デヴュー戦、開始
一瞬のうちに何が起きたのか、吉野にはさっぱりついて行けなかったのだが、幸いにしてその結果を呑み込むのは早かった。
先程まで吉野が立っていた場所は完全に崩壊し、崩落し、下階が完全に見えてしまっている。その惨事を引き起こした秋東はといえばすぐには見つからなかったが、ちょっと視線を上げればすぐに目に入った。悠々と浮かんでいる。
そして吉野の傍らには、セネカがいた。
「せ、セネカ、どうやって……」
セネカが助けてくれたのだというのはわかる。そうでもなければ吉野が生きているはずもない。しかし、セネカは吉野の部屋にいるのではなかったか。
対してセネカは、平然と、
「テッペーが呼んでくれたから」
「いや、呼んでも来れるものじゃ……」
「私はテッペーのホムンクルスだから」
いや、それでも説明になっていないのだが。これも魔法ということか。何はともあれ、
「ありがとう、助かった」
「ん」
セネカは短く頷いて返す。その間も、視線は宙に浮かぶ少女と天使から逸らしていない。
セネカは状況を問うてこない。わかっているということなのか、訊くまでもないということなのか。しかしいずれにせよ悠長に説明している時間もない。
天使が再び動きを見せる。先程と同じく、光が集束していく。
「またさっきのビームか!」
どいつもこいつもビーム好きだな!
吉野が歯噛みし、セネカが無言で吉野の腰に横抱きに抱き着く。
「――『ユーストライアの位相転換』」
セネカの言葉と天使の光砲は同時だった。
一瞬で視界が切り替わり、セネカと吉野は光砲の射線外に逃れている。
危機は脱したが、戦況は変わっていない。あちらは距離に関係なく砲撃できるようだが、
「ど、どうしたもんかね……」
目まぐるしい状況の転換に振り回されながらも、冷静を得るために自分に言い聞かせるようにつぶやく。前回、セネカの戦いを目にしてはいるものの、吉野はセネカの戦力を把握しているわけではない。長距離攻撃を、セネカは持っているのか。
というか、前回の戦いで吉野が参加したのは最後だけで、あれは実のところただ力づくで押し返しただけだったような気もする。今回もそうするか、と思わなくはないが、絶対的に前回の天使と今回の天使では出力が違う。
セネカを見る。
セネカも、吉野を見上げていた。
どうする。
こうしている間にも、敵は次の動きを見せようとしている。
もう少し短いパートが続きます。




