表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

騎士団

「なんてことだ」

 

 屋敷から連絡を受け、戻ってきたルイソンの父は妻と息子が攫われた話を聞き、ショックを隠せなかった。


「すみません。父上。私が倒せていればよかったのですが」


 ルイソンは元の女性の姿のまま、父に状況を説明する。


「あと三か月で私は強くなる必要があります。父上、ご指導お願いします」

「わかった。おそらく体力を向上させることが一番重要だ。騎士団で基礎体力をまず上げる訓練をする。容赦はしない。悪いけどな」

「わかっています」


 魔王が現れるまでは、剣聖の剣には極力触れたくない。

 鍛錬など絶対にしたくないと思っていたが、母と弟が囚われてしまった以上、そんなことは言ってられなかった。


「父上、騎士団には男として一時入団させてください。常に剣を身に着けるようにします。ただ着替えと水浴びだけは考慮させてください」

「私の甥として紹介しよう。私の部屋で寝起きをするといい」

「ありがとうございます」


 そうして、ルイソンは騎士団に一時的に入団することになった。

 また魔王のことは隠しておけない。

 緊急呼び出しの件もそうであったので、ルイソンであることは隠し、ほとんど本当のことを話し事にした。

 剣聖の力を使える甥と魔王は戦いたがっている。

 三か月で魔王を超える力を身に着けるために、騎士団に入団した。

 人質として、妻と子供二人が囚われたと、ルイソンのことも魔王に攫われた存在として報告をあげた。

 不在の理由が説明しやすいからだ。


 ルイソンの変身した姿は男性体ではあるが、精悍な体つきではない。

 なので、多くの騎士たちが彼女の強さを疑った。

 なので訓練の合間に彼女に戦いを挑んでくるものが多かった。

 剣聖は喜び、ルイソンはいやいやながらも、得る事もあるだろうと相手にした。

 父が歯が立たない強さを最初から持っているため、騎士は誰一人彼女に敵わなかった。

 何名もの騎士が飽きもせず彼女に挑む。

 何度も戦っているうちに、友情も生まれ、騎士との間に仲間意識も生まれる。

 

『やはり騎士団はいいな』


 剣聖は大喜びだったが、ルイソンは戸惑う気持ちが大きい。

 彼女は女性であり、一応貴族子女だ。男くさい世界に投げ込まれ、毎日が戸惑いの連続、うんざりすることも多かった。

 そんな中、彼女は憧れの存在を間近でみることができることがだけが、楽しみだった。

 汗くさい男たちの中にいて、彼だけは異彩に見えた。

 思わず見とれてして、目が合ってしまった時は睨まれてしまった。

 それから、ルイソンは隠れて彼を見るようになったのだが、それでも気づかれているらしく、よく睨まれる。

 他の騎士たちとは謎の連帯感が生まれ、友情を築きつつあったが、彼の距離はまったく縮まらなかった。


「模擬戦を頼む」


 入団して一か月後、初めて彼に話しかけられた。

 鋭い視線でそう請われ、ルイソンは悲しい気持ちになりながら、受けた。

 手加減はできない。

 魔王に勝つために入団したのだ。

 だから全力で戦い、ルイソンは彼に勝利した。

 悔しそうに彼はしていて、胸が痛んだ。


「なんでそんなに強いのに、ルイソン様を魔王から守れなかったんだ」


 彼の漏らした言葉を聞き、ルイソンは驚く。


(私のこと、気にしてくれた?)


『物凄い気にしているな。それが原因じゃないか?』


「母、伯母上や従兄弟たちを守れなかったことを、私も後悔している。だから強くなるためにここにきているんだ」


 ルイソンは勇気を出して、彼にそう言ってみた。


「わかってる。すまなかったな。ルイソン様が魔王の元にいると思うと、いてもたってもいられなかったんだ。馬鹿だよな、俺」

「ヘクター、は、従兄弟たちの面識があったのか?」

「いや、あんまり。だけど、ルイソン様とはよくお会いした。可愛らしい方だった。えっと、変な意味ではないからな」

「わかってるって」


 ルイソンは自分の表情が緩まないように必死だった。

 一方的な思いだとずっと思っていたが、ヘクターは何かしら自分に感情を抱いている。その事実は彼女をとても有頂天にさせた。


「ラウル?」

「え、いや」


 怪訝そうな顔で名を呼ばれ、ルイソンは慌てて明後日の方向をみた。

 ちなみにラウルはルイソンのここでの偽名だ。


「私はあと二か月で魔王より強くなる。安心しろ」

「ああ、よろしく頼むな」


 手を差し出され、ルイソンはドキドキしながら、その手を握り返した。


 そうして、二か月間、ルイソンは自分の限界に挑戦した。

 剣にずっと触れているわけにもいかないので、部屋に戻ると剣を手放し、ルイソンは自分本来の姿に戻った。その時、お腹周りや腕に筋肉が付き始めていることに気が付いたが、ルイソンは気づかない振りをした。

 魔王を倒したら、また女性らしくなるように努めようと心に決める。

 一度本音を話されてから、ヘクターとの関係はよくなった。

 訓練にもよく付き合ってくれるようになった。

 やはりかっこいいなあと思いながらも、ルイソンは道を外さないように鍛錬に集中した。

 そうして、その日がやってきた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
修行パートでありながら、単なる戦闘力アップだけでなく、ルイソンが騎士団の中で居場所を得ていく感じがいいですね そして、正体を隠しているからこそのヘクターの本音! 良かったです〜
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ