結末
「……」
「起きたか」
完全に暗くなった時間帯。
灯りが少ない決闘場の中央で、カイザは目を覚ました。
身体はヴィードによって治療されており、後遺症が残るようなこともないという。
アタシは、クラゲの帽子を残したまま、空を見上げていた。
その隣で、カイザも目を合わせることなく、呆けたように空を見上げる。
「俺の負けか」
「アタシの方が先に起きたからな」
「約束は約束だ。アカネとは別れる」
チラッと顔を見ると、憑きものが落ちたような、良い顔をしていた。
「……悪かったな、無理やり秘密を暴くようなことを言って」
「何言ってんだ。いつまでもこんな秘匿を続けた、アタシの方が悪いに決まってんだろ。すまな――」
「いいんだ。信頼を勝ち取れなかった俺が悪い。さっきのは八つ当たりみたいなものだ、忘れてくれ」
子供の頃は、魔物の血が入っていることに、今以上に疎外感を抱いていた。
自分は誰とも違う、仲間なんて一人もいない。
今はある意味開き直って飲み込めているが、前は本当に世界に独りしかいないという感覚があった。
カイザにはもっと心を開いておけば、こうはならなかったんじゃないかと思う。
「まあ、今更か」
「ああ。……別れよう、俺達」
「そうだな」
修復するには、こじらせ過ぎた。
互いのために別れようとカイザが切り出し、アタシもそれに同意した。
「最後にその――本当の目が見れて良かった」
「……カイザ」
「もう行け。ヴィードが待ってるだろ」
「ありがとう」
クラゲの身体を引っ込め、闘技場を後にする
退場口では、ヴィードが壁にもたれ掛かっていた。
「元カレとはスッパリ別れられたか?」
「ああ。……結構時間あったけど、何してたんだ?」
「ちょっと野暮用を片づけてきた」
「キャッ。ヴィード様、何をするんですか?」
「騒ぐな、直ぐに終わる」
私ことアカネは、憧れのヴィード様に狭い部屋に連れ込まれた。
もしかして襲われちゃうの!?
部屋の鍵を閉めて、近づいて来るヴィード様。
心臓を高鳴らせながら、瞼を閉じ――ヴィード様に、目をこじ開けられた。
鋭い瞳が、私を射貫く。
「魅了の魔眼か。中々珍しいものを持っているな」
「ッ!?」
咄嗟に距離を取ろうとしたが、身体が動かない。
いつのまにか、魔法で雁字搦めにされていた。
「チッ、魔眼よ!」
超至近距離の魔眼催眠。
確実に私の魔力が、瞳からヴィード様の中に入っていき――パンッと弾き返されて、霧散した。
「俺にそんなチャチな物が効くと思うな」
「あ、ゆ、許して」
「ダメだ」
ヴィード様が杖を掲げ――魔眼の力が、消えていく。
電池が切れたように、ウンともスンとも言わなくなってしまった。
「魔眼を封じさせてもらった。今度悪用したら、目ごとくり抜いてやるからな」
「あ、あ」
凄まじい圧力で、へたり込んでしまった。
そんな私に興味を失ったように、ヴィード様はさっさと去ってしまう。
「アカネとも別れさせたし、カイザが暴走することはもう無いだろう」
「そうか、良かった」
並んで歩きながら、軽く話す。
激闘の後ということもあり、何も考えずに喋っていたのだが――ヴィードが、アタシを注視していることに気づいた。
「どうしたよ」
「……」
無言でヴィードが迫り――アタシは壁に追い詰められた。
肉体的にはアタシの方が強いハズなのに、大きな身体で圧迫されてしまう
「お、おい。何だよ」
「……元カレと話してたんだろ。嫉妬しちゃうじゃないか」
ゆっくりと、顔と顔が近づき――唇と唇が触れあった。
この作品はこれで完結です、ご愛読ありがとうございました。
作者の次回作にご期待下さい。




