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聖女ラエルザ伝 ~脳筋すぎて婚約破棄されたので、領地に戻って改革することにした。もちろん筋力で~  作者: 有山リョウ
第一章

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第三十四話 聖女ラエルザ 魔導人形師を招く③

ちょっと数日更新できないかもしれません


 用水路をすぐに修復しろ。無理難題を言いつけるだけ言いつけると、特別監査官のボードンは逃げるように去っていった。

 私としては溜め息しか出ない。


「全く、なんと言う理不尽! お嬢様、あのような命令を聞くいわれはございません。正式に抗議いたしましょう!」

 アリサが目を釣り上げて、ボードンが去っていた方向を睨む。


「いったい彼は誰だい?」

 事情を知らないユークが、不思議そうに首を傾げる。

「あの人はボードン様。王都から派遣された特別監査官で、私の領地運営を監査しているの」

「ああ、なるほど。グエンは君の領地も取り上げるつもりなのか」

 ユークはすぐに事情を察し、顔を顰めた。


「それで、用水路が壊れてるのかい?」

「そうなの。おかげでこの前までは、私が畑に水を撒いての」

「君が畑に水を? 手間なことをしていたんだね」

「そうでもないわよ、デザリアがあるから」

 私は腰から、黒いスティック状のデザリアを引き抜く。


「何だい? それ?」

「そういえば紹介がまだだったわね。これはお祖父様が戦利品として持ち帰った、魔王の武器よ。姿を変えることができるの」

 私はデザリアを、大きなシャベルに変えて見せる。


「あっ、それは魔物を倒した時の。いつの間にかなくなってたから、不思議に思ってはいたんだ」

 ユークがデザリアを指差す。確かにユークを襲っていた魔物を撃退した時、シャベルにしたデザリアで叩いたのだった。


「これを大きな杓に変えてね、奥にある湖から畑に水を撒くのよ」

「水を撒くって、まさか……空に?」

「ええ、雨みたいに降り注ぐってわけ」

 私が説明すると、ユークは頭を抱えた。


「そんな不効率なことをしたのかい、ラエルザ」

 ユークは呆れた声を出すが、そんなに変なことだろうか?

「そぉ? 結構簡単だったけれど?」

 私にとっては、夕食前の軽い運動だった。すると大きな溜息が返ってくる。


「もういい。日照りの度にそんなことをやらせるわけにはいかない。壊れた用水路の場所に案内してくれ」

「それはいいけれど、どうするの?」

「私が誰か忘れたのかい? 数学者にして特級魔導人形師、そして建築家だよ?」

 呆れたようにユークが答えた。そういえばそうだった。ユークは建築家としても名を馳せており、大きな川に橋を掛ける仕事に抜擢されていた。


「じゃぁ用水路を直せる?」

「造作もないよ。ただし、一人じゃ無理だ。ラエルザ、手伝ってくれるかい?」

「もちろんいいわ!」

 私は二つ返事で答えた。




「用水路はこっちよ」

 私はユークとソイル、アリサを連れて、村の用水路へと向かった。全周を崖で覆われたキルクス村では、川というものは貴重であった。崖から湧き水は出るが、全ての水は屋敷の裏にある湖に流されてしまう。


 そのため崖の岩には、緩く弧を描くように用水路が配置され、雨水や湧き水を集め畑へと誘う用水路が設けられていた。ただしずっと前に山崩れがあり、用水路ごと崖の岩肌が崩壊している。それ以来、用水路は使えないでいる。


「なるほど、この用水路を作ったものは腕がいいな。難しい地形の中で、水を集める工夫が凝らされている」

 壊れた用水路を見るなり、ユークは何度か頷いた。


「ただこれだと、素人には修復は難しいだろう」

「そうなのよ。崖の急な傾斜に、緩く用水路が設置されてるから、元のように修復できないの」

 ユークと一緒に用水路を見ると、壊れた用水路を修復しようとした跡が見られた。キルクス村の人達も、復旧のための行動はしていたのだ。しかし素人目にも、難易度が高いのは見てわかる。


「私もやってみようとは思ったんだけれど、そもそも地形そのものが変わってるから、どうすればいいのかもお手上げで」

 私はえぐれた崖を見上げた。地面なら掘れるが、えぐれた崖はどうすればいいのかわからない。


「まずは、測量だな」

 ユークが呟いたかと思うと、全身が淡く緑色に発光した。そして足元から光の線が地面を這い、無数に伸びていく。

 光は格子状に伸びていき、周囲の地面は手のひらが収まるほどの正方形で区切られていく。


「なにこれ?」

 私は緑の光で区切られた地面を見て驚く。光は私の足元や崖の岩肌にも伸びていた。


「測量しているのさ。グリッド魔術と私は呼んでいる。これで修復する箇所の、距離と勾配は確認できた」

 ユークは顎に手を当て、ほんの数秒考え込む。するとまた地面にグリッド魔術を発動し、今度は図面を書き込み始める。


「こんなものかな。ラエルザ、石材となる岩がいる。あれとあれとあれを持ってきてくれるかい?」

 ユークが地面から顔を出す、岩を示しながら問う。力仕事は得て分野だ。


「任せて、すぐとってくる」

 私は軽く走って岩の下に到達すると、岩の出っ張りに手をかけて持ち上げた。そしてユークの下に行き岩を下ろす。数度の往復で、指示された岩を全て運び終える。


「じゃぁ次は、この線に沿って切ってくれるかい?」

 ユークはグリッド魔術の線を、岩にも投影した。綺麗に引かれた線は実に明確だ。


「わかった、やってみる」

 私はデザリアを巨大な鉈へと変えた。そして息を吐き刃を水平に振り抜く。すると線に沿って綺麗に岩を切り抜くことができた。


「これでいい?」

「ああ、見事なもんだよ」

 ユークに褒められて、私は得意げに鼻の下を掻いた。


 私は手先が不器用で、裁縫なんかの細かい仕事は大の苦手だった。しかしこの手の体を動かすこととなると、正確に動けるのだ。


「それじゃぁ、どんどんいくわよ」

 私はデザリアを操り、ユークに指示された場所を次々に切っていった。


ロメリア戦記のアニメが、2026年10月3日(土)21時~

アニメタイムズ・U-NEXT・Netflixにて国内独占&地上波先行配信!

また2026年10月5日より

TOKYO MX/BS11/サンテレビ/KBS京都/CBCにてⅡクールで放送が開始されます !



皆さん見てください

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