1話-3「お散歩」
おもちゃで遊んでいたら、レアーさんが来た。
だが今日はいつもと様子が違う。
どこだろうか。メイク……髪の毛……下着……いや、絶対違う。なんだ……?
あ、服か。
いつもは真っ白な服を着てるんだが、今日は赤だ。
髪の色と同じ色で、完璧にマッチしていて全体の統一性が整っている。
でも、おめかしなんてしてどうしたんだろうか。
もしかしてこれから合コンとか、、パパ活とか、、そんな訳はない。
俺はレアーさんを信じてるし、何かあったらルドラさんにチクれる。
俺は今何でもできる。すなわち完全無欠なのだ。フハハハ!!
とか、考えていたら急に抱き上げられた。
いわゆるお姫様抱っこ。そんな事されたらときめいちゃうぜ。特に俺の下半身の部分が。
抱き上げられ、急にレアーさんが止まった。
見ると、そこにあったのは巨大な湖だった。
「どう? 綺麗でしょ?」
(はい……)
聞かれるので答えるが、声は出ない。
そんなことより、景色だ。
何度か窓から覗いていたあの銀色の湖が、今目の前にある。
よく見ると赤や青、黄色い魚のような生物も泳いでいて、湖に彩りを与えている。
「ちょっと、買い物したいからついてきてね」
レアーさんが歩き始め、景色が視界から消えていく。
あ……あぁ……俺の癒やしが……。
空に向かって手を伸ばすが、レアーさんは気づかない。
そのまま歩き始めた。
買い物したいって言ってたけど……俺がついていく必要ってあんのかな?
まあいい。唯一のマイマザーの頼み事だ。受けてやるのが息子の定め。
そうして無言のまま、数分が過ぎた。
~~~
ついた先は、町だ。
町と言っても街ではなく、町。
前世ではこの違いがわからなかったが、ここを見れば歴然だ。
高層ビルが立ち並んでいるわけでもなく、もちろん巨大テレビに立体の猫がいるわけでもない。
木造建ての家が立ち並んでいて、赤や青などの色とりどりな外壁や屋根が目に入る。
更には巨大な噴水や、巨大な教会なども。
「ここはシルバータウンって言ってね、あそこにある建物が……」
疑問を口に出せず、もどかしくしていると、ベストタイミングで俺に教えてくれた。
ありがてぇ。
どうやらこの|シルバータウン〈銀色の町〉という所は小国に属する小さな町で、近隣住民の便利な買い物場所として利用されているらしい。
ここには八百屋や肉屋、雑貨屋から家具屋まで何から何まで揃っていて、見る限りとても便利な場所だ。
だが奥の方を見るとガラの悪い連中や、いかにもヤンキーな連中が居酒屋のようなものに|屯〈たむろ〉していて、とても治安のいい場所とは言えないだろう。
そんな中でも│一際目をひいたのは、盾型の看板をぶら下げた、『│武器鍛冶屋』という店だ。
鍛冶屋……フ◯イナルフ◯ンタジーにでも出てきそうだ。厨二病が運営してる店なのか?
「ヤクシャはどこ行きたい?」
突然聞かれる。
どこかな……やっぱ武器鍛冶屋、いや、あそこにあるめっちゃでかい建物とか、見たことのないものが多くて目移りしてしまう。
俺がキョロキョロキョロキョロしていると、レアーさんが俺を見つめ、首をかしげる。
すると納得したように目を開いた。
「あ、そっか。まだ喋れないのか」
︎︎あ、うん、そうじゃん。俺話せないやん。
少しくらいは情報共有ができるといいけど。
てか言語が理解できないんじゃなくて声が発せないんだよな。
悲しい。
「……もう、いいよね。じゃ、喋れるようにしてあげるね」
レアーさんは俺に手を当て、何かを口にした。
「深遠な智慧の泉より、輝きの光を授けし者よ。
我が手に秘めし叡智を解き放ち、対象者の知性を高めん。
啓示の炎を灯さん! 知識の源よ、我が呼び声に応えよ!
――知恵の輝きよ、『エンライトメント』」
レアーさんが厨二的なセリフを言った次の瞬間。彼女の手と俺の視界は緑色で染まっていた。
その時、俺は一つの違和感に気づいた。
「……喋れる」
そう。今まで開いても出なかった声が、俺の口から波を立てているのだ。
……表現の仕方がおかしいな。つまり喋れるってこと。凄いことだ。
「でしょ? 私、これでも前まで魔術師だったんだから」
「魔術師?」
「そう、あれ? 教えてなかったっけ?」
魔術師……? 厨二病なのかな? それとも……?
「まあいいよ。魔法はそのうちルドラさんが教えてくれるし。ていうか、結構声かっこいいね」
ルドラ……ああ、俺の│義父親のことか。
しかも声を褒められた……! デュフフフ
いや、それよりも先に聞きたいことがある。
「魔法、見せてくれませんか?」
「ん? いいよ」
レアーさんの魔術師という発言、義両親の手から出た緑色の光。
二つの証拠が俺を納得させる……まあ最初から分かっていたっちゃ分かっていたが。
これは異世界転生の定番。これがあるかないかで人生の面白みやその他すべてが左右される。
レアーさんが手を前にかざす。
「微小な炎の粒子を創造せよ――『灯火』」
彼女の手から小さな灯火が出、消える。
はっきりした。
ここは魔法の世界なんだ。




