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魔王の宮殿

「私の国の城に似ているな」

 と、サンドラが宮殿を見て言った。

 城壁は石を積み上げて作った見るからに頑丈そうなもので、扉も同じような材質で作られていたのである。

 カストゥルム国の城は他国にありがちな縄張の構造によって防ぐというよりは、純粋に建物の頑丈さで敵の攻撃を防ぐものが多かった。

 その頑丈さは凄まじいもので攻城兵器が一切効かないどころか、ガル国の魔法使いの熱線を何度か受け切ったこともある。

 当然、扉を壊して侵入する事は難しい。

 サヨなら破壊できるかもしれないが、破壊時の轟音で魔物を呼び寄せてしまう可能性があるためやめておいた方がいいだろう。

「似たような城という事はどこか他の入り口に心当たりがあるのか?」

 と、エレグが尋ねると、

「まぁ、ありがちなのは地下通路だろうな。その辺に侵入できそうな場所はないか? 場合によっては何かに擬態している可能性があるかもしれん」

 という普通の解答であった。

 魔物を倒しながら宮殿周辺を探っていると、近くの森林でカイは洞窟を発見した。

 洞窟の入り口から地下に向けて階段が伸びている。

 カイは三人を呼びそこへと入って行くと、その先には宮殿の方へと伸びている道が続いていた。

 その道には特に罠や伏兵などは置かれていなかったので難なく終着点へと到着した。

 そこには上へと続く梯子が掛かっており、そこを登り切って床石を退かすと宮殿内部のどこかに出るらしい。

「出た瞬間周辺を魔物が囲んでいたなどということもあるかもしれん。まず私が魔物の様なものを魔法で出すからそいつに先行させよう」

 サンドラはそう言うと、狼と人間両方の特徴を持った生物を召喚した。

 まず、それに梯子を登らせ、その下を四人が登ってゆく。

 そして狼人間が床石を退かして顔を出すと、いきなり首をはねられた。

 が、魔物達は味方を殺害してしまったと勘違いをして、取り乱したらしく、地上は少し騒がしくなった。

 その隙をついて、サンドラは梯子の下に巨大な噴水を召喚してその吹き出す勢いで一気に自分たちを地上へと押し上げた。

 出た先はロビーの様なフロアであり、四方が魔物で固められていた。

 それも、全て今まで見たことのない種類の魔物である。

 魔物達は水や炎、氷などのかなり強力な魔法を使い四人を攻撃してきたが、サンドラが掩体壕(えんたいごう)の様なものを召喚し、四人はそこに隠れたので結果魔物達は自分達の強力な魔法でかなりの数同士討ちする事になってしまった。

 ただ、死んではおらず動けなくなっただけである。

 これほどの魔力と不死性という特長を持っていながら、頭が悪いところをみると下級の魔物であるらしい。

 それでも、考える力が全くない訳ではないらしく同士討ちを避けるために魔法の使用を控え始めた。

 しかし、それでは四人に勝つ事は出来ない。

 カイとサヨは外に飛び出して剣で魔物達を倒していき、掩体壕の中からはサンドラは岩石を空中に召喚してそれを落下させるという方法で、エレグは長弓で毒矢を放って攻撃し始めた。

 ここにいる魔物には落石も毒矢も散雪凍による斬撃も足止めにしかならないので、唯一効果がある王家の剣を持ったカイが全て倒すしかない。

 三人が行動不能にしたところを、カイがトドメを刺すという方法で次々と倒していき、結果全部倒す事が出来たが、かなり時間がかかってしまった上に、カイは魔王と戦う前だというのに疲弊してしまった。

 そのため、一行は魔物を倒し終わった後十分ほど休憩を取り、それから魔王がいるフロアを探し始めた。

 魔王はロビーに集中的に強力な魔物を集めていたらしく、以降出てくる魔物は弱くはないが、強すぎるということもない普通のものだった。

 上へ上へと登っていき、最上階へとたどり着くと大きな部屋に出た。

 そこは地上から移築したらしい魔界の門があるだけの部屋で、その門の前に魔王インペレトリス・デウマルムがいた。

 魔物の王ではあったが、かなり人間に近い姿をしている。

 ただ、迸る魔力はやや離れた位置にいる四人も充分に感じる事が出来た。

「こうして実際に会うのは初めてだな、俺が魔王インペレトリス・デウマルムだ」

 と魔王が名乗ると、

「分かった、墓にはそう刻んでやろう」

 と、サンドラが茶化した。

 インペレトリスはそれを無視して

「俺を倒し、後ろにある魔界の門を英雄の剣で破壊すれば大半の魔物は消える。しかし、先程魔力を確保するために二千体ほど魔物との繋がりを断った。俺を倒してもそいつらは残り続け、しかも誰にも阻まれる事なく行動するぞ。どの道、俺の勝ちに変わりはないが本当に戦うか? 降伏すれば命だけは取らないでおいてやるぞ」

 と、言った。

 歴代魔王には相手に魅力的な条件を出して自分に協力するかどうかを問い、相手が条件を受け入れたとしても殺すという伝統があったが、彼はあえて脅迫めいたことを述べたのであった。

 ただ、これにも理由がある。

 本当のところ魔物を少し残す事にしたのはサンドラとサヨを仕留め損ねて自分が消滅してしまった場合の保険という意味合いが大きかったが、カイが怒りに燃えて実力以上の力を発揮することも期待していた。

 本気以上の力を出した英雄ですら彼には勝てないという事実を作る事で、世界を征服した後人間側からの反乱を抑えるためである。

「だが、お前を倒せば魔物の殆どを消すことができて、ラヴィスヴィーパの壊滅を防ぐ事ができる。それだけで戦う理由としては充分だ」

 カイはそう言って王家の剣を引き抜いた。

 他の面々もそれぞれの武器を構える。

「そうか、それではお前達の肉塊を今まで殺された魔物達へ捧げることとするか」

 インペレトリスはそう言うと、雷魔法を使ってエレグの弓を破壊しつつ彼を感電させて倒した。

「今は殺さん。後で人間達の面前で処刑してやる」

 倒れた彼にそう言い、さらに他の三人にも同じ攻撃をしてきた。

 サンドラは掩体壕を召喚してそれを防ぎ、カイは王家の剣を床に突き刺してそれに電撃を受けさせる。

 二人が防御する中、サヨだけは電撃を回避しながらインペレトリスへと接近し、ある程度近づくとそこから一足飛びで斬撃を繰り出した。

 が、刀身は彼へと触れることなく防がれた。

 インペレトリスが持っている本から半透明な障壁の様なものが出て彼女の攻撃を防いでいたのである。

 地に足を着いていない間は、いくら彼女の脚力が凄まじいと言えども身動きをとる事は出来ない。

 その隙を突いてインペレトリスは水魔法を使って彼女を壁に叩きつけ、起き上がる前にさらに追加で水を発生させて彼女をその中に閉じ込めた後、氷魔法で固めてしまった。

 彼女は実質片手である上に、氷があまりにも分厚すぎるため流石に自力では脱出出来ない。

 ついでに、呼吸も困難になった。

 彼女は異常な力を持っているとはいえ人間なので、このまま呼吸ができない状態が続けば流石に死んでしまうだろう。

 そこで、サンドラは掩体壕から出て、熱湯を呼び寄せ氷を溶かそうとした。

 ただ、掩体壕の中では氷の全貌を確認する事が出来なかったとはいえ、そこから出てしまった事が仇となった。

 彼女が姿を現した途端にインペレトリスは彼女に急接近し、先程の書物を使って彼女の魔力をたった数秒間で六割近く奪ったのである。

 余りに凄まじいスピードで魔力を抜き取られているせいか、サンドラは体に力が入らずその場に膝をついた。

 インペレトリスは魔力を奪った後、蹴りで彼女を吹っ飛ばしつつ、雷魔法を放って感電させた。

 エレグの時とは違って、今度は殺す勢いである。

(あの本は厄介だが、この剣なら攻撃が通るかもしれないな)

 と、考えたカイはインペレトリスがサンドラの魔力を奪っている間に彼へと接近していくが、接近戦はカイよりも武器を特に持っていない彼の方が強く、サンドラを攻撃する片手間に王家の剣を蹴りで弾き飛ばされた挙句組み伏せられてしまった。

「どうした、まだ戦い始めて五分も経っていないぞ」

 カイの動きを封じながら彼はそう言った。

 インペレトリスの身体能力はスピリデュースよりもやや低いくらいだろう。魔法の種類は多彩だが数種類の魔法を使う事ができる者など、ごく僅かとはいえ人間でもたまにいる。

 ゆえに彼はサヨから聞いている兵の国にいた魔物よりは遥かに弱いはずである。

 しかし、なぜその魔物ではなく彼が魔王で居続ける事ができるのかカイにはなんとなく分かった気がした。

 魔法の多彩さだけでなく、ずば抜けて多い魔力を持ち合わせており、さらに発動のタイミングも上手いのである。

 どれか一つでも欠けていればまだ何とかなったかもしれないが、これら三つが揃っているとなると厄介な事この上ない。おまけに、物理、魔法両方の攻撃に対応できるという妙な本を持っているときている。

(魔王とはよく言ったものだな)

 カイはそう思って何か悪態をつこうとするが、押さえつけられているため声が出てこなかった。

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