第25話 溢れる想い
「――っ、もう、お腹が痛い……っ! アルベール様、最高……!!」
ミレーヌ様とルシアン様が、お腹を抱えて笑っている。
「私……何か変なことを言ってしまいましたか?」
リリア様は、不思議そうに首を傾げた。
「い、いいのよ、リリア……っ」
「うん……リリア様は、そのままでいるべきだよ……」
二人は、必死に笑いをこらえながら頷き合う。
――リリア様は、アルベール様からいただいた贈り物の話をしただけなのだ。
その時、ふいにルシアン様が表情を引き締め、小さく呟いた。
「……まさか、」
「まさかだけど……球根にかけて、“求婚”ってことはないよな……?」
「……あっ!」
ミレーヌ様が、ぴくりと肩を震わせる。
「アルベール様……その発想は、少々いただけませんわね……」
二人は、顔を寄せ合ってひそひそと囁き合った。
「どうかされましたか?」
リリア様が、不思議そうに問いかける。
「な、なんでもないのよ、リリア!」
ミレーヌ様は慌てて顔を上げた。
「き、気にしないでちょうだい!」
「そ、そうそう! なんでもないんだ……!」
ルシアン様も、慌てて話題を変える。
「ところで、その球根の様子はどうなんだい?」
その瞬間、
リリア様の表情が、ふっと曇った。
「……それが」
小さく、言葉がこぼれる。
「なかなか芽が出ないのです。」
「珍しすぎるお花で、図鑑にも詳しい育て方が載っていなくて……」
「こんな時に、アルベール様がいてくださったら……」
そこで、はっとしたように顔を上げた。
「あ……ごめんなさい、私……」
ぽろり、と。
静かに涙がこぼれた。
「私……、」
「アルベール様に……お会いしたい……」
溢れ出した涙は、もう止まらなかった。
「リリア……」
「リリア様……」
ミレーヌ様は、リリア様をそっと抱きしめる。
こんなふうに涙が溢れるほど、アルベール様は、リリア様にとって大切な存在だったんだ。
――だからこそ、アルベール様が一刻も早く帰ってこられることを願わずにはいられなかった。




