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聖女ラエルザ伝 ~脳筋すぎて婚約破棄されたので、領地に戻って改革することにした。もちろん筋力で~  作者: 有山リョウ
第一章

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第一話 聖女ラエルザ 婚約破棄される①

新しく小説を書くことにしました

これからラエルザをよろしくお願いします

 聖ラエルザ伝。

 この資料は千年前にいたとされる聖女、ラエルザが起こした奇跡の数々を編纂した記録である。ただしラエルザが残したとされる奇跡の数々は、事実を疑うようなものも多い。そのため近年の学者の中には、ラエルザの存在そのものを疑う者も少なくない。



「聖女ラエルザ・ロウ・マグノリア伯爵! お前との婚約を破棄する!」

 グエン王太子が私に指を突き付けたのは、グィード王国の王宮グスターヴ。玉座が置かれた赤の間でのことだった。


 金の装飾が施された玉座には、座る者の姿はない。現王グラルドは病に侵され、長い間伏せっていた。空位の玉座の右手側には、癖のある髪の下、王太子を示す金色の冠帯を身に着けたグエンが立っていた。その傍らには亜麻色の髪に桃色のドレスを身に着けた、サリーナ伯爵令嬢が寄り添うように佇んでいる。そして玉座の反対側には、白い僧服の上に、金糸の刺繍が施されたストールを首にかけている人物がいた。彼はこの国で広く信仰されている、神託教会のベラム枢機卿だ。


 グエンの突然の宣言に、私は身を震わせる。金色の髪と共に、頭の左右に結んだリボンが揺れているのもわかる。三人共、私と親しくしている人達だった。しかし彼らはいま、冷たい視線を私に投げつけている。


「ちょ、ちょっと、グエン。それはどういうこと?」

 私は王太子という敬称を抜きにして声をかけた。私とグエンは婚約者という関係のみならず、子供の頃からよく遊んだ幼馴染だった。そのため砕けた会話も許されている。


「どうもこうもない! お前があんな力を持つ、化け物だったとは知らなかった! 危うく騙されるところだった!」

 グエンの心ない言葉は、私の胸に突き刺さった。


「そんな、私は、ちょっと力が強いだけで……」

 私はグエンの視線に耐えきれず俯き、青と白があしらわれたスカートを両手で掴む。

「ちょっとだと? 大人数人でもびくともしない岩を、軽々と持ち上げておいてか!」

 私の言い訳を、グエンは刃のごとく断じた。


 確かに私は、生まれた時から力が強かった。三歳の時には硬貨を握りつぶし、五歳の時には暴れる牛を持ち上げたこともある。


なぜこんな力があるのかと言われれば、私のお爺様であるラザリックが、百年前の災厄戦争で、魔王ゼーダインを討った英雄であることが関係しているのだろう。亡くなった私の両親は、私の力は祖父から受け継がれたものだろうと話していた。一方でこの力は人々を恐れさせるため、決して人前で使ってはいけないと、私に言い聞かせていた。しかし私はその言いつけを、破ってしまったのだ。


「そっ、そんなこと言わないで。私達は友達じゃない」

「お前はその化け物のような力をずっと隠していた! それなのに友達だと! ふざけるな!」

私を睨むグエンの目は、信じていた者に裏切られた怒りに満ちていた。


「で、でもあれは……人を助けるために……ねぇ、そうでしょサリーナ!」

 私はグエンの傍らに立つサリーナに目を向けた。私と彼女は仲のいい友人だった。そして私が禁を破って力を使ったのも、彼女を助けるためだった。


 あれは十日前のことだ。その日私はグエンと共に、サリーナが主催するお茶会に出席していた。そこに王都を揺るがす、大地震が襲ったのだ。

 激しい揺れにより、サリーナの屋敷が一部倒壊した。私とグエンは中庭にいたため難を逃れたが、サリーナや使用人達は崩れた屋敷に取り残された。


 余震がくれば屋敷が全壊するかもしれず、救助は一刻を争う状況だった。

 人前で自分の力を使ってはいけない。それは重々承知していた。だが瓦礫の向こうから助けを求めるサリーナの声を聴いた瞬間、私は彼女を助けることしか考えられなくなった。そして倒壊した屋敷に飛び込むと、大人でも持ち上げられない柱や崩れた壁を、一人で持ち上げ撤去し、サリーナ達を助けたのだ。


「ねぇ、サリーナ。私は貴方を……」

 私はサリーナへと、一歩前に進み手を伸ばした。するとサリーナの可愛い顔が青ざめ、後ろによろけて尻もちをつく。


「ひぃ! 来ないで!」

 サリーナの喉からは悲鳴が漏れ、震える四肢を動かして、必死に逃れようと藻掻く。怯えた彼女の顔を見て、私は動けなかった。


「サリーナに何をするつもりだ!」

 グエンが膝を付いてサリーナをかばい、怒りのこもった目で睨む。

「別に危害を加えるつもりは……。そうでしょう? ベラムさん」

 私はすがるようにベラム枢機卿を見た。私はグィード王国の国教である、神託教会に認定された聖女だった。彼は私を聖女に認定した一人であり、いつもよくしてもらっている。だが普段柔和な笑顔を絶やさない老人は、冷たい視線を私に投げつける。


「ラエルザさん。貴方は私にも自分の持つ力を秘密にしていました。嘘は神託教会において許されざる罪です。聖女がそのような嘘をついたとあっては示しがつきません」

 ベラム枢機卿は首を横に振り、断罪の瞳を向ける。


「残念ですが、貴方から聖女の資格を剥奪します」

「そんな……」

 私は絶句した。私が聖女になったのは、教会で神託があったからだ。望んで聖女になったわけではないが、多くの人が喜んでくれた。皆の信頼を裏切ってしまったのだと思うと、胸に苦しみが走る。


「もうお前は私の婚約者でも聖女でもない! お前が住んでいる屋敷は、王家が貸し与えていたものだったな。即刻出ていけ! また、王家はこれまでお前達の一族に、莫大な年金を与えていた。それも今日限りで停止する!」

「そんな、屋敷を追い出されて年金も止められたら、生活できない!」

 グエンの言葉は、処刑宣告にも等しかった。お爺様が魔王を討った功績により、私の一族は貴族に列せられた。更に王都に屋敷を与えられ、莫大な年金も支給してくれていた。私達は生活の全てを王家に依存しており、庇護を失っては生きていけない。


「知ったことか! そもそも百年前の先祖の功績を頼りに、何もしてこなかったお前達が悪いのだ! これまで王家が温情で養ってやっていたのだ、感謝するがいい!」

 取り付く島もなく、グエンはもう顔も見ていたくないと背を向ける。


「宮殿から、いや、王都から出ていけ!」

 グエンの言葉を最後に、私は衛兵につまみ出された。



自著のロメリア戦記のアニメアニメになります

2026年10月3日(土)21時~

アニメタイムズ・U-NEXT・Netflixにて国内独占&地上波先行配信!

また2026年10月5日より

TOKYO MX/BS11/サンテレビ/KBS京都/CBCにてⅡクールで放送が開始されます !



皆さん見てください

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― 新着の感想 ―
ようするにロメリア フォン グラハムとは真逆な女子やな
>私達は生活の全てを王家に依存しており、庇護を失っては生きていけない。 良いですね! 助けてもらったのにこの仕打ちかいなんでやねん!ってのもあるんですが、 最近こういうのって主人公側に全く何にも非がな…
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