表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/152

魔王、生涯学習と10の資格を取ると誓う

確立されし我が休日のルーティンは、もはや芸術の域に達している。


朝は聖地『京橋』でブログを執筆。

その後、天王寺まで移動し、そこから心地よい距離を歩いて『雷撃フィットネス(チョコザップ)』のカラオケルームへ。

80分という絶妙な時間、歌で英気を養うもよし、戦略的仮眠で鋭気を蓄えるもよし。

俺、魔王吹雪の休日は、盤石の布陣となった。


その日も、俺たちはカラオケルームへ向かう道を歩いていた。


「健太、アリア。我は、次なる計画を始動させることにした」


俺の唐突な宣言に、隣を歩くドラゴンの先輩、健太さんが静かに顔を向けた。

幼馴染のアリアも「なあに、なあに?」と飛び跳ねた。


「我が人生の基本戦略…それは『生涯学習』だ」

「ほう。定年後を見据えて、か。賢明な判断だ」


「うむ。我が勉強の目的は三つある。第一に、生活のため。第二に、『老人だから覚えられぬ』という呪いを打ち破るため。そして第三に、認知症という名の精神の風化を防ぐためだ」


俺は熱弁した。

ただ楽しく学ぶだけではない。

しっかりと覚え、役に立ち、続けられて結果が出る、俺だけの最強の勉強法を編み出すのだと。


「まずは仕事の資格を…と思ったが、あれは一部の特権階級にしか許されぬ。ならば、我のような野良の魔王でも取得でき、経験を積めば自営業の武器となる資格が良い」


俺は考えうる候補を挙げた。

「例えば、日商簿記2級。あるいは、マンション管理士と管理業務主任者。宅地建物取引士も良いな」


「商業の基本、不動産と資産管理か。いずれも堅実な分野だ」

と健太さんが頷く。


「ぼき?マンション?ふぶき、お城の管理人さんになるの?」

とアリアが不思議そうに首を傾げる。


「だが、いきなりは難しい。まずは、全ての基本となる日商簿記3級から目指す。これを皮切りに、60歳になるまでに、10の資格を我が物とする!」


俺は高らかに宣言した。

「我が人生は、今後この五本の柱で支える!『健康』『開業』『友人』『小説』…そして『勉強』だ!」


この壮大な計画に、健太さんは感心したように言った。


「素晴らしい。だが忘れるな、吹雪。重要なのは、資格という名の紙切れを手に入れることではない。その知識を完全に理解し、『使いこなせる』ようになることだ。そこにこそ、真の力がある」


「無論だ!我はただの資格マニアではない!使いこなしてこそ意味がある!いわば『資格術師オタク』を目指すのだ!」


俺の決意に、アリアが満面の笑みでぱちぱちと手を叩いた。

「わーい!ふぶき、すごい!じゃあさ、じゃあさ!」


そう言って、アリアは自分の小さなカバンから、あるものを取り出した。

それは、色とりどりの絵が描かれた、たくさんの札束だった。


「ふぶきの最初の資格試験はこれね!『百人一首マスター』!」


「…………」

俺と健太さんは、言葉を失った。


アリアは百人一首の札を数枚抜き取ると、俺の目の前に突きつけた。

「さあ、勉強の時間だよ、ふぶき!これは『ちはやふる』!得意な札から覚えるのが、楽しくて続けられる勉強のコツなんでしょ?」


俺の壮大な人生計画と、60歳までの学習戦略が、アリアの無邪気な笑顔の前で、雅な歌かるたへと姿を変えてしまった。


やれやれ。俺は天を仰ぎ、そして笑った。


「…望むところだ。まずは、その『ちはやふる』とやらを、完全にマスターしてやろうではないか」


そうだ。どんなに壮大な計画も、始まりはいつも、目の前の小さな一歩と、「楽しい」という気持ちからなのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ