音楽
彼の聴いている音楽は懐かしさに満ちていた。子供の頃に生まれた曲らしい。けれども、どこか不穏さもあった。
夜のお供に聴いている、と言っていた。帰宅する時に聴いていた。彼の聴いている曲には興味がそそられるものもあった。けれど、聞くのが恥ずかしい。そう思っている自分もいた。
昔の曲ならば調べれば出てくるだろう。そう高をくくってもいた。けれどいくら調べても見つからなかった。
懐かしくも不穏な曲。どんなタイトルなのかも分からない。メジャーデビューしてないんじゃないのか。
もしくはインディーズ時代の曲なのだろうか。そうだとしたら、膨大な時間を調べるのに使わなければならないのだろう。彼に聞けば手っ取り早く感じられた。
恥を忍んで勇気を出して言ってみた。すると彼は教えてくれた。懇切丁寧ではなかったが。
彼から教わった曲を聴いてみる。すると、不穏だったが気に入ってしまった。どんどんと他の曲も聴いてみる。なんて面白いのだろうか。最初に感じていた不穏さは意図的だったのに気づく。
導入の部分から聴く人を選んでいたのだ。むしろ、それが味があって良いのだと思えてきた。
彼の聴いているなかでおススメなのも聞いてみた。するとどれもおススメだと言われた。
彼の言葉を聞いて確かにそうなのかもしれないと思った。今までのが面白かったように。
どの曲も作曲者が面白いと思って作ってきた曲だ。それなのに優劣を付けるなんておこがましさを感じてしまった。
人は似たようなことをしているのだろう。しかも、平然と。だが、よく考えればおかしなことだろう。それにも気づくことができたのは、彼のおかげだろう。彼に感謝できた。今度お礼の菓子でも送っておこう。
彼から教わった曲は、今では膨大な数に増えている。彼からのおススメを聴きながら。
導入の不穏さは相変わらずである。けれどもそれが癖になっているのだ。味わいがあるかのようにーー。




