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9.遭遇


ーー可哀想なシャーロット。哀れで愚かなシャーロット。


そんな声が聞こえる中、左太腿の刻印が熱い。熱に魘されるようにして目を開けると、洞窟の中にいた。目の前には、長い銀髪の綺麗な女性が何人も、こちらを見ていた。

「…だ、れ…?」

声を絞り出して聞いても、妖艶で甘美な笑みを浮かべるだけで答えない。ただ、こちらを覗き込んで、太ももの刻印を触っていた。

「可哀想なシャーロット」

妖精のような声で語りかけてきた。そればかりだ。何が可哀想なのか問いたいが、気力がなくて聞けない。

「貴女は私たちと取引をしたの。死ねないシャーロット、可哀想なシャーロット」

取引…?

ぼやける思考の中で思い至ったのは、父のことだ。生贄にされたことだろうか。もしかしてこの人たちはーー魔女なのだろうか。


「可哀想なシャーロット。魔法で動けるようにしてあげる」


光が煌めき目を瞑る。次に目を開けた時にはもう身体が軽くなっていた。


「あ、貴女たちは一体…?」


「うふふ。魔女よ、まーじょ。ここは魔女の洞窟」


寝かせられていた台から起き上がり、辺りを見渡すと、確かにそこは洞窟だった。数十人といる女の魔女たちは、皆シャーロットを見ている。

「ねぇ、貴女も魔女にならない?そんな見せかけじゃなくて」

「な、ならない、わ」

混乱する頭で答えると、長い爪で顎を触られる。

「魔女になれば不老不死よ?人間の夢でしょう?」

「わたくしは…」

「そうだったわね、死ねないのよね、シャーロット」

なぜ知っているのかと問おうと思ったところ、しーっと人差し指で制されてしまった。

「貴女のこの紋様、とても醜いわ。魔女になったら消してあげる。貴女のお父様の罪も、なかったことにしてあげる」

「なかった、ことに…?」

「ええ。魔法で過去に戻してあげる」

絶句した。そんなことができるのか。そんなことをしてどうするのか。そんなことが頭を駆け巡り、最終的に怒りが湧いた。

「結構ですわ。わたくしは、私の過去に悔いはありません」

「あら」

驚いたような顔をした魔女は、太ももをなぞって、また妖艶に笑う。

「そうそう。それでこそ、シャーロットよね」

「わたくしを、元の場所へ帰して!わたくしは魔女になったりしないわ!」

「え〜?仲良くなりたいのにぃ」

こちらが怒ってものらりくらりと交わされてしまう。怖いほどに美しい彼女たちは、ずっと微笑んでいる。

「まぁ仕方ないわね、シャーロット。可哀想なシャーロット。またね、貴女は呼ばれているわ。私達も場所がばれるとまずいもの。そろそろさようなら」

「呼ばれているって…?ーーわっ」





ずどん、と落ちる感覚がして、目を瞑る。怖くて、目を開けられずにいると、よく嗅ぎなれた匂いに触れた。

「ロティー!」

「スティーヴン様…?」

目を開けると、暗い部屋にスティーヴン、ジャスミン、ロゼッタ、オスカーがいた。

「ロティー、よかった…!」

スティーヴンにお姫様抱っこされながら抱きしめられる。正直、先程の出来事が怖かったから、安心して目を瞑った。

「何度影に呼びかけても繋がらなかったんだ。一体どこにいたんだ。なにがあった。怪我はしてないか」

「は、はい」

熱烈なハグに照れて始めてしまった。みんなが見てる中、スティーヴンは気にせず抱きしめる。何があったか話そうとして、口を開くが言葉が出ない。おかしい。魔女に会った。そう言おうとするだけで、言葉が出ない。

「ロティー?」

スティーヴンが訝しげな声を出して顔を覗き込んできた。一生懸命伝えようとするが、声が出ない。

「魔法がかかっているな。待て」

スティーヴンが何やら呪文を唱えると、光が部屋を照らした。

「どうだ、喋れるか?」

「魔女に会いました」

喋れた。伝えられた。安心して、今頃怖さが増してきて震えてきた。それに気づいたスティーヴンが抱きしめてくれる。

「そうか。怖かったな。もう大丈夫だ」

「刻印が、熱くて…」

頭がぼーっとしてきた。気を失う寸前、スティーヴンの優し手が目を覆った気がした。


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