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ちょいと偉人に会ってくる  作者: 鈴木ヒロオ
雨に唄えば

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176/223

狭い一間の部屋で

 狭い一間の部屋で、筵をかぶったまま一人で眠っていた。


 板の硬さが残り、体が強ばっていた。


 もう日は昇り、部屋の中は明るかった。


 昨夜は遅くまで、真之介に小六と花里が旅の話を語って聞かせていた。


 ゆらめく橙色の蝋燭の下で、鎌倉の賑わい、スズランの群生、海鳴りの岬で見たアシカの群れなど、話は尽きなかった。


 夢中で語る二人と、それに聞き入る真之介を眺めているうちに、いつの間にか眠ってしまったらしい。


 三人の姿はもうなく、外からは又左さんの声や職人たちの声が響いてくる。


 槌の音は軽快で、木葉型鋸このはがたのこぎり槍鉋やりがんなのリズムが耳に心地よい。


 起き上がって外に出ると、両腕を空に伸ばし、日の光を浴びた。


 まだ目の覚めきらない顔を洗おうと井戸へ向かうと、枇杷の厚い緑葉の間に濃い橙色の実が鈴なりに覗いていた。


 甘い匂いが漂い、羽虫が小さな音を立てながら盛んに舞っている。


 食べごろで、喉が渇いているせいか、自然と唾がわいてきた。


 手に入れた砂糖で、枇杷のコンポートでも作ってみようかと思う。


 井戸のある水場では、花里が畑で採れた野菜を洗っていた。


 俺に気づくと、井戸から水を汲み上げて桶に満たしてくれる。


 刺すような冷水に、たちまち目が冴えた。


 「おはよう、花里」


 彼女は笑顔で応えてくれた。


 声に導かれて建築現場へ向かう。


 又左さんの指示のもと、木材が次々と運ばれていく。


 職人たちはそれぞれの持ち場で黙々と作業に没頭している。


 小六もその中に混じって働いていた。


 木の香と人の熱が、場の隅々まで満ちていた。


 今、多くの職人が取りかかっている主屋の屋根は、薄い木材の板を重ねて竹釘で留めたこけら葺きである。


 床板も張られ、少しずつ家の形が整っていく。


 主屋の柱にそっと触れる。槍鉋で仕上げられた表面は、指先を受け止めるように滑らかだ。木肌は優しく心地よい。


 主屋の隣に建てられた舟の格納庫は簡素な造りのため、ほぼ出来上がっていた。


 屋根は高く、一見すると祭りの山車だしを納める屋台倉庫のようにも見える。


 裏には小さな出入口があり、正面は観音開きで、内側に閂を掛ける造りで、外からは開かない。


 次に離れと厨を見て回る。


 どちらも杮葺きで、仕上げは土壁の予定だ。


 厨には石を組み、粘土で固めたかまどが壁際に据えられ、鍋釜をのせる掛け口が四つ並んでいた。


 何度考えてみても、四人で暮らすには広すぎる。


 竈の上には明かりを取るためか、大きな格子窓が設けられていた。


 目を上げて外を眺めると、真之介がまだ誰も使っていない完成したばかりの厠をじっと見ていた。


 彼も作業を手伝っていたのか、両手に材を抱えて立っていた。


 その手を止めて、何を見つめているのだろう。


 不思議に思い、厨を出て、後ろからそっと声をかけた。

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