢先。
「娘を妃候補から外していただきたい」
アダルベルト侯爵から出た言葉は王家側の誰にとっても青天の霹靂だった。
「内々のことで恐縮でございますが、マルグリットはアダルベルト侯爵領を継ぐことになりまして」
「なんだと!?」
内宮、王家の私的な応接の間にて。
父上と母上、我が並ぶ前で、侯爵は穏やかな口調で言った。
「何か問題がございましょうか?娘はたかが妃候補であって、婚約の儀も行なっておりません。何のお約束もないものと認識しておりましたが」
口調は穏やかだが、言葉に妙な棘があるような。
ちらりと父上と母上を見る。
お二人とも難しい顔をされている。
父上がはあ、と深く息をつき仰った。
「侯爵もわかっておろう。国の情勢が揺らぐ中、これまで姫ひとりを婚約者と定めることができなかった事情は」
「不甲斐ない娘で。間に合わせにしかなれず、お恥ずかしい限りでございます。今更尊き宮に入れていただくなど、おこがましいこと」
侯爵の言葉は、いまいち意味がわからない。
が、何やら遠回しに嫌味を言ってる気配がする。父王に対して!
何に腹を立てているのかは知らんが、アダルベルト侯爵は聞きしに勝る無礼な男であるらしい。
母上が我を見て言った。
「ですが侯爵。アルフレートは姫をとても気に入っているのです。他の姫を妃になどと、とても考えられないと思いますわ。ねえ、アルフレート」
「そんなことは全くありませんが」
聞かれたので正直な気持ちを言うと、母上の顔が引きつった。
「…何を言うの、アルフレート。あなた姫恋しさに学校まで会いに行くほどだったではないの」
「姫に対し、恋しいという気持ちはございません。もし望みが叶うなら、結婚は別の姫としたいものと常々思っておりました」
本心を語る。
マルグリットが妻になれば、毎日楽しいかもしれんが、刺激的過ぎて疲れるだろう。
それにどうしても女とは見れない。
マルグリットに触れたり、甘い言葉を囁いたりしたら、笑ってしまうだろう。
マルグリットは幸運の珍獣なのだ。それ以上でもそれ以外でもない。
侯爵がにこりと笑った。
「王太子殿下もこうおっしゃられております。無理に結婚させても良い結果にはなりますまい」
「いや、侯爵…」
「しかし…」
父上と母上がしどろもどろになって、いろいろと仰ったが、侯爵はのらりくらりと交わすようなことを言う。
そしてとうとう。
「わかった。マルグリット姫はアルフレートの妃候補から外す方向で話を進めよう」
父上が仰った。
その瞬間、我が胸に湧いた不思議な感覚はなんだろう。
「アルフレート、本当によろしいの?後で取り消すことはできないのよ?」
「もちろんです、母上。言ったことを取り消したりは致しません」
元々我にとってマルグリットは、見れば楽しい気分になり、元気になれる。それだけの存在。
気が向いた時にちょっと会えればそれで良く、それ以上を望んだことはない。
妃候補である必要などないのだ。
…ただ、マルグリットには哀れなことをしたかもしれん。
恐らく次の貰い手などみつからんだろう。
だがまあ彼女なら、結婚など関係なく強く生きて行くであろうが。
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ー四年後。
絵姿を見て思わず口笛を吹いた。
我が友にして侍従である四人が何だ、と後ろから覗きこみ、おお、と感嘆の声を上げる。
「美少女!」
「これが…」
「隣国のカテリーナ王女?」
マルグリットより5歳下、我とは11歳も違う少女。
それがやっと決まった我の婚約者だった。
「いや、さすがに美化し過ぎであろう」
「それはまあ、絵姿というのはそういうものですからねえ」
「殿下の絵姿だってすさまじい美丈夫に描かれてたもんな。後光がさして、どの天使かと思ったら殿下だったっていう…」
「お前は黙れ、ヨーゼフ!」
見せられた絵を思い出すと恥ずかしくなるが、絵姿とはそういうものらしい。
「しかしどう低く見積もっても、あの珍獣よりは確実に可愛いですよ。金髪だし」
「オスカー、金髪好きだな…」
「それになんと言っても王女!侯爵の娘とは格が違います」
「確かに」
我は頷いた。
マルグリット…今は侯爵になっているが…から考えるとずいぶんレベルアップしたなと思う。
むしろ、前はなぜ侯爵の娘如きが我の妃候補であったのか不思議だ。
「しかし今12歳。結婚する時14歳だと…。少しばかり子ども過ぎんか?」
「年の差11歳くらい、普通ですよ!それに女は若ければ若い方が良いとよく申します。結婚してから殿下好みに育てればよろしいのです」
「さすが7歳下と結婚したばかりの奴はいい事言うなあ、ヴィム!」
「お前の嫁も5歳下だったろう?オスカー」
実は四人、全員すでに既婚者である。
もっと言えば第二王子である我が弟も結婚している。
王太子の結婚相手を決めることが簡単でないのはわかっていたが、あまりにも回りが先に結婚していくので、最近は焦りを感じていたところだった。
しかし決まった相手がこれ以上ない身分の女だったおかげで、我の面目も立ったと言えるだろう。
「まあ、相手は一国の王女だ。相手にとって不足はなかろう」
国は違えど、我と同じく王家に生まれた高貴なる少女。
きっとわかり合えることも多かろう。
喜怒哀楽を共にして、慰め合い、悩みを共有し、真剣に国の未来を語り合える関係になれれば良いな。
未来の妃に想いを馳せた。
隣国と我が国の関係をものすごく単純に言うと、昔は仲が悪かったが、今は両国の利の為に仲良くしようと努力している間柄ということになる。
国の豊かさでは断然我が国の方が上だが、軍事力は向こうがほんの少し勝るかもしれん。
つまり決しておざなりにできない、慎重に関わらねばならん国である。
そんな隣国に、本格的な婚約を交わす為に向かうことになった。
国を出るのは始めての経験。侍従四人も一緒だ。
6日ほども馬車に揺られて、やっと隣国の首都に到着した。
街を見下ろす高い丘の上にそびえ立つ灰色の頑丈そうな建築。それがこの国の王宮らしい。
一言印象を言うなら、強そう、だろうか。
我が国の優美な白亜の王宮とは、用途からして異なっていそうである。
王宮ひとつ国によってこうも違うかと興味深い。
少し大仰ではないかと感じるほど丁重に、物々しい雰囲気で王宮に迎えられた。
そして案内された先にいた少女を見て、一目でこれが婚約者だとわかった。
なぜなら絵姿そっくりだったからだ。
豊かな金髪、薔薇色の頬、長いまつげに縁取られた空色の瞳。
淡いピンクのドレスと慎ましく目線を伏せて立つ姿は、シクラメンの咲初めを思わせる。
「おお」
「美少女だ」
後ろから侍従らの小さいつぶやきが聞こえた。
ドキドキと胸を高鳴らせながら王女の前に進む。最初の印象が大事である。
相手は11歳も歳下の少女。怖がらせてはならない。
なるべく落ち着いた声を心がけながら挨拶を述べた。
「アルフレートと申します。カテリーナ王女、お会いできて光栄です」
お辞儀をし、そのまま返事を待つ。
ところがどこからも声は返らず、手も差し出されない。
「‥‥‥?」
ちらりと王女を見ると、彼女は泣きそうな顔でうつむき、横に立っていた母親の後ろにたたたっと隠れ姿を隠した。
…なんだ?
母親…王妃が眉を下げて言った。
「あらあら。申し訳ございません。王女はこのように引っ込み思案な質ですの」
「はあ…」
‥‥‥引っ込み思案で挨拶も出来ない?
いや、引っ込み思案で片付けていいのか?
「王女は普段、宮の奥深くから出ることはあまりございませんが、今日はアルフレート王太子の為に頑張ってここまで参りましたのよ」
んん?
ここにいるだけですごいことなのだ、とでも言いたいのか?
しかし言いたいことはぐっと飲み込む。
「…それは光栄です。これほどお美しい王女でしたら、むやみに表に出ては世の男どもの心を騒がせましょう。奥深くお隠れになるのは正しいことかと」
「ホホホ、アルフレート王太子はなかなかお口が上手ですこと!気に入りましてよ」
母親に気に入られても…。
王女の方はうんともすんとも言わず、母親の後ろからぎゅっとしがみつく小さな手とピンクのドレスの裾だけが見えている。
ひどく無礼な振る舞いに見えるが、特に誰も姫を促したり、叱ったりはしない。
これはこの国では普通のことなのか?
この場で我が、顔くらいしっかり見せろ、と怒るわけにもいかない。
「皆々様にこのように暖かく迎えていただき…」
引きつった笑みで、何も問題ないというポーズを取るしかなかった。
「あれ、どう思う?」
案内された客室で我が国の者たちだけになったところで、四人の侍従たちの意見を尋ねた。
オスカーが言う。
「深窓の姫君て感じでしたねえ。殿下のお好みでは?」
確かに弱々しくて内気な女が好みだと言ったのは我だ。しかし限度というものがあろう。
「13歳にもなって挨拶ひとつ出来ないとは。マルグリットが6歳の時は…」
「殿下、あの珍獣と一緒に語ってはなりませんよ」
「…そうか」
「たいそう可愛らしい方だったではありませんか。羨ましい」
「そうですよ。あの御方でしたら殿下にふさわしいと」
侍従たちが口々に言う。
そうか。こいつらはあの王女が気に入ったか。
しかしあれで王妃がつとまるのか?
この国では知らんが、我が国の王妃とは常に国王の隣に立ち、時に国王の代理も努める存在である。
我の前で何も言えず親の後ろに隠れるような少女が、居並ぶ臣下らの前に毅然と立てるのであろうか…
その日の夜は我の歓迎パーティが開かれた。
次々とやってくるこの国の重鎮たちと挨拶を交わす。
自国では慣れたことだが、ここは失敗が許されない隣国。緊張に肩がこる。
そして王女はというと、広間の隅に用意された椅子に、一人優雅に座っている。
女たちが囲んであれやこれや世話している様子を離れたところから見て、なんとも言えない気持ちになった。
この広間に現れてから王女は、椅子から一度たりとも腰を上げず、指一本動かさず、ちやほやされるがままだ。
我が国ではあり得ない光景である。
我が国の王家主催のパーティでは、国王の横を動けない王妃の代わりに、王女が会場中を動き回って、客を捌き、パーティが滞りなく進むよう場を統制する。
国が違えば役目も違うのかもしれん。
ならば婚約者たる我に一言の声もかけないのはこの国では正しいことなのか。
だとしたらあの王女は一体何のためにこの広間にいるのだろう。
と、王女の付き人らしき女がやってきて、
「本日はアルフレート王太子歓迎の意を込め、王女がバイオリン演奏をご披露されます」
と伝えた。
「それはそれは」
あまりに引っ込み思案で口がきけないから、代わりに音楽を奏でようということか?
少しほっとした。
このまま我を無視したままで済ます気かと思ったが、王女なりに考えてはいたのだな。
見ていると、王女はおどおどと自信のなさそうな顔で前に出て、バイオリンを構え、有名な無伴奏のソナタ曲を奏で始めた。
「‥‥‥」
…音がか細く震えていて、聞きにくい。
明らかに緊張しすぎだ。
上手いのかどうかさえ、よくわからない。
しかしこれほどガチガチになりながらも勇気を出して、我の為に演奏してくれているのだと思えば、いじらしくも思える。
果たして最後まで弾ききれるか。
はらはらしながら見守り、曲の最後の音が余韻を残して消えると、我までほっとした。
会場中で拍手がおきる。
我は演奏を終えた王女の前に進んだ。
「カテリーナ王女。素晴らしい演奏でした。繊細で柔らかい音色は、まるで花びらが舞っているような錯覚をするほどでした」
我の褒め言葉が王女の心に上手く引っかかったのか。
王女はほんのり頬を染め、上目遣いで我をちらりと見て儚く微笑んだ。
それは初めて王女と目が合った瞬間だった。
…お。やはりかわいいはかわいいな…
そう思った瞬間、王女は恥ずかしそうにパッと顔を手で隠し、我の前から、そしてパーティ会場から一目散に走り去っていく。
「王女様〜、お待ち下さいまし〜」
バイオリンを持って王女の付き人が追いかけていく。
広間がシンと静まった。
は?逃げた?
仮にも自分の婚約者の歓迎パーティから。
我が声をかけたこのタイミングで。
流石にこの国の常識からしても、王女の行動は非礼に過ぎたらしい。
ざわざわと広間はざわめき始め、慌てた様子で国王が詫びに来た。
いや、詫びる前に王女を連れ戻せ。
衆目の中、婚約者に逃げられた我の体面はどうなる。
気まずい空気の中、パーティの最後までにこやかな表情を崩さなかった我を誰か褒めてほしい。
いくら可愛くてもあれは駄目だろう、と思う。
引っ込み思案とか恥ずかしがりやとか、そういう問題ではない。
我はこの国にとって、友好国の王太子。決して粗末に扱ってはならない相手であるはず。
我が『あのような礼儀知らずの王女を寄こそうとはこの国は我を馬鹿にしてるのか』とでも怒ってみせれば、一気に2国間問題である。
あの王女はそれをわかっているのか。
王族としての責任感というものがないのか?
それとも知恵遅れなのか?
どちらにせよ、我が国の王妃に迎えられる人物ではない。
「あの王女と婚約を辞めるにはどうしたら良い?」
問うと侍従らは揃って顔を強張らせた。
「とんでもございません」
「そんなことできるわけないだろ」
「ありえませんよ!隣国と揉める気ですか?」
「どこかの侯爵の娘とは相手が違うのですよ!?」
いつも我の味方をする四人がそこまで言うほど、2国を結ぶ結婚は重大事で、婚約破棄は許されないこと。
そんなことはわかっているし、我とて無用な揉め事は起こしたくない。
しかしあの王女を王妃にすれば、いずれもっと大変なことになるはずだ。
我はどうするべきか。
悩むが、今できることなど何も思いつかない。
数日後、予定どおり正式に婚約が結ばれた。
そしてとうとう王女の声は一度も聞くことなく、帰路につくことになった。
帰りの馬車でもんもんと考える。
あの王女と結婚するのか?いや、無理だ。
あれを妃にして我の横に立たせるのか?
嫌だ。我の恥になる。
あれなら、マルグリットの方が何倍もマシだった。
マルグリットは若干6歳にして、礼儀は完璧だった。
マルグリットはいつだってうつむくことなく、堂々と自分の言葉を語った。
マルグリットは大事な場では決して我に恥をかかせなかった。
マルグリットは…
懐かしい王宮に着いた時、我の心は決まっていた。
マルグリットを妃にしよう。
幸いあれはまだ結婚していない。
今からでも間に合う。
我の妃候補を降ろされたせいで、未だ独り身なのだから、我が責任をとる形でどうだ。
父上と母上はなんと仰るか。
あの王女の様をありのままに伝えれば、理解していただけるか。
マルグリットを連れて行き、やはり幼い頃から知る彼女を妃に迎えますと宣言すれば…
「マルグリットに会いに行く」
「殿下!?」
王宮を飛び出し、マルグリットの元へ向かう。
これまで何度も何度も会いに行った。
マルグリットがこの時間ならどこにいそうか、会いに行けばどんな反応するか、何もかもを知っている。
予想どおり、我を見たマルグリットは正しく礼儀を示したあと、また来たのか、というようなことを遠回しに嫌味っぽく言った。
全く予想どおりの変わらない姿に、ひどく安心した。
やっぱりマルグリットだ、と思う。
我の幸運の珍獣。
やっとわかったのだ。
顔が可愛くない、とか、恋愛感情を持てない、とか、そんなことは大事ではなかった。
我は王太子。いずれ国王になる身。
我の横にふさわしいのは、自分で立ち、自分の言葉を語り、共に切磋琢磨できる女なのだ。
「マルグリット…」
「殿下」
マルグリットはにこりと微笑み、実は、と切り出した。
「わたくし婚約致しましたの。ですからもう、このようにお越しになるのはおやめいただきたいのですわ」
「…あ?」
今、ひどくおかしなことを聞かされたような。
「婚約?」
「ええ」
肯定するマルグリットの頬が少し赤くなっている。
いやいやいや。あり得ん。
マルグリットの結婚相手など我以外にいるわけがない。
なんの冗談だ。
「相手は誰だ?」
「…どなたでもよろしいではありませんか」
「申せ」
「…嫌です。今お聞きにならずとも、そのうちわかりますわ」
少し恥ずかしそうに言う。
なんだその表情は。
照れているような、嬉しそうな…
おかしい。そんな表情はマルグリットらしくない。そんな女みたいな表情は。
我は愕然とし、何も言えなくなった。
【解説】
○マルグリットはそれほど不細工ではありません。ただフェリクスにも“美しさよりもまず、生意気そうなと形容したくなる…”と言われる感じの顔です。
○マルグリットがいつまでも妃候補だったのは、王家や公爵家辺りが“アダルベルト家よりもうちょっと都合のいい家の姫はいないかな”と婚約を伸ばし伸ばししていたからで、それをわかっているマルゴ父は怒ってます。
○カテリーナは軽度の対人恐怖症ですが、頑張って克服したいと思ってます。
アルフレートとカテリーナはなんだかんだで可愛い感じの夫婦になるんじゃないかなー。




