16.station
アナザーサイド駅。
プラットホームのベンチに座っているリリィとボビィ。
ボビィはリリィの膝にもたれ、体を休めた。リリィはその頭を撫で、背中を摩る。
駅に着いてボビィの喘息の発作が起きた。急がせたのがいけなかった。この不安な状況では無理もないと、リリィは謝った。
「……大丈夫だよママ」
ゼェゼェとボビィは喘いでいる。
「ごめんね……」
リリィはその肩を抱きしめる。
「ボビィ。あと二時間も待てる?」
ノースフォレスト行きの列車は午後一時十五分。
「うん。……ねぇ、ママ」
「何?」
「ジョーおじさん、一人で……一人ぼっちで旅してるのかな」
「……多分」
「寂しくないのかな」
「そうね……」
通帳を開き、リリィは見つめる。その通帳は独身の頃のもの。振り込まれた不明の大金に気づいたのは、フットプライドから去る決意をした時だった。アナザーサイド支店に行き、直接尋ねたが調べはつかなかった。
旅立つ客。列車から降りてくる客。
横になったままのボビィは虚ろな目で遠くを見つめる。ふと、階段の方に目を向けると駆け下りてくる姿にはっとし、むくりと身を起こした。
「ジョーおじさん!」
「ボビィ!」
走り寄ってくるジョーの胸目がけ、ボビィは思わず飛び込んだ。
「どうしたの? おじさん……ゴホッ」
咳き込み、ヒュウヒュウ息をするボビィの容態をジョーは察した。屈んでその背中を優しく撫で、いたわる。そして立ち上がっているリリィの顔を見つめた。
「ジョーさん……」
「君たちを追って、ある男がやって来た」
「え? まさか」
「もし、良ければ俺が力になる」
深く憂えるジョーの眼差し。
「……放ってはおけないんだ」




