26.northforest
四日目の朝。
ついにノースフォレストに入るジョーたち。
目の前に広がる大自然。美しい緑と雄大な山々。
新鮮な空気と澄んだ水。生命に満ちた匂いが、彼らを温かく歓迎しているようだった。
夜の出来事でボビィはますますジョーが好きなった。
――僕も強くなりたい。おじちゃんみたいに。
銃声で目が覚めた二人は窓越しにジョーを見ていた。事無きを得、リリィは感謝で涙が溢れた。
ジョーはビフから聞いたハイランズの住所を地図で確認する。
「ハイランズさん。居てくれたらいいがな」
橋を渡り森を過ぎると、小さな町が広がった。
素朴な風景と平穏な日常は懐かしくもある。通りを抜け、小高い丘を目指した。
やがて無事、ハイランズの家に辿り着いた。
それは実に質素な、木造の白い一戸建。
ジョーは速度を落とし、ゆっくりと敷地に入った。地面には残されて間もないタイヤの跡が。
「ジープだ。もう帰っているかも」
木彫り看板で〝ハイランズ診療所〟とある。その正面に車を停め、ジョーは降り二人の手を。
ボビィは勢いよくポーチに走っていった。リリィはジョーに言う。
「ハイランズ先生は(困った時はいつでもおいで)と。……でもまさか本当に、来てしまった」
ボビィは玄関のチャイムを鳴らした。
四回、五回……だが、何の反応もない。
リリィはボビィの頭を撫で、ジョーを見た。
「やっぱりお留守かしら」
「うむ。車庫の方を、裏へ回ってみる」
行くと、駐めてあったのは黒いジープ。これはドクのものだろうかと首を傾げながらジョーはその物騒なサイドボディの印字を確かめた。
〝航空機動隊 = No.05〟
「これは?!」ジョーは振り向いた。
ボビィが歩み寄ってくるその時、物影から伸びる銃身が。それを見てボビィは叫んだ。
「おじちゃん! 後ろっ!」
轟く銃声、火を噴くショットガン。
ジョーは背後から撃たれ、うつ伏せに倒れた。
「おじちゃーーーーんっ!」
撃った男、そこに姿を現したのは――。リリィは驚愕する。
「フットプライド!」
震えながらリリィは必死でボビィを背に。
「ど、どうして、あなたがここに……?!」
姿を現したレオ・フットプライドは含み笑いで銃を肩に、二人の前に歩み寄る。
「おいリリィ。さぞ他人行儀なご挨拶だな。何様のつもりだ?」
「ひ、人殺し! あなたは彼を、…なんて人なの?!」
「くくっ、ふ、はっはっは! はあ? 何て口の利き方だぁリリィ。お前を拐った男に裁きを下したまでだぞ!」
したり顔が醜く歪み始めた。
「撃たねばこっちが殺られたわ! そいつは元ビリジアンベレーの……」
硬直しているリリィの腕をフットプライドは掴んだ。ボビィの腕も無理矢理引き寄せる。
「おじちゃん! ジョーおじちゃん!」
二人に手錠を掛け、ジープの後部座席に押し込むフットプライド。涙目でリリィはジョーを見つめた。
フットプライドが言う。
「こんな死に損ないの、幽霊みたいな男と……怖かっただろうボビィ? 今度は優しいパパとドライブだぞ」
フットプライドはちらりと地に伏すジョーの横顔を確かめた。
「ん?」
フットプライドは顎を摩りながらジープに乗り、キーを回した。それから後ろのリリィに訊いた。
「リリィ。あの男は……ジョセフ・ハーディング なのだろう?」
「……え?」
「顔が……違うように見えたが……。まあ、いい。とにかく早く行くぞ」




