10.volkswagen type1
レパードは勘が冴えていた。
リリィは確かにその中古車販売店で車を買っていた。
四十五年式、白のフォルクスワーゲンType1を二十五万ニーゼのキャッシュで。
店主によると店の前の通りを右へ出て行ったという。
右へ出ればハイウェイ5へ導かれる。それは南北に走る州の縦貫道路。
北か南か、どちらかだ……。
車の燃料は五リットルに満たなかった、とすれば近くのガソリンスタンドで給油する。
何処に立ち寄ったかで向かった先が掴めるか。
レパードは店主に電話帳を借り、半径二十キロ前後以内のスタンドをチェックし、ダイヤルを回した。
「一昨日の七日、正午頃……」
そして次に昔の同僚に協力を要請した。
これがレパードの常套手段。強みである。
ネヴァレンド州警の警官たちは大抵理由など聞かずとも動いてくれた。それはレパードが彼らの汚職を知ってるからだ。
暴力行為、賄賂、押収したヤクの闇売却他諸々。
警官時代のレパードは潔白だった。
横暴する彼らをいつか利用するつもりでいた、と言っても過言ではない。でも消されたくはないからあくまでも下手に出る。
「俺もネタ提供するからさぁ……」
「インフィルナンバー305の車を捜すだけでいいんだな?」




