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鉄仮面な伝説の戦士は猫がお好き  作者: まりの
第一章 五種族の戦士編
16/101

16:秘密兵器

 だんっ。

 自分より大きな男を投げるのは気持ちがいい。

 道場のように畳では無く、下が木のなのでとても良い音がする。怪我防止のために床に厚手のカーペットが敷かれているので足の滑りは悪いものの、実戦を考えればどんな状態であっても動けるようにしておかねばなるまい。

「気合が足りん」

「はいっ! もう一度!」

 朝一にゾンゲ、グイルをはじめ、デザールやキリムの兵の一部に指導を請われて組み稽古。体を動かすのは爽やかだ。気持ちが引き締まる。

「朝から暑苦しい事だなぁ」

 一向に引き締まらない男が一人いるがな。何処の誰よりも一番精神的に鍛えてやりたい男、ルピアに暑苦しいとか言われたくない。

「皆が真面目に鍛錬していると言うのに、いいご身分だな」

「だって僕、王様だから」

 ……ああ、そういうご身分だったな、確かに。皮肉も効かん残念な猫の王様に何を言っても無駄だとわかっているのに。

「戦いに備えて体力を温存しておくほうがいいのでは無いのか?」

 ルピアはそう言うが、基本的なところが間違っている。

「何も努力をしないで強さは手に入らん。日々の精進があって、初めてどんな相手であっても恐れずに戦えるのだ。邪魔をするなら姿を見せるな」

 そうルピアに言った私の言葉に、皆が一層頑張っている。しかし、残念様には響かない言葉だったようだ。

「僕は僕で魔力を鍛えているから」

 新たな戦略を展開する上で、明らかになった事が一つある。

 この世界には魔法が普通に存在するらしい。

 まあ猫に変身する王様がいたり、違う世界から私を連れてきたくらいだから当たり前と言えばそれまでだし、今まででも何度か魔法という言葉を聞いてはいたのだが、どうもルピア以外にも使えるものは沢山いるのだそうだ。

 とはいえ、私が映画やテレビで見た事があるような、魔法使いが呪文を唱えると火が出たり、雷を落とせたり、相手を凍らせたり出来るようなファンタジックで派手なものでは無さそうだ。

「何が出来るのだ?」

「魔導師によって様々だけど、怪我を直したり、敵をつかまえたり。僕は攻撃は出来無いが守りの魔法が得意だ」

 そう言えば先日イーアが、ルピアがバリアを張って子供達を守ったと言っていた。守りの魔法とはその様なものなのだろう。

 五つの種族の内、最も魔力が強いのが猫族なのだという。次いで蛇族、魚族。犬族、鳥族はほとんど魔力を持たない。鼻や耳が利く犬族に、自由に飛べはしないが身を浮かせるくらいは出来る鳥族などは、魔力とは違う身体的な方向に進化した故だという。

 各国の王族と言われる者は各種族の中でも特に魔法を使うのに長けた一族で、領民を守るために古代の秘術を伝承しているのだそうだ。昔の人は凄かったのだな。

「猫族、魚族の魔導師を総動員して、各軍に随行させる。一旦解放された街や村には守りのまじないをしてもらうんだ。先日マユカも言っていた、一旦寄生から解放された者、これ以上寄生される者を出さないための方法の一つとしようかと」

 凄いじゃないか。そんな事が出来るならもっと早くにやっていれば良かったのに……と思わなくも無い。その理由はルピアが説明してくれた。

「魔導師の数は年々減ってきている上、本当は我ら猫族に次ぐ数の魔導師を有している蛇族の協力が得られ無いのが原因だ。向こうの大陸は既にヴァファムの手に墜ちている」

そこで素朴な疑問。

「だが、そんなに魔力の強い蛇族が最初に支配されたのは何故だ?」

 リシュルを見ればわかるが、蛇族は身体能力もかなり高く頭も良さそうなのに。

「女王とその側近には魔力など歯がたたないという事だよ。そして身体的にも強いが故に狙われたのだろう」

 あ、ルピアがちょっと真面目モード。なるほどな、それは言える。女王というのは一体どんな奴なのだろう。日々卵を産み続けているという、絵面を想像したくもない事は聞いているけど……。

「ちなみにセープにいるのは大女王で、役付きなどの特に強い者を生む大ボスだ。その下の特級クラスの雌に大女王が産んだ小女王がそこそこの数いて、下っ端や見張り程度のものはそれらが産んで増やしている」

 はぁ? 女王って一人じゃないのかっ! 何だ、大だの小だの。トイレの話では無いなどというお下品な事は口に出さないけどな。

「これだけキリムに侵攻してきている所をみると、小女王はかなり近くにいると思う。下っ端の駆除を他に任せたのは、まずは一人でも小女王を倒さねばならないからだ。元を断たないと増える一方だから」

「なるほど……」

 小女王といえど、大女王に次ぐ大物。その側近には必ず強い役付きがいる。これからは厳しくなるよ……とルピアは付け足した。


 朝稽古に朝食の後、私達は早々に次の町へ向かった。

 キリム第二の都市、リア。

「これはまた結構な都会だな」

 第一印象はヨーロッパの古い町という趣だ。全体に石造りの洒落た雰囲気の町。様々な設備も整った、かなりの人口であろう都会。

「ここにフレイルンカスが言ってた第一司令という奴がいるのだったな」

「ああ、情報によると一つ上の第二階級らしい。ここまで大きな町だ。一緒に第三階級もいるかもしれないから、気合を入れないと」

 一番気合を入れて欲しい奴に言われたくないぞ、ルピア。

「そんなわけで頑張るので魔力の補給を」

 タコちゅーみたいな顔をするな、ルピア。

「すごく元気そうなので拒否する。いよいよになったら仕方なくしてやるから、それまで気合で頑張れ」

 では参りましょう。役付きはまた役場か重要な施設にいるだろう。

「道案内は任せろ」

 グイルはこの町の外れの生まれなのだそうだ。頼もしい。そして心配だろうな、故郷がすでに侵略を受けているというのは。

 私達は役付きが町役場、警察署、有線放送の局のいずれかにいると推測を立てた。有線放送があるというのが意外だが、他の村や町に比べて非常に進んでいる感じがする。建築物もほとんどが石やレンガ出来た堅牢そうな物で、集合住宅と思しきやや高層な建物も見られる。道も綺麗に石畳で舗装されていて、街灯もキッチリ整備されていた。

 今回は、大きな街なのでまず出来るだけ近くまで馬で行く事にした。重要な施設はほとんど町の中心部にあるとの事。区画毎に警備の者がいるのは同じで、リアル犬のおまわりさん達が波の様に襲って来たが、軽くいなして馬を急がせる。

 随分と来た所で、教会らしき建物の前の広場で皆馬から降りた。

「二手に別れよう。下っ端が襲ってきたら場所を聞き出し、確認できたら合流する。第三階級はともかく、その上となると実力はわかりかねる。無駄に戦って犠牲者を出したくないからな」

 というわけで、今回はグイル、イーア、ミーアをデザール兵、耳かき部隊の三分の二と共に警察署方面へ、私、ゾンゲ、リシュルとメイドちゃん達数名の耳かき隊で町役場へ向かう事にした。上位をひっ捕まえて命令させれば下っ端は言う事を聞くと前回学んだので、無駄な戦闘は極力避けたい。但し、寄生から逃れた者、集められている女子供を見つけた時は保護する事は約束だ。

 そしてもう一つ前回学んだ事。ルピアと私は離れるわけには行かない。出発前に予防策をとっておかねば。

「よし、ルピア子猫になれ」

「え?」

 私が考えた王様を守りつつ、邪魔にならず連れて歩く方法。

 子猫になったルピアを抱き上げると、メイドちゃん達に指示を出す。そう、秘密兵器を用意してもらったのだ。

「じゃあ、お願い」

「了解しましたぁ」

 ロシアンブルーのメイドちゃんが嬉しそうにその秘密兵器を出した。

 私はそれを肩からたすきがけに掛ける。幅広の布を輪にしただけのもの。そう。スリングである。赤ん坊を抱っこする時に使う抱っこひもの一種だ。

 その中にぽいっと金色子猫ちゃんを放り込む。すっごく可愛いぞぉ、ルピアちゃん!

「まてまてっ、これでは赤ん坊の様じゃないかぁ!」

 ルピアにゃんこは気に食わないようす。

「私と密着できるのは嬉しくないのか? 中は快適だろう? 寝ててもいいぞ」

 ま、ボスが出てきたら降ろすけどな。

「……マユカ、笑っていいだろうか?」

 リシュルとゾンゲの肩が震えている。私に次ぐ無表情な二人だが、笑えるんだな。

 この先、赤ちゃん抱っこスタイルで私は戦場を駆ける事になった。これでルピアとの距離を考えなくて済む。そしてこの秘密兵器は意外に役に立つのだ。


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