2話-1「シショウとオトモダチ」
魔法。
その単語を聞くだけで、年甲斐もなくワクワクしてしまう。
年甲斐も何もまだ2歳だけど。前世合わせても23歳だけど。
そう、俺は二歳になった。
でも別に誰かが誕生日を祝ってくれるとかはない。
でもちょっと寂しいから一人で歌は歌っておいた。
レアーさんにはちょっと変な目で見られた。因みに日にちは覚えていないから直感だ。
それにしても、魔法の世界。おらぁワクワクしちまう。
まあ異世界転生した時点で気づくべきだったんだろうけどな?
前世ではラノベとかはあまり好きじゃなかったし、どちらかといえばミステリー小説とかをカッコつけて読んでいた。
あの頃の俺はラノベ=オタク、みたいな印象があったんだろうな。
ごめんな、ヲタみん(オタク民)(ピクミン)たちよ。俺は今、君たちの気持ちが理解できるよ。
最高すぎる。
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あの日、魔法の事を教えてくれた日から、レアーさんがほぼ毎日部屋に来てくれるようになった。
聞いてみると、レアーさんは最初、俺を怖がっていたらしい。
理由は髪の色。きれいな髪だと思っていたんだがな。黒髪は日本人の誇りだ。
だが、この世界では黒髪の人族は珍しく、普通は生まれないのでちょっとした恐怖心をいだいてるんだそうだ。
いくつも質問をした。
身長と体重はどれくらいですか? とか。
今日朝ご飯、何食べましたか? とか。
来世は何になりたいですか? とか。
朝ご飯はパン派ですか? とか。
スリーサイズって……? とか。
デリカシーのない質問には答えてくれなかったが、基本的には快く話してくれて、俺の暇つぶしとしてはとても最適だった。
そんな感じで数日を過ごしたが、魔法については教えてくれなかった。
ルドラさんが教えてくれるからだそうだ。
早く教えてくれよ! ルドラ先生!!
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「……ルドラさんが呼んでるよ?」
雲を見て、「あれはたい焼きかな? 美味しそう、グヘヘ」とか言ってたら引いた顔をしたレアーさんが現れた。
「コホン。わかりました」
咳払いを一つ。俺は部屋を出た。
最近はレアーさんと部屋を回ったこともあったから道は分かる。右に曲がって直進、大部屋だ。
しかし、呼び出し。きっとこれはあれだ。
マホウについてだ! やっとの思いでここまでっっ!
2歳になってから半年が経ったんだぞ! 半年から放置しやがって!
っとガキみたいな怒りを出してしまった。まあまだ2歳だからセーフか。
ドアを開けると、三人の男女がいた。
一人目は中心の椅子に座っている。
紺色の髪をして高そうな椅子でふんぞり返っている男。
ルドラさんだ。
二人目はその隣に立っている水色の髪をした女性。
少し露出が多い服装をしていて、腹のあたりがよく見える。
スタイルは良いのに筋肉は引き締まっている。理想の体そのものだ。
レアーさんと同じく肩まで伸びる髪が存在感を示している。
三人目はその反対側に立っている白髪の女の子。
他の女性陣と同じくロングヘア。
俺よりも年上に見えるが、まだ子供。世間で言ったらロリに分類される年頃だ。
俺の顔を見ると少し嫌そうな顔をした。怯えているようにも見える。
ヌトスさんは何をしているんだろうか……女二人を侍らせてハーレムごっこかな?
「え、ええと。お父様、この方々は?」
「魔術の訓練だ、言っただろう」
返しになっていない。
「いえ、あの、こちらの方々は僕に関わりのある方々で?」
「無論。貴様の師と仲間だ」
師と仲間? よくわからない。
つまりこういうことか。センセイとオトモダチだ。
みんなで友達を作りましょうってことだ。
平和でいいね。そういうの、大好きだぜ。
まあそういうのは置いといて。
きっと魔術の先生と、共にそれを学ぶ仲間だ。
つまり……。
「これから魔術を学べるんですね!?」
「ああ、そう言ったろう」
おおお。やっとだ!
待ちに待ったマホウの授業だ!
ひゃっほーい! いえーい!
ぶおおおおおおおおおおい!!
くぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおい!
……じゃあまず自己紹介からだな。初対面の人に挨拶。常識。小学校の頃習った。
「僕はヤクシャ・シュアールです。お名前を伺っても?」
「貴様の名は聞き及んでいる。私はヌトス・ワルドだ」
水色の髪の方が先に名乗った。もう一人は……
「そちらの方は?」
「アイナ・パラキエル……です」
白髪の方はアイナか。可愛い名前だ。
年も近いだろうし下の名前で呼ばせてもらおう。
……馴れ馴れしいかな。嫌われるかな……。
ていうか何かやっぱ怯えられてるな。なんかお気に召さなかったかな。
不安要素は取り除きたいし、靴でも舐めておこうかな……?
「紹介は終わったな。最初は庭で座学から始めろ」
「黙れルドラ。貴様に命令される筋合いはない。私は貴様に雇われたのではない。シュアールに雇われたのだ」
何が違うんだろうか。
ていうかこの二人は知り合いなんだな。
とにかく喧嘩はやめようぜ。ラブとピースがこの世の全てだ。