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ラフサーガ  作者: 笑太郎
二章 想像せよ、彼女の操る野望は其処へ
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清純たる少女、魔を偽るか人を偽るか

じゃあなボスミイラ、お前は紅等級足りうる敵だったぜ。それに斬った腕六本全部残して消えてったから予想通り腕は破壊可能部位だったってワケだ。でもデカいし流石に全部持って帰るのは無理か?


「僕、持ツヨ!」


「いやいやクマーク、ただでさえ動力炉を担いでんだから無理すんなよ」


俺の言葉に構わず、クマークは六本の腕を全て担ぎだした。


「ヨイショ……アッ、思ッテタヨリ軽イヨ!」


なんたる怪力。

よし、これで動力炉も魔物の素材も手に入れた。それにハスナの両親の弔いもできたし、想定外だったがクマークも救出した。もう完璧じゃねェか!

後はもうボントールに帰るだけだな。多分道中でクィントアーム・マミィとかに遭遇するだろうが、ゼクスアームを倒した俺らにとっては敵じゃない。


「お目当てのものは見つけたし、適当に探索して帰るか!」


「私お腹すいたんだよね〜」


「僕モ!」


……そりゃクマークの空腹はレベルが違うな。













時間は遡り、ハスナ率いる一行が古代神殿デソロピアの地下へ到達する前に起きた出来事になる。


「うう、いくら捜しても見つかりませんよ〜……」


菫色の長髪にちょこんと前に垂れたアホ毛、琥珀色の眼を持つ少女が神殿地下の洞窟をトボトボ歩く。その少女は何やら人探しをしているようで。


「だいぶ前から大きな黄色い熊の姿をした獣人さんがここに閉じ込められてるなんて……本当だとしたら、もう亡くなられてるんじゃ……」


人間、飲まず食わずでは一週間も生きられない。ここは洞窟なのでどこかしらに水が湧いている可能性はあるが、それでも食料と呼べる物はない。なので運良く生きられても三週間と言ったところか。

しかし、まだ可能性は大いにある。と言うのも探しているのはただの人間ではなく、獣人なのだ。体格的にも獣人はただの人間よりも生命力が高い。それならば、飲まず食わずでもただの人間より生き延びられる期間が長いのではないか。


「熊さんの姿をしているんだったら、冬眠をしている可能性もありますし、もっと奥まで行ってみますかぁ……? ううっ、でも……」


知っている限りでは、神殿地下の最奥地には魔物がいる。それも少女の力では手も足も出ないほどの強力な魔物が。


「それでも、人命が最優先ですよねっ……頑張れ、わたし……!」


自分に喝を入れ、緊張で震える身体を抑えながら前へ進む。


「………………えっ、今」


足を踏み出した途端、声が聞こえた。

もしかしたら行方不明の獣人の声かもしれないと少女は足を止め、耳を澄ます。


「あ~あ、お宝があるって聞いたのに今のところ何もないじゃん」


「それに分かれ道ばっかだし……」


「一応奥まで行ってみようよ、こういうのって一番最後にボスがいて……」


違う、ただの冒険者だ。しかしここ数年は一部のボントールの民以外、神殿内部への出入りは無いはずであった。


(どうしてこんなところに冒険者が……!)


冒険者が近づいてくる、見られたらマズい。何故マズいか?


人見知りだからだ。


「いっ、今のわたし何も持ってないのに……!」


少女は普段、あらゆる場所で放浪商人をしている。商人をしているその間だけは自分を偽ることができ、人と話すのも難しくないのだが。

今は素の自分なのだ。


「こっ、この姿で喋って、もし何かで()()()()()()らどうしよう……!」


心臓の鼓動が激しくなる。その後のことを考えるだけで冷や汗が流れる。

少女は思考をフル回転させた。


「──そっか」


焦燥で上手くまとまらない脳内に、一筋の閃光が走る。


──どうせだったら最初からそうして、追い返そう。


少女は実行に移すために、呼吸を整える。


「…………魔力開放」


身体から紫色のオーラが燃え上がる。

そのオーラは徐々に形を整え、ある物を作り上げる。


「まるで迷路だよなーここって」


「そうだね──って、え、あれ……何?」


冒険者の視線の先には──


「う、うわああああ!!」


「あ、悪霊……っ!?」


──紫色の光を放つ、複数の霊が蠢いていた。


『……エレ』


「ひっ、へっ?」


『カエレェェエエエェ!!』


「「「ギャアアアアアアアア!!」」」


悪霊の怨念を感じるような怒号に恐怖を覚え、一人は漏らしながら、一人は気絶しながら、神殿の入口へと走り去って行った。


「見掛け倒しが、こんなところで役に立つとは思いませんでした……」


少女の魔力で作り上げた悪霊を模した物は、上手く冒険者を退けることに成功したようだ。


「うう……もうこんなことしなくて済むように、早く勇者様が来てくれるといいですね────」


少女の願いは如何なる物か。


「────()()()











「ボントールに帰ってきたぞーーーー!!」


道中また罠に引っかかったり魔物に遭遇したり、色々あったけどなんとか昼過ぎには帰ってこれたぜ……ちなみにクマークは色々な理由があって先にハスナと共に居住区の病院へ向かった。そりゃ半年も閉じ込められてたんだし普通に考えりゃ一旦病院送りだよな。


しっかし、明日まで暇になったな……この余った時間何しよう。まあ昼ご飯はすぐ食べるとして、一旦ルターロ村に戻ってみるか? 捕食竜の続報があるかもしれないし。

つっても行くのに結構時間掛かるんだよな……行くのに時間が掛からなくて時間を潰せる場所か。


訓練場があるやん……!!


「ってな訳でヒルド、俺達を特訓してくれよ!」


「俺もそうしてあげたいところだがッ、明日の会議の資料をまとめるのに時間を割かなくてはならないんだッッ……」


明後日が防衛戦だもんな、明日は防衛戦とタリオーラ討伐までの流れを決める作戦会議だろうし、こりゃ相当大変だな。


「だが訓練場は空いているから、そこでキミ達三人で手合わせしてみてはどうだッ!?」


「俺ら三人で……」


「手合わせ……?」


そうか、考えてみれば俺達は一度も手合わせをしたことがない。というよりもする必要が今までなかった。

言われてみればそうだな……何と言うか、他人に言われちゃったら気になってきちゃうのが人間だよなァ……!!


「良いタイミングじゃねェか、ハッキリさせとこうぜ……今このパーティーで、誰が一番強いか!!」




この時点で訓練場にて俺の悲鳴が響き渡ることになるのはうっすらと勘づいていた。

初登場のキャラが主人公視点じゃなくてそのキャラ視点である場合は重要キャラっていう法則、あると思います

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