最後の夜
最後の夜に相応しいのは何なのだろうか。飲酒する自分の最後は。
缶ビールはありふれている。だから除外だ。
赤ワインはもう最後と決めてから飲み切った。白ワインも同じく。
せめて、カクテルが良い。そう思った。洒落のためではない。見せびらかす相手もいないのに。
手元にあるカクテルの本を眺めていると、「パラダイス」というカクテルを見つけた。
なんでもジン系のカクテルで、ドライ・ジンにアプリコットブランデー、オレンジジュース。その3つで作るようだ。マラスキーノチェリーはどんなものだろうか。赤色だというのは分かる。しかし、酒呑みであることを辞める私には不要に思えた。
最後に呑む酒は決まった。「パラダイス」にしよう。私はそう決めるとアマゾンでアプリコットブランデーを注文した。
数日後に届いたアプリコットブランデーを楽しむ。甘さとそこそこの度数がある。確かめると、20度。日本酒の原酒と同じぐらいか。1回しか呑んでなくて、翌日は二日酔いになったことを記憶している。
「パラダイス」を作って、試飲してみる。美味い。これで最後にはしたくない。だが、最後と決めたのだ。
それから数日が経ち、3月末になった。用事を済ませて帰宅する。
シェイカーに氷を入れ、ドライ・ジンとアプリコットブランデーとオレンジジュースを適量入れて振る。氷の入ったシェイカーは冷たい。金属製だから仕方ない。
溢れぬようおしぼりに包んでシェイクする。8の字のように振るうことはできないがね。
しばらくシェイクしてグラスに注ぐ。オールドファッショングラスではなくワイングラスに。
オレンジ色が映えている。一口呑む。美味い。付け合わせのチョコレートケーキと合わせてみる。ふむ、美味い。相性は良さそうだ。
しばらく呑んでからグラスを空かす。ボトルのドライ・ジンもアプリコットブランデーも無くなった。これで酒は完全に締めである。
次に酒を呑めるのはいつ頃になるのだろうか。それは分からない。それまでの間は、私は禁酒、いや断酒していこう。
そして、その翌日。4月1日の綿抜きの日に、私は二日酔いで弱ったのである――。




