11.吉報
朝の光を感じ、リフィスの脳が起き始めた。
よく眠れなかったのか、瞼が重たかった。
まだきっと、この時間なら彼女も起きていないだろう。
リフィスは気持ちのいい朝とは裏腹に曇りがかった気持ちのまま早々と着替え、騎士団本部へと向かった。
ブンブンと、素振りの音が響く。
雑念を払うかのように一心不乱に剣を振るっていると、後ろから声が聞こえた。
「だ、団長!!??」
「朝から元気だな、エディ」
一足先に鍛錬していたのか、上裸で首にタオルをかけていた。
隆々とした筋肉たちが今にも弾けそうだ。
「もうこっちに来ても大丈夫なんですか!?」
「その前に服を着ろ。そのままだと風邪ひくぞ。」
2人は訓練場の端にある長椅子に腰掛けた。
一息ついた後、そわそわした様子でエディが口を開いた。
「そ、それで、もう大丈夫なんですか?こっちに戻っても…」
王都からこの騎士団本部まで馬車で半日はかかる。緊急事態であるならば、帝都にいたほうがいいのではとエディは思ったのだろう。
「ああ。それに、俺が勘違いしていたが緊急事態ではなかった。」
「悪いな。変に心配かけてしまった。」
「いえ!緊急事態でないのであればよかったです!」
エディは白い歯を見せニカっと笑顔で答える。
そのエディの笑顔にリフィスの心が少し和んだ。きっとこういうところが人気者である理由だろう。
「じゃあ何で呼ばれたんです?あっ、もしかして極秘の任務とかですか?」
心配そうに聞くエディに、頭をポリポリとかきながら気まずそうにリフィスは答える。
「いや、極秘でもない。……………言っても驚くなよ。」
「………。はい!驚きません!」
エディは目を丸くして、答えを待っている。その様子にハアとため息をついた。
「神殿に聖女を紹介されたんだ。で、婚約した。」
「は………」
「はいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!???????」
リフィスの右の鼓膜が破れた。
「だだだ、団長!!??本当ですか????あの団長が????いくら女性を紹介されても誰にもなびかなかったあの団長が???夜会に行っても一夜でおわら…」
「お前…!!その辺にしとけよ…!」
とんでもないことを言いそうになったエディの口を全力で抑える。
「はあ…。驚くなって言ったのに…。とにかく、そういうことだ。」
「……団長………!おめでとうございます…!本当に…。」
少し涙ぐみながら祝ってくれるエディに胸がチクッと痛む。
「別にまだ婚約しただけだけどな…。ありがとう……。」
「団長…?」
吉報なはずなのに、リフィスからはどこか悲しさのようなものを感じた。
「よし!そろそろあいつらも来る頃だろう。」
そう言ってリフィスは、今の空気を断ち切るように立ち上がる。
「行くぞ」
そう言ったリフィスの背中が、泣いているようにエディには見えた。




