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魔法術強化訓練

 意識を失ってしまった日の翌日、研究室に入ると結城が一番に声をかけてきた。


「マノちゃん!昨日奥の部屋で寝てたけど、大丈夫だった?鈴村さんと一緒に戻ってきたから、彼に任せてあの後すぐに帰っちゃったんだけど心配してたの!何かあった?」


 茉乃は結城達が戻ってきたことすら知らず、驚いた顔で返事をした。


「もう大丈夫です!何があったのかは実はあんまり覚えていなくて・・・でもたぶん昨日は慣れないことをしたので疲れちゃってたんだと思います。ご心配かけてすみませんでした!」


 結城はまだ何か疑っているような感じにも見えたが、渋々納得して、茉乃の手を握った。


「いい?無理は禁物!あたしみたいに楽しく無理せず生きるのよ!マノちゃんはなんでも頑張りすぎちゃうタイプだからお姉さんは心配なの。大事な仲間なんだから、いつでも頼って!」


 くりくりっとしたその瞳で、茉乃の顔を覗き込みながら結城が強く主張してくる。その気持ちが嬉しくて、茉乃は微笑んだ。


「ありがとうございます!結城さんのことは『姐御あねご』とお呼びし」

「いやだやめて!もっと可愛い呼び方で呼んでよ!」


 二人でそんな風にふざけ合いながら、今日の目的地である魔法術訓練所に出発した。




 研究所のすぐ隣にあるその訓練所は、魔法術の実験が安全に行えるように作られた施設でもあり、多くの研究員がその建物を出入りしている様子が見られた。


「あの受付で手をかざして登録したら、いつでも入れるから。空いている部屋を使うんだけど、あのホワイトボードで空きを確認できるの。ほら、今お借りしたマグネット、あれを使いたい部屋に貼り付けるのよ。」


 実際に空いている部屋の枠にマグネットを貼り付けると、結城に連れられてその部屋を目指した。



「さあ、入って!」


 そこは学校の教室より少し狭いくらいの部屋で、何もものはなく、窓すら無かった。


「ここはそれなりに大きな魔法術を発動しても壊れない部屋になっているの。と言ってももちろんやり過ぎれば傷は付くと思うけど。ちなみに、ここの防御魔法術をかけているのは鈴村さんよ。」


 今まで鈴村の仕事をよく知らなかった茉乃は、その話を聞いて思わず壁に触れてしまった。


「ひゃっ!?」

「あ、言うの忘れてたけど、魔法力を持っている人が触れると壁からビリビリくるから気をつけてね!」

「はい・・・(もっと早く知りたかった!)」



 そこから二人は早速、これまでに学んだ魔法術の成果を確認していく。今までは、様々な物が置いてある研究室では遠慮してできないことも多かったが、今日は遠慮なく力を振るえるということで、茉乃は少し楽しみにしていた。



「じゃあ、いつもより派手にいきましょ!まずは火から。ただし自分は保護されているわけじゃないから、気をつけてね。」

「はい!」


 茉乃は神経を集中させてから小さな声で呟いた。


「火炎放射器のような炎」


 それは、試してみたかったけれどこれまで恐ろしくて言えなかった一言を言ってみる。するとそこに二メートル以上にもなる、横に噴き出す炎が現れた。


「うわっ!?」


 慌ててしまい、炎は一瞬で消える。


「・・・マノちゃん、それ、ヤバいわね!」


 結城は目を輝かせながら、魔法具で録画した茉乃の魔法術をチェックしていた。だが茉乃は自分の炎に焦ってしまってそれどころではなかった。


「あんなに炎を出しちゃって大丈夫でしたか!?」

「あら、鈴村さんの防御魔法術がそんなに柔なわけないじゃない!大丈夫よ!」


 その言葉にホッとしたところで、次は氷を出す指示が来る。ふと、あの日の、江口に囚われた時のつららの檻を思い出す。


(つららか・・・ううん、私は壁にしよう)


「分厚い氷の壁」


 パーン、と張り詰めたような空気が流れ、そこに氷の壁らしきものは現れたが、一瞬で砕け散る。一部は残っていたが、今のはどうもイメージが明確ではなかったようだ。


「もう一回チャレンジしよう!」


 結城の言葉に奮起して、今度は言葉とイメージを変えてみる。


「三十センチ以上の厚さの氷の壁を天井まで!」


 すると今度は周囲の空気が一気に凝縮したかのように引き締まり、茉乃の目の前に、ほぼ思った通りの氷の壁が出来上がっていた。


「いいわ、いい!マノちゃんやるわね。さすが私の弟子だけあるわ!」


 再び映像をチェックしてから、茉乃に顔を向けて言った。


「さあ最後に一つ大きなのをやってみましょ?マノちゃんならできるかもしれない。試してみる?」


 挑戦的な視線が茉乃の目を見つめている。


(怖い、けどここならやってみたい!)


 柊の防御に囲まれたこの部屋なら、彼に守られているようなここなら、頑張れるような気がした。


「はい。何をやってみたらいいですか?」

「ウフフ、じゃあマノちゃん。あたしがあたし達に防御魔法術をかけるから、何かを『爆発』させてみない?」


 茉乃はキョトンと結城を見つめた。


「爆発、ですか?」

「そ。実は簡単なようでいて難しいのよ。たぶん今までだったら江口さんとか鈴村さんとか、なんなら所長クラスじゃないとできなかったんじゃないかな?」

「え!?それは私には無理では?」

「いいじゃない!できなくても問題ないし。できたとしてもあたし達のことは絶対に守るわ。この際部屋を壊して鈴村さんをギャフンと言わせちゃいましょ!」

「・・・」


(いいのかなあ、普通部屋の中で爆発なんか起こしたら、向こうでは即逮捕だよね・・・)


 いや、火炎放射器だってダメか、と自分に突っ込みつつしばらく考え込んでいたが、結局やらなければ終わらないだろうと茉乃は覚悟を決めた。


「じゃあ、やってみます!」

「その意気よ!」


 そして茉乃は考える。爆発ってどうやって起こる?


(ダイナマイトとかかな?)


 さすがにそれはやりすぎか・・・と考え、思いつく。


(そういえば昔動画で見たあの実験なら・・・)



「『小麦粉』現れよ、風に舞い上がれ、炎!」


 その瞬間、ボウッという音と共にブワッと大きな炎が部屋中を包み込んだ。小さい粉塵爆発をイメージしたのだ。


「おおお!」


 爆発と言っても部屋を破壊するほどではなかったようで安心する。二人にも部屋にもなんの被害も無かった。



 そんなこんなで無事、初めての魔法術強化訓練は終了し、どっと疲れた茉乃は、ぐったりしながら研究室に帰ることとなった。


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