17.式典
式典が始まった。想像していた物々しい雰囲気ではなく、お祭りのような賑やかなものだった。スティーヴンと並んで花道を歩くと、歓声が上がる。
「村にドラゴンを戻してくれてありがとう!」
「おねえちゃん、ありがとう!」
いろんな人に声をかけられ、手を振って答える。式典会場は教会だった。美しいステンドグラスに見惚れて足が止まると、スティーヴンが軽く背に触れる。
「綺麗だな」
「はい」
「まるで婚約式のようだ」
「はい!?」
「ある国では、教会でバージンロードというものを歩くそうだ。こうやって」
スティーヴンに手を差し出され、その手を掴む。エスコートされるように進むと、段の前にグルーストが立っていた。スティーヴンに促され、グルーストの前に立つ。すると、首飾りを見せられた。少し屈むと、それを首にかけられる。
「竜の牙でできた笛です。吹けばいつでもドラゴンが召喚できます」
司会の牧師に説明される。驚いて、グルーストを見ると、彼は微笑んでいた。
「あなた様には、どれだけ感謝してもしきれん。こんなものですまないが、貰っておくれ」
「こんなものなんてとんでもありません!」
慌てて笛を返そうとしたが、拒否された。こんな貴重なものを、と狼狽えてしまうと、スティーヴンの手が肩に乗った。
「貰ってやれ」
「…はい」
色々言いたいことはあるが飲み込み、受け取る。
「試しに吹いてみておくれ」
「はい」
グルーストの言葉に頷き笛を吹くと、息が漏れるようなか細い音が鳴った。吹くのを間違えたかと思ったが、正しかったらしい。バサバサと翼の音が外から聞こえた。
「外に出よう」
「はい」
スティーヴンにエスコートされながら外へ出ると、教会の前にパルシェンがいた。グルーストがにこやかに笑い、パルシェンに乗るよう促してきた。ドラゴンに乗るのは初めてだ。少し狼狽えると、スティーヴンが先に乗り、手を差し出してきた。その手を取り、大きな背中に乗る。
「パルシェン、よろしくね」
そう言うと、グルグルと喉を鳴らし返事をしてくれた。
「案内役を務めさせていただくが、よろしいかね」
「ええ、勿論」
グルーストが先頭に乗り、手綱を持った。口に笛を加え、一つ鳴らすとパルシェンが胴体を起こす。羽をバサバサと音を立てて震わせると、走り出した。驚いてスティーヴンの背中に抱きつくと、回した手にスティーヴンの手が触れる。
「大丈夫だ。掴まっていろ」
「は、はい」
正直、高いところは得意ではない。少し緊張しながら掴まってると、身体が浮遊感に包まれーーパルシェンが飛んだ。
「わぁ…!」
あっという間に教会が遠くなり、人々が小さくなった。
「綺麗だな」
「はい」
太陽が降り注ぎ、村が一望できる。整えられた丘に馬達が走り回り、流れる川が光り、藁屋根の家々が並ぶ。お祭り騒ぎの村を一望できた。
「わたくしは…少しはお役に立てたのかしら」
「当たり前だ。よくやった」
つぶやいた言葉を、スティーヴンが拾ってくれた。嬉しくて、少し強めに抱きつくと、スティーヴンの鼓動が聞こえた。心地よいリズムで鳴る音を聞きながら、美しい村を眺めた。




