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大人の話

「眠ったわね。ふふ、可愛い寝顔」


「大丈夫なんだろうな?」


「ええ、問題ないわ」


チビが横になるなり眠ったことに少し不安になるが、アルベルトが大丈夫だと言うならそうなんだろう。

後ろ髪を引かれつつ少し離れたテーブルにつく。


「で、もう一度最初から聞かせてほしいんだけど」


「ああ。見回り中に魔獣の交戦跡と、子供の足跡を見つけてな。何か見つからねえかと思って捜索したらチビを見つけた。不思議なことに、恰好の獲物だってのにチビを狙う魔獣の気配もなかった。それで水を飲ませてから名前を聞いたんだが、分からないときた。名前だけじゃない、ここが何処なのか、何故ここにいるのかも分からないってな。だから連れてきた」


「あの森で魔獣に襲われずにいたなんて信じられないわね。ねぇ、あの子の他には誰もいなかったの?」


「ああ。チビひとりだった」


「なんてことなの…そんな状況なら精神的ショックは計り知れないわ。記憶どころか正気を失っても不思議じゃないわよ」


「ああ。この森に置き去りにするなんざ、悪意しか感じられん。それにあの痩せた体だ、良い所にいたとは到底思えねえ。だから俺があいつの面倒を見る」


そう宣言するとアルベルトは信じられないと言うような顔をした。


「ちょっと、面倒見るって本気…って冗談言う男じゃないわよねアンタは」


「当然だ。ひとまずここに置いてやるのにお前の診断書が欲しい。俺の報告書と合わせて出す」


「分かったわ。でも所長ならあの子を保護するのを反対するとは思えないけど」


「まぁな。だがそれとこれとは別だ」


「それもそうね。ねぇ、そういえばこの事、他の隊員は知ってるの?」


「ああ。見回りで一緒だった奴と、うちの副、それと副所長、今のところはこの3人だ。…そういや、周辺の見回りするように指示して放ったままだな」


リンクスに見回りを指示したことをすっかり忘れていた。


「アンタね、それ先に言いなさいよ!確実に騒ぎになってるわよ!副所長への口頭報告だけならすぐ済むでしょ。今すぐ行ってきなさい!」


確かにアルベルトの言うとおりなんだが、今はチビから離れたくない。

渋っているとばっさり切り捨てられた。


「正式に提出する書類も書かなきゃいけないでしょ。ここ使わせてあげるからさっさと行ってきなさい」


患者以外は容赦なく蹴り出す男が、医務室で無関係の作業をすることを許すなんて普段ならあり得ない。

礼を言おうとすると実に良い笑顔を向けられた。


「報告書と、壊した扉と壁の始末書と修繕依頼書も書いていきなさいね。勿論後片付けもしてもらうわよ」


その後ろに漂う黒い気配に是と応えて医務室を出る。

一刻も早く報告と後片付けをしなければ、俺が医務室のベッドに放り込まれるはめになるかもしれん。

そう思いながら副所長室へと急いだ。

本日も大人視点でお送りしました。パワーバランスはおねえさまがやや有利です。っょぃ。 今日も来て下さる皆様に感謝します。少しでも楽しんでいただけますように。

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