プロローグ
こえてはいけない禁断のライン。
触れあった肌があつい。
幻想と現実のはざま、意識はもうろうとする。
こんなに頭がぼんやりするのはインフルエンザで39℃の熱をだしたとき以来、部屋へこもった熱気で窓は結露した。かさねられた手を握りかえす。強くにぎったのに相手は俺をやさしく包んだ。体の奥へたまった熱があふれだす。歓喜なのか恐怖なのか分からない感情に満たされる。
「楓」
この人に名を呼ばれて、うれしいと思ったのはいつからだろう。
やさしく握られた手にも力が入った。こえてはいけない一線だと、見えないもうひとりの俺が引きもどす。けれども体の奥からあふれた熱は彼方へと全力疾走していく。
目が冴え、ベッドへ座ったまま窓の外をながめた。日が昇るまで時間がある。夜は徐々にうすくなり、いつも寝てるからとても新鮮な空の色だった。窓をあけたら冷えた風が部屋へながれこみ、ガラスの曇りがとれて街なみを見わたせるようになった。
「カエデ、起きたのか? 体冷えるぞ」
彼が部屋へもどってきた。こんな朝早くにはっきり覚醒しているのもめずらしい。俺の肩へシーツをかけた彼はとなりへ腰をおろした。乾ききっていない髪からシャンプーの香りがする。
手がかさなる。ひとまわり大きな手は指先で俺の手のひらを弄っていたが、指が指のあいだへ入りこむ。体内の荒々しい熱は引き、すこし冷たい指先だった。
ひんやりと心地よくて目をつむる。
「横になってちゃんと休め」
すぐそばで優しい声がきこえた。眠くなってオブラートへ包んだように声が遠ざかる。
濃厚な甘いバニラアイスみたいで耳が蕩ける。こんなに優しい声だっただろうか、いいや彼の声はもっと険があって俺を突き放していた。
あれはいつだったかと考える。
考えるまでもない、つい最近のできごと。
そう、俺たちは出会ってまだ1カ月も経っていない。
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ほのぼの3角関係?ものです。
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