1、転生と使命
新作を始めました。
よろしくお願いします。
やっと、か。
左手の甲に浮かんだ転生紋を見つめ、俺は、安堵の息を吐いた。これで、聖都の大聖堂に行ける。
次のための準備は、何年も前から整えてある。転生後は、さらなる高みを目指すことができるだろう。
俺は、特殊な魔導系種族として生まれた。生まれたときに6個の命を与えられていることから、ロッコ族と呼ばれる。
ロッコ族の幼少期は、非常に弱くて脆い。厳しい環境に適合できず、幼くして死ぬ者も多い。そのため5回までは、記憶や能力を引き継いで、死後即座に転生する能力を持つ種族だ。
◇◆◇◆◇
「わわっ、魔王シリウスじゃん! まだ最終転生をしてなかったのー? ウケる〜。神の転生を受けたら、過去の地位を捨てることになるんだよ? 10歳からやり直しだよ」
大聖堂に着いた直後、うるさい奴に見つかった。会うのは、6年ぶりか。
この世界では、一定の条件を満たした者は、死の数年前になると、手に転生紋が現れる。これは、神による転生を受けるための印であり、選ばれし者の証でもある。
悪魔族にも、転生紋が現れることがあるのか? まぁ、彼女は、多くの魔王を惑わす実力者だが。
「だから何だ?」
「シリウスは小国の魔王だから、アピールになるね。イービー神の星に行って、どこかの星を治める神の配下になって、ハーレムを築いて、ウハウハしたいんでしょ〜」
「は? 俺にそんな趣味はない。淫乱なサキュバスと一緒にするな。おまえこそ、なぜここにいる?」
「ん〜? スピカちゃんはね〜、ハーレム魔王と同じだよ。言っておくけど、今はサキュバスじゃないよ? 5年前にロッコ族になったもーん」
「誰がハーレム魔王だ! はぁ? おまえがロッコ族? 悪魔族だろ」
「シリウスは知らないのね。私達は、転生のときに種族が変わるよ。記憶と姿の引き継ぎを希望したら、ロッコ族になっちゃった。転生直後は、あまりにも弱いから驚いたよー。最初の1年で3つも命を失くしちゃった」
「ロッコ族に生まれると、姿の引き継ぎをした大人でも、最初は弱いからな。今は4つ目の命か」
「ん? 5つ目だよ。神の転生って、最終転生でしょ」
「今、3つの命を失くしたと言わなかったか?」
「それは、1年以内の話だよ。あっ、始まるんじゃない? 10歳の私ってかわいいかな。能力を引き継いでも、10歳なら色気が足りないよね〜」
「知らん! あっちに行け」
「やだ〜。魔王で攻略できてないのは、シリウスだけだもん。私は完璧主義なのよ〜」
うざい。
おそらく、彼女は不安なのだろう。神による転生後は、有能な者はスカウトを受ける。だが、ロッコ族になってまだ5年なら、目立つ実績もないだろう。しかし彼女は、転生後たった5年で、転生紋が出たのか。
ゴーン!
大聖堂の講堂に、大きな鐘の音が鳴り響いた。
ゴーン!
ここには、転生紋を得た者しか入ることができない。大半はロッコ族のようだ。ざっと見た感じで200人程度か。
ゴーン!
大神官が姿を見せた。唯一の絶対神であるイービー神に仕える魔導士だ。大神官は何人かいるはずだが、女性か?
ゴーン!
大神官は、集まった者達にやわらかな笑みを向けている。俺達の頭の中を覗いているのだろうな。
ゴーン!
ようやく、大神官が口を開く。
「お集まりの皆さん、大神官シャルルです。これより、イービー神による転生の儀を始めます。能力や記憶の引き継ぎは完璧に行われますが、再成長の余地のあるロッコ族は、10歳前後の子供の姿になるでしょう。次の鐘が鳴った後は、合図をするまで口を開かないでください」
彼女が大神官シャルル様か。大神官の中で、最も、イービー神に評価されていると聞く。俺は運が良い。転生後は、彼女の元で働けば、さらに条件の良い選択肢が増えるかもしれない。
ゴーン!
6度目の鐘が響くと、講堂内に真っ白な光が降り注いだ。ムズムズした不快感を感じる。俺の身体は真っ白な光に包まれ、視界も真っ白に染まった。
◇◇◇
「神による転生は無事に終わりました。新たな生き方に悩む人は、礼拝堂にいる神官に相談してみてください。なお、前世の記憶が戻った人には、私からお願いがあります。この場に残ってください」
大神官は、パチンと指を鳴らした。喋ってもいいという合図だろう。
だが……。
俺は、頭の中に湧いてきた膨大な記憶の波に圧倒され、口を開くことができない。これは、俺がロッコ族となる前の記憶か。
凄まじい勢いで再生される記憶。だが、頭には残らない。遠い記憶として押し流されていく。
そうか、俺の前世は、地球という星に住む日本人だった。長い人生ではない。自分の名前も出てこないな。だが、妙に鮮明な記憶がある。これは、学生の頃に付き合っていた彼女とプレイしていたゲームか。なぜこんな記憶が……。
講堂内にいた大勢の移動が終わった頃、俺の記憶の整理も終わったようだ。ほとんど覚えていないが。
ふと、視線を感じて横を見ると、10歳前後の子供の姿になったスピカが、俺を見下ろしていた。
ん? 見下ろしている?
俺は、周りを見回した。残っているのは俺達だけか。
「えーっと、スピカさんとシリウスさんですね」
俺達の目の前に、大神官が移動してきた。綺麗な人だな。だが、恐ろしく魔力が高い。まぁ、大神官だから当然か。
「ひゃー! シャルル様! スピカちゃんは可愛いはずですけど、どうして魔王シリウスが、こんなにカワイイのですかーっ!」
「ふふっ、確かに二人とも可愛らしいですね。子供の姿になったということは、再成長の余地がそれだけ大きいということです。お二人には、私からお願いがあります。聞いていただけますか?」
大神官の言葉には強制力がある。それに、大神官の頼み事を聞けば、俺のこれからは安泰だ。やはり、俺は運が良い。
「大神官シャルル様、何なりとお申し付けください」
「うん、私も聞くよ〜。何かなー?」
「ありがとう。お二人には、とある人工星に行ってもらいたいのです。そして、スープラットの厄災を阻止してください」
スープラットの厄災を阻止せよ?
「大神官シャルル様、その厄災は、数十年前の人工星爆発から始まったのですよね? あの一帯は、イービー神により封鎖されていますが」
「ええ、だから、時を遡ってもらうわ。新たに6つの命と能力を与えます。詳細は、現地にいる人に聞いてくださいね」
大神官は、ふわっと微笑み、俺達に本のような物を渡した。これは何だ? 質問しようと口を開きかけたときには、俺達は、白く輝く光に包まれていた。
本作を見つけていただき、ありがとうございます。
今夜、もう1話投稿予定です。
よかったら、また覗いてみてください。




