少女との共闘、冒険は更に深く
巨大蜘蛛魔物……魔蜘蛛の上に立ち、黒髪に耳辺りから掛かる赤いメッシュを靡かせるその少女。一撃を魔蜘蛛にブチ込み、怒り狂った魔蜘蛛は暴れ出す。
「ちょっ……どぉわぁぁっ──!」
振動と衝撃により、その少女は吹き飛ばされる──俺の方に。
「いや待て待て待てェ!!このままじゃぶつか──」
「ぐあっ」
「ぶがっ」
俺と少女は激突し、そのまま後ろの建物までブッ飛んだ。
「ううっ、いてて……あっ! ご、ごめ……!」
「ぶはっ………大丈夫だ! アンタは立てるか?」
まさかピンポイントで吹っ飛んでくるとはな………少女と壁に挟まれて窒息死するトコだったぜ。
「大丈夫かワロタ!」
「大丈夫だぜクチク、出血も骨折もしてねえしな! それより……」
怒り狂った魔蜘蛛が徐々に迫ってきている。
「あの蜘蛛野郎を潰さねえとな」
「そうだね……名前も知らない同士だけど、協力して倒そう!」
「無論だ!」
ワロタ、クチク、そしてそこに加わった少女と共に、魔蜘蛛との決戦が始まった。
「今度こそその多脚をぶった斬ってやるよ!」
一足先に飛び出した俺は腰にしまっていた短剣を取り出し、発射される蜘蛛糸を回避しながら魔蜘蛛の脚に斬り込みを入れる。
「そりゃァッ!」
脚を一本、二本と削り、左側の脚は全部斬り終える。
「フンッ!」
剣を構えたクチクもすぐさまもう片方の脚を斬り、全ての脚を失った魔蜘蛛はその場で苦しみながら藻掻く。
「ハッ、悪魔みてぇな顔しやがってよ」
顔面蒼白でシワだらけの老人のような顔の上、怒り狂っているともなると酷いったらありゃしない。まるでこの世のモンじゃないみたいだ。
と、そこに少女が飛び出す。
「最後は私が!〝チャージストライク〟!!」
──少女が放った、恐らく溜めた闘気を拳に含ませた強烈なパンチで、魔蜘蛛は遠くまで飛んで行き、空中で塵となり消えた。
「……ふぅ」
街中に歓声が響く。
少女はなかなか強い。今の一撃でそう確信できた。
「ハハ、アンタ強えな!まさか闘気まで使えるなんてな」
今のところ闘気を使える人間はネルファとミハエール王くらいしか見たことが無いが、それでも彼女からはかなりの才能が感じられる。
「へっへっへ、まあね」
「一緒に戦ってくれてありがとな!俺ァワロタ、冒険者だ」
「俺はクチク。俺も冒険者だ」
「私はサキ。同じだね、私も冒険者なんだ! ……ところでぇ〜、歳も近いだろうしさ」
名をサキという少女はいきなり俺に拳を突き出してきた。え? タイマンのお誘い……?
「私と手を組まない?」
◆
そんなこんなで挨拶を終え軽く会話しながら冒険者ギルドへと戻り、待ち合わせ用にでも置いてあるのであろう椅子とテーブルがある席に着いた。先ほどのサキの発言、それは単純、今まで一人で冒険をしていたが故に二人で旅をしていた俺達のことが少し羨ましく……というか気になったらしい。だから俺達を誘い出したという訳だ。
「……そんでさ、俺たちこっからどうしようかな〜って悩んでたワケよ」
あの後俺は冒険の理由、目標(主に魔王や悪樹)について話した。どうやらサキも最終的には魔王を倒しに行くつもりではあるらしく、目的が一致していたのだ。
「まぁ良い依頼は早い内に他の冒険者に取られちゃうからねー……」
俺は最初級の木等級だ。プライド的に言いたくないが、目に見える情報で言っちゃえばガチの初心者、クソ雑魚ってことである。こんなんじゃあの「悪樹」の依頼を受けようったって門前払いだ。
「ちなみに私、銅等級なんだけど……あと一体強めの魔物倒したら紅等級になれる訳で……」
「ほえー、マジか」
しかしそれが何だと言うのか……まさかいるかも分からないしとっくに他の冒険者に倒されているかもしれない強い魔物を探しに行って倒そう! ……とか言うのか? とか思っていると、サキの口からちょっと意外というか早とちりな言葉が飛び出した。
「そのレベルの私と、プラス二人で行ったら……許可取れるんじゃないかな?」
「あー、まあ確かに可能性は無くはないわな」
単純な回答だったがそういえばアレは推奨等級だった。別に紅じゃなくても銅三人分……俺は木だけど、戦力的には銅+レベルだとして……これなら行けるんじゃ?
「ちなみにいつ悪樹とやり合うつもりだったの?」
「うーん、依頼受けてすぐ行くつもりだったからな」
「ああ、直行だ」
待つ理由も無いどころか早く倒しに行きたいんだ。すぐ受けてすぐ行く!
倒せるかどうかの保証は無いが。
「へへっ、じゃあもう受けちゃおう!」
「おいおいマジかよ、そんなスムーズにいくもんなのかな」
……
…………
………………
「う〜ん、メーラスウッドに対して……銅が二人、木が一人……ですか」
「だ・か・ら! エビルウロス倒したことあるっての! しかも丁度さっき巨大蜘蛛倒したばっかなんだけど!? 共同ではあったけどさあ!?」
早速受付に行って悪樹討伐依頼を受けようとしているのだが、やっぱり「木」という重荷を背負った俺がちょっとよろしくないみたいだ。
「私はあと一体紅制レベルの魔物倒したら紅等級に上がるの! だからお願い!」
「俺は実質銅等級! だからお願い! ほら、なんならこんな感じで俺の木刀捌きとか──」
様々な言葉で交渉をし……
「仕方ないですね……承認します。……危ないと思ったら、必ず帰ってきてくださいね」
「はーい、ありがとー!」
何とか依頼を受けることができ、早速悪樹の元へと向かう。
「ふぅ……そんなスムーズには行かなかったね」
「主に俺が原因だわな」
「まあ、依頼は受けたからもうそんな事はどうでもいいだろう」
「だな、悪樹倒してサクッとランクアップしてやるぜ!」
ところで……サキが何やら俺のほうをガン見しているが。
「何だよ」
「いや……さっきから思ってたんだけどさ、その黒い木刀って何?」
あー、なるほど。ケースで多少見えづらいとはいえ傍からみりゃ謎だわな。
「ああ、これはちょっと話すと長くなるから簡潔に言うと、王都の変な台座から引っこ抜いてきたヤツであり、今では俺の相棒さ!」
抜いちゃったからには……ね、責任もって俺が持っておかないとってワケよ、正直かなり気に入っちゃったし。
「あれ……王都? ってことは、それって噂の勇者の剣ってヤツじゃん!」
「あー、確かネルファがそんなこと言ってたな、実際はただの黒い木刀なんだけどな」
とはいえ、紅制エビルウロスとの戦いでは満身創痍でコイツを振るった時にだけ異常な程の闘気を持った。もしかするとだが、ただの木刀じゃない可能性は僅かにある。
ってか俺以外の誰にも抜けないってのに本当にただの木刀だったらロマン0で辛いだろ!!……それもあって、俺はこの相棒がいつか化けるのではないかと睨んでいる。ほぼ願望だけど。
「なるほどね、まあただの木刀だとしても、似合ってるし面白いからいいんじゃない?」
「……へへっ、そうだな!」
その後更に歩き続け、悪樹の巣食う森へと俺達一行は進むのだった。




