第22話 夜の訪問者 3
「――リリア様」
「今日で一度お別れですが、そう遠くない日に、きっと、私は、ここに戻ってきます。……ですから、」
アルベール様は、言葉を詰まらせた。
――そして顔を上げると、リリア様を真っ直ぐに見つめて、こう言った。
「勝手だとは思いますが、私が戻るまで、待っていていただけませんか?」
「はい、もちろんですわ。アルベール様。」
リリア様は、迷うことなく答えた。
「私、待つのは結構得意ですよ。」
「お母様は地方のお城に滞在していて、ずっと留守番でしたから。」
と、付け加える。
あまりにも真っ直ぐな返事に、今度はアルベール様のほうが目を見開く。
「そうですか……。」
そんなリリア様の様子に、アルベール様は困ったように微笑んだ。
そして、
「……リリア様。」
アルベール様は、その場に膝をついた。
「アルベール様?」
驚くリリア様を前に、
小さなビロードの箱を差し出した。
「私からの餞別です。受け取っていただけませんか?」
「まあ……。」
リリア様は、おそるおそる箱を受け取る。
「開けても、よろしいですか?」
「はい。どうぞ、ご覧ください。」
静かに、蓋を開ける。
その瞬間――
思わず、息をのんだ。
「……!!」
「こんな貴重なものを……いただいても、よろしいのですか?」
「はい。」
アルベール様は、少し照れたように微笑む。
「リリア様だからこそ、受け取っていただきたいのです。」
リリア様は、信じられない思いで、もう一度、箱の中を見つめる。
その中で、静かに輝いていたのは、
――艷やかな薄茶色の
一粒のヒヤシンスの球根だった――




