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サンダーソン公爵の事情

「先程の令嬢のことは知っている。彼女は、伯爵家の筆頭といっても過言ではないランスロット伯爵家のひとり娘だ。彼女が話していた、つまりきみが略奪したという男のことだが、そいつはほんとうにここにはいないのか?」

「ご令嬢の夫というろくでなしのことですね。わたしたちには、アンディと名乗っていましたが。ええ、彼はここにはいません。あなたもここにいて、一度もそれっぽい男性に会ってはいないでしょう? もっとも、こっそり戻って来ているかもしれませんが」

「そうか……。とにかく、きみが無事に元気でいてくれてよかった。それから、会えてよかった」

「公爵閣下。それで、どうしてわたしを捜しているのです?」

「公爵閣下ですって?」


 わたしを捜しているのかと尋ねてみたが、その言葉はメリッサの二度目の驚愕の叫びにかき消されてしまった。


「きみのことは、わが家の執事から手紙で知らせを受けた。が、前線にいてとてもではないが戻ることが出来なかった。返事さえ書けなかったのだ。もっとも、書けたとしても戦場から送ることは難しかったがね。その知らせさえ、届いたのは執事が出した数年後だった。ところで、きみを屋敷から追いだしたペテン令嬢のことだが、あれは誤解だ。まったくの嘘だ。屋敷に戻ったと同時にあのペテン令嬢を捕らえ、役人に引き渡した」

「そうでしたか」


 それしか反応出来なかった。


 わたしからサンダーソン公爵を略奪したという誤解云々より、ペテン令嬢がサンダーソン公爵家をむちゃくちゃにしなかったのか。公爵家に甚大な被害をもたらさなかったのかという方が、よほど気になった。


「さいわい、わが家の管理人や使用人たちは機転がきく。ペテン令嬢は、多少贅は尽くしたらしい。が、甚大な被害をもたらせるようなことには一切かかわらせなかったのだ。いや、違うな。彼らがペテン令嬢からわが家を守ってくれたのは、きみのお蔭だ。彼らは、きみを屋敷から追いだしたペテン令嬢のことをけっして許さなかった。心を許さなかった。彼らは、おれの為だけでなく、きみがいつ屋敷に戻ってきてもいいように守り抜いてくれたのだ」


 サンダーソン公爵家のみんなの顔が、頭と心に浮かんだ。


「執事が、機転をきかせてきみに彼の実家に行くよう勧めたらしいな。しかし、いつまで経ってもきみは彼の実家を訪れなかった。それで、彼はすぐにおれに手紙を送ってくれたのだ。もっとも、その手紙も先程話した通り、数年後に届いたのだが」


 彼は、続ける。


 ペテン令嬢は、ほんとうに貴族令嬢らしい。しかし、公爵とは面識がなかったとか。彼女は、どこでどう知り合ったのかアンディと名乗っていたろくでなしと組んでいたらしい。自称アンディは、ランスロット伯爵家に婿養子になったにもかかわらず、多くのレディたちと交流し、賭博をしまくっていたという。


「もともとやつは、わが軍の諜報員だった。情報部のお荷物でろくでなしだった。ランスロット伯爵家の婿だから、置いてやっていた。が、やつはわが軍を、いや、おれを裏切った。わが軍は、やつが敵に通じていたせいで幾度となく窮地に陥った。それで、このザマだ」


 サンダーソン公爵は、ひきずっている方の足を指さした。



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