『至高』のふたり
周囲ではたったふたりの襲撃者が数十にも及ぶ手練れの人形遣いと渡り合っており、上空では七式とその契約者、そして己の人形が派手な攻防を繰り広げている。
その最中にあっても、協会代表、『至高の三師』ジルヴェスター・ラルフォンスは悠然と座っていた。
「――余裕だなあ、お前」
そんなジルヴェスターに声をかける者がいる。どういう手段かはわからないが、ハルカが張った防壁もするりと抜けて正面に立つのは、
「君も、余裕たっぷりのようだね、真柴くん」
おうよ、と軽く片手を上げて笑うのは、階下に監禁していたはずの真柴だ。
「騒がしいから便乗しようと思って。祭が好きな性分でね」
「相変わらず、な。昔からそうだった。揉め事や争い事の中心には、まず必ず君がいた」
「そいつは心外だぜ。全部じゃない。十中八九だ」
「ほぼ全てだろう」
益体もない軽口の応酬。ジルヴェスターは肩をすくめ、上空を見上げた。
「あれが、君の創った七式とその契約者か」
「そうさ。面白い奴だろう?」
「――ああ、面白い」
頷いて、ジルヴェスターは頬杖をつく。そのデスクに堂々と尻を載せた真柴を横目に、吐息した。
「世界とは何か、と問われたよ。そして私の答えを、どうでもいい、と切って捨てた」
「ああ、それは私も聞かれたな。どうしてセネカを創ったんだってさ。答えなかったが」
真柴の言葉に、ほう、とジルヴェスターは真柴へ顔を向ける。
「それは私も興味があるな」
「お前にも教えてなんかやらん。あいつが自分で見つけるさ。ただ……お前にもヒントくらいはやらんでもない」
「ヒント、ね。何だろうな」
「お前は、世界というものに対する認識が、小さい。――お前だけじゃない、どいつもこいつも、世界の見方が狭過ぎる。見えている世界しか見ていない。想像力が足りない。その程度だから、セネカを手に入れても大したことができない」
「……その、世界に対する大きな認識というものが、彼にはできると? 彼にはそれだけの想像力があると」
「いや、まだ足りない。これからだ」
きっぱりと、真柴は断じた。けれど、その口許には笑みがある。
「今はまだ足りていない。だが、いずれあいつは見せてくれる。世界というものがどんなものなのか。個々の小さな世界ではなく、それら全てを包括するこの世界というものを。――そしてそれが、私の見たかった世界であり、錬金術の可能性なのさ」
可能性、と真柴は言う。
「そいつを探すために、私は長いことホムンクルス一式を探してきた」
「一式を? 人形師の創始であるパラケルススの創り上げたという、フラスコの中の小人を? しかし、一式は遠い時代に喪われたはずだろう」
「ところがそうでもないらしいのさ。まだ見えてはいないが、確実に近づいているし――今だって、そうだ」
なあ、と空を、そこでの戦いを見上げて、真柴は言う。
「見たくはないか? 人の想像力は世界に届くのか、その答えを。錬金術の可能性、魔法の届く最果て、全ての結論の在り処を。――あのふたりが、きっと見せてくれるものを」




