対抗
サンライト皇国は現在の状況を打破すべく、ザコディリス侯爵家やエリン男爵家方面に近衛騎士団の一部と皇国第一騎士団を派遣することにし、国境近くに展開。指揮官はグレハム・レッドパイン近衛騎士団長。
ラーナ国方面には皇太子を総大将として、皇国第二騎士団とパイン三家に任せることにした。
帝国以外の国との国境の守護のため、帝国騎士団は動かすことは出来ないし、国内の治安維持にも兵士は必要なので、この派兵はサンライト皇国にとってはギリギリの数であった。
急な派兵を命じられたパイン三家は、慌ただしく準備して、ラーナ国との国境を目指すことになった。
レッドパイン伯爵家はサンライト皇国の南方にあるため、ラーナ国国境に近いため、早々に到着したが、ブルーパイン子爵家家とブラックパイン男爵家は、サンライト皇国の都に近い場所に領地があるため、少し遅れるかたちになってしまうのが予想されたのだが、ブラックパイン男爵家から冒険者レジウスに依頼が出される。
「食糧や予備武器、テントなどの輸送?」
レジウスがそう聞き直すと、
「ああ。食糧を積んだ馬車と移動すると時間がかかるが、空の馬車なら大してスピードは落ちない。現地にて馬車に積み込むことにすれば、既に現地に到着している皇国第二騎士団やレッドパイン伯爵家軍の負担を減らせる」
レナードにそう言われ確かにと納得したレジウスは、この依頼を受けることにする。
レジウスはブラックパイン男爵家の屋敷前に集められた、食糧や武器などを収納していく。
既に兵士達は1日分の食糧を個々で背負い、先に出発している。
食糧などを集めるのに少し手間取ったため、レジウスの出発だけが遅れたのだ。
半日遅れでレジウスはリーナとタッカー、それにデイルと共に街道を南下していくことになる。
一方同日の朝、ブルーパイン子爵家当主ルドルフは、軍と息子二人を連れて国境までの移動を開始したのだが、遅い馬車との移動のため、途中でレジウスに街道で追い抜かれてしまう。
笑いながら追い抜いたレジウス達だったのだが、それを忌々しく見つめる男達の中で、長男ディランだけは皆とは違う感情だった。
「よくもリーナ様を……」
そうこぼした息子のディランの声に、
「ディラン、もうリーナ様の事は諦めよ。お前には美人と評判のアリオ男爵家の娘との婚約を進めておる。この戦が終わる頃には話も纏まる」
ルドルフとてひとりの父親であるし、息子の気持ちに感づいてはいた。だが息子の思い人は既にレジウスの女になってしまっている。
貴族としては手垢の付いた女性を妻として家に迎えるわけにはいかないのだ。
だから別の縁談をすすめていたのだ。美人の女性に癒して貰えば息子の気持ちも安らぐだろうと。
だが、息子の心を読み間違えた父の言葉は、ついぞ報われることは無かった。
何故ならその日の夜、街道脇にて夜営の食事中に胸を押さえて苦しみ、そのまま帰らぬ人となったからだ。
当主が急逝したとしても、引き返すわけにはいかないので、ルドルフの遺体だけ少数で領地に送り返すこととし、急遽、長男ディランが跡を継ぐことになった。
口元があやしく歪むディランに。
さて、ラーナ国はラーナ国で揉めていた。
ラーナ王家と中央部の貴族、それに北部貴族がウエストサンライト帝国に対して明らかに謀反。
ラーナ国南部貴族はそれを良しとせず、ラーナ国からの離脱を宣言。
サンライト皇国と歩調を合わせてラーナ国中央に向け進軍するが、一進一退。
ラーナ国王家は、サンライト帝国騎士団が来ていない事を確認すると、元ラーナ国南部貴族よりサンライト皇国侵攻に重きをおき、南側には最低限の兵士を配置し、サンライト皇国国境を多数にて越えて大侵攻する事を決定した。
一方、ザコディリス侯爵家側は国境を越えてこないし、エリン男爵家も一応軍を展開してザコディリス侯爵家に対抗する素振りを見せているので、動きはなく睨み合いのこう着状態のままであった。




