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魔王とアリアの極秘コレクション

その日の夕暮れ、俺、魔王吹雪は、拠点に戻るなり、玉座に深く沈み込んだ。


「く…今日は雑用に追われ、結局何も成せなかった。勉強も、ブログの執筆も進まなかった。いまいちな一日だ…」


「そうか?貴様にしては、有益な情報を持ち帰ったように見えたが」

隣で静かに古文書を読んでいたドラゴンの先輩、健太さんが顔を上げた。


今日、俺は人間界でSNS集客を専門とする魔法使いと謁見したのだ。


「ああ。彼が言うには、やはり我らが今、力を入れている『X(旧Twitter)』は、買取を増やすという目的においては、ほぼ無意味だそうだ」


「ほう。理由は?」


「奴のアルゴリズムは、他のSNSとは全く異質。バズる、つまり爆発的に拡散して初めて人の目に触れる仕組みだ。我々のような地道な告知は、そもそも誰にも見られることなく、虚空に消えるだけだと」


「…論理的だな。理屈も理論も正しい」

と健太さんが頷く。


「だろう?そして、我が社の上層部もその事実に気づき、やる気をなくしている。この計画も、あと2ヶ月もすれば打ち切られるだろう」


俺はそこで、にやりと笑った。

「だからこそだ、健太。だからこそ、やってみる価値がある」

「…どういうことだ?」


「どうせすぐ終わるのだ。誰も期待していない。つまり、失敗しても失うものは何もない。ならば、この2ヶ月、我はこの『無意味なこと』を、実験としてとことんやってみようと思う。これもまた、一つの刺激的な勉強だ」


俺の言葉に、健太さんは少し呆れたように、しかし面白そうに口元を緩ませた。


「ふむ。ならば、今日の真の収穫はその気づきだな。では、次の一手はどうする?」

「それこそが本題だ!」


俺は立ち上がり、高らかに宣言した。

「SNSという飛び道具がダメなら、我は新たな武器をとる!それは『写真』だ!」


「写真…ですか?」

今まで黙って話を聞いていた幼馴染のアリアが、不思議そうに首を傾げた。


「そうだ!写真は武器になる。動画もな。だが、動画は手間がかかる。まずは写真だ。問題は、どうやって保管し、管理するかだ」


俺は思考を巡らせる。


「自分の水晶板スマホで撮るのが一番手軽だが、そうすると公私の区別がつかなくなる…」

「公私のアーカイブが混在すれば、後々の戦略活用に支障が出るな」

と健太さん。


「うむ。ならば答えは一つ。自分用の写真も、会社用の写真も、両方撮ればいい。そして、この新しいスマホなら、『アマゾン・フォト』という名の無限書庫に自動で保管される。これで保管問題は解決だ」


俺は完璧な計画に満足げに頷いた。

「今の段階では、撮った写真に使い道はない。だが、いずれ我が帝国を築く上で、この記録は必ず必要になる。今はただ、ひたすらに貯めておくのだ。これぞ、我が新たな『ラッキー部門』の始動である!」


俺が壮大な未来計画に胸を膨らませていると、アリアが言った。

「ふぶき、すごい!じゃあ、その大事な大事なアーカイブの、最初の1枚目の写真は、もう決めたの?」


「いや、まだだ。この壮大なる計画の幕開けにふさわしい、記念すべき最初の1枚…。アリア、何か良い被写体はないか?」


俺が尋ねると、アリアは満面の笑みで、自分の水晶板をこちらに向けた。


「もう撮ったよ!」


画面に映し出されていたのは、少しブレてはいるが、間違いなく先ほどの健太さんの写真だった。


俺の長い演説に、なんとも言えない、少し呆れたような、それでいて面白いものを見るような、絶妙な表情を浮かべた健太さんの、完璧な一枚が。


「題して、『アリアの極秘コレクション・その1』!どう?記念すべき1枚目に、ふさわしいでしょ?」


「…………」

俺は言葉を失った。健太さんは、深々とため息をついている。


やれやれ。我が壮大なるアーカイブ計画は、どうやら、この二人のおかしな日常を記録することから始まるらしい。

まあ、それも、悪くない。

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