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第30話 待っていた変化
三月になった。
けれど
アルベール様は、まだ現れない。
手紙の言葉を信じて、リリア様は毎日、窓の外を見つめていらっしゃる。
――遠くからでも、その姿を見逃すまいとするように。
そして、ある朝のことだった。
「アンナ……見て。」
リリア様に呼ばれ、私は窓辺へと駆け寄る。
そこには――、
ヒヤシンスの球根から、小さな芽が顔を出していた。
「リリア様……!」
思わず声が弾む。
「芽が……、芽が出ています!」
「ええ……。」
リリア様がほっとしたように微笑む。
「ようやく、出てくれたわ。」
アルベール様のヒヤシンスが、ついに芽吹いたのだ。
リリア様は、そっと鉢を包みこむ。
「待っていれば……咲くものもあるのね。」
静かに、そう呟いた。
小さな芽に、そっと手を添えるその姿に、
私は――、
これから訪れる春を、信じずにはいられなかった。




