リュックを見つけ、新たなる地へ
魔王。
魔物の中では下っ端かもしれないエビルウロスに苦戦した今の俺がどうにかできるような相手じゃない。
だが俺はこの人生の間、長い冒険をする。これからずっと強くなるつもりだ。その間の最終目標としては丁度いいだろう。冒険って感じでワクワクするしな……!
「今から俺の旅の目標は、魔王を倒すこと……!」
ようやく明確な目標が決まり、心の炎が目に燃える。
「フフフ、こちらとしては有り難い限りです……ところでワロタさん、次の行き先はもう決めておられるのですか?」
そう言えばそうだ、ここを出て次はどこに行こうか考えてもいなかった。
「あー、そうだな……それ以前に正直ここがどこだかもわかってねえんだよな」
適当に冒険してるから今俺が立っている地名も全くと言っていいほど分からない。
「ふむ……そうですね、まず説明いたしましょう。ここは私が治める町、リウーナルです」
「あ、この町の名前リウーナルって言うのか」
そういえば町の名前が書いてある看板があったような無かったような……まあ忙しくて見る暇もなかったからな。
「はい、そしてここリウーナルの北にずっと進んで行くと、この国の現在の王都に到着します」
「ほえ〜なるほどな、割と近くに都市があんのか」
どうせ行き先も決まっていないし、行ってみる価値は大いにありそうだ。
「うっし、決めた!言われた通りに王都へ行ってみようと思う」
「いつ出発されるのですか?」
「当然、今からよ!」
まだ昼前だし、出発するには丁度良い時間だ。次の目的地が決まったのだからこのタイミングで出発すべきだろう。
「そうですか……もう行ってしまわれるのですね。では、リュックはあちらに置いておきましたので、いつでもご出発なさってください」
「ああ!ありが──」
───は?
リュック。ちょっと前に俺が血眼で探していたリュック。
あろうことか無くしたショックで一瞬だが町の人を疑ってしまうレベルの影響を持ったリュック。
そのリュックが、普通にここにあった。
「俺の焦りは何だったんだぁぁぁぁ!!」
「ふむ?東にある倒壊した家に置いてあったのですが、ハンロスさんが言うにはあなた様の物だと……」
「あっ、そうか…………おっさんか……」
よかった、盗まれたとかそういう状態じゃなくて本当によかった……!
「いやありがとう。助かった」
「いえいえ……では、ご出発なされるのですね」
「ああ、正直今すぐにでも魔王をぶっ倒したいからな。まだそんな実力ねえけど」
長い旅にするつもりだ。これからどんどん強くなればいい。
それに自分一人じゃ心もとないから仲間もどこかで作りたい。
「あなたなら、きっと倒せます」
「ありがとう。じゃあ、そろそろ行ってくるよ、北だったっけ?」
「はい。向こうまでずっと歩いて行けば到着します」
王都。そこで俺は装備をちゃんと整えたい。持ち武器とかあった方が冒険っぽくない?というか武器も無しに冒険始めて死にかけた俺がバカなんだけども。
あわよくば同志とか見つけて仲間にでもしたい。
そんなことを思いながらリュックを背負って外に出ると、見覚えのある顔がすぐそこにいた。
「──お!昨日の少年……ワロタじゃんか、昨日は助かったよ」
「えーと、おっさん……じゃなくて……ハンロス!いやいや、アンタのおかげでなんとか死なずに倒せたんだ」
実際にあの時ハンロスに突き飛ばされていなければ、俺が致命傷を負っていただろう。こちらとしても命の恩人な訳だ。
「ところでアンタ、王都に行くんだって?なら、みんな町の外まで送り出したいって言ってたからさ、ちょっと待っててくれよ!」
なんだなんだ?大勢で俺を送り出すって?やっぱりヒーロー気取りになっちまうよ。
数分待つとハンロスに呼ばれ、町を出発する俺を町民全員で送り出してくれた。
「よし、ほんじゃあな、アンタが華麗に魔物を倒した光景、一生忘れんよ。」
「んな大袈裟な!ハンロスも、俺を庇った名誉の傷、大事にな。」
笑い合いながら俺は背を向き、町の外へと歩く。
「ありがとー!」
「アンタと一緒に戦えてよかったよ!!」
「また寄ってくれよなー!」
町から聞こえる感謝の声。俺は心から思った。
「最初に寄った場所がここでよかったな」
俺は王都へと歩きながら、リウーナルへ向けて腕を掲げた。
◆
数時間後。
俺は未だ歩く。
「確かにずっと歩くって言ってたけどさあ……何時間歩けばいいんこれ……」
腹も減った。缶詰はリュックの中にあるが、どうせ王都に行くんだから昼飯は王都で食べたい。
でも本当にこんな原っぱに王都なんてあるのか?長閑なだけだぞ今のところ。場所間違えてたりしないよな……
……ダメだ、ネガティブ思考に陥り始めてる!こんなときは王都に行ったらどんなことするか想像でもしよう。
まずはご飯。王都なだけあってそれはもう多分クレープとかあるんだろうな……昼飯にクレープはどうかと思うけども。
じゃあステーキとか?いや場所が場所だしそういう良い肉系はちょっと厳しいか?まあとりあえず美味いモンは絶対あるだろうな〜……ああ腹減った……
次は装備。剣やナイフ、あわよくば鎧!……鎧はちょっと冒険者向きじゃないか。重いし多分走れなくなると思う。
じゃあ盾だな。……でもエビルウロスの時アレしっかり受け止めてたら腕折れてたよな……まあ盾も万能ってわけじゃないし、一応持つだけ持っておくか。
建物の雰囲気も気になってんだよな〜。多分中世チックなんだろうけど、いや〜俺そういうの好きだから楽しみだな。
あとは……そうだ。他の冒険者とかいたりしねえかな。さすがにずっと一人じゃ物理的にも精神的にも厳しいだろ……
とりあえず一人くらいは見つけたい。
王都って言うほどだし、どデカい城とかも中にあるんだろうな……許可取れたら入ろうかな。
「あ〜〜やっぱ冒険ってワクワクすんな!!」
想像すればするほどワクワクが止まらない。それも冒険の醍醐味だ。
「でもいつになればその肝心の王都には着けるんでしょうか!?あ!?」
だいぶ同じ光景が続くのは結構苦しいんだぞ。虫や草の数しか変わらん。
「んな〜そろそろ疲れたっての……もう一旦休憩するか……あ?崖?」
前をよく見ると、地面が存在しない。
「……まさか?まさかのもしかすると?」
俺は期待を込めて崖の下を覗く。
その先にあったのは───
「───よっしゃあああああああ!!」
円形の壁に覆われている巨大な街……そう。言わずもがな、王都があった。




