11.flame
焚き火の炎。闇へ消えゆく煙。
お腹いっぱい食べたボビィは口の周りを光らせたままウトウトし始めた。
ジョーの肩にもたれかかるボビィ。ジョーはその小さな頭をそっと膝まで移し、眠りにつくまで見守った。そしてリリィに微笑むと、彼女は申し訳なく言った。
「……すみません。今日は何もかも」
「濡れたズボンも乾いたな。いいんだ。気にするな。どうやら俺の膝が気に入ったらしい。ギュッと掴んでるよ」
その可愛い手を見つめるリリィ。
「……あ、あの今頃ごめんなさい。私はリリィです。リリィ・ストーン。あなたのお名前は?」
「……ジョー」
ポツリと、ただ〝ジョー〟とだけ答えた。
気まずい静寂に炎がパチパチと揺れる。
リリィは小さく頷き、またボビィを見つめた。
さっきまで、ボビィが彼と弾けるように楽しく話していた。いつしか緊張も解けていた。
差し出されたコーヒーを一口、リリィは味わった。
――何故だか、この人とはずっと昔にどこかで会った気が……。
「車は明日の朝、見に行こう。今日はもう遅い。休んだ方がいい」とジョーが言う。
「この辺に宿泊できる施設はないんでしょうか」
「今から動いてはこの子がまた疲れてしまう。遠慮しないでいい。このキャンピングカーで良ければ」
「そんな、そこまでお世話になっては」
「困った時はお互い様さ。大丈夫。俺は外で寝る。よくそうしてる」
「どうしてそこまでされるの?」
「夜の森は冷える。風邪を引いては困るだろう。俺も……人に助けられて今がある」
火に小枝を焚べるジョー。
――それに、君のことを俺は知っている……心の中でそう呟きながら。
リリィはカップを置き、膝を抱えた。
――神様どうか、お慈悲を……。
悟られないようにジョーはリリィを見つめていた。
揺れる炎に照らされる彼女は美しかった。森の妖精のように。
この親子に不幸があってほしくないと願った。
訊かないが、何か大きな問題を抱えているということを、ジョーはしっかり感じ取っていた。




