大人の話2
「警備部隊隊長ジンです」
「どうぞ」
「失礼します」
目の前の扉をノックするとすぐに入室の許可が出る。
入ってすぐに並ぶ焦げ茶色の革張りのソファとセンターテーブル。その向こうには執務机があり、ランプといくつかの書類が乗っている。
後ろには床から天井まで高さのある棚があり隙間なく本が並んでいる。
執務机の左手の大きな窓には品のいい金色のカーテンがかかっている。
室内にあるものはどれもが重厚である。そしてその部屋の主こそ、ナリウノース国立薬学研究所の副所長のオリバーである。
年の頃は50代、平均よりやや背が高く、オールバックにした灰色の髪と灰紫の瞳でインテリ然とした雰囲気の紳士だ。一見穏やかに見えるが中身はそうではないことは周知の事実である。
「ふむ、早かったですね。では報告を」
入るなり向けられた嫌味と笑顔にため息を飲み込む。
「外警任務中に子供のものと思われる足跡を発見し、侵入者の可能性を考えて捜索を行いました」
「ええ。そこまでは貴方の所の隊員から聞いてます」
「捜索の結果子供を発見、保護することが出来ました。今は医務室で休ませているところです。医療部隊隊長アルベルトによると命に別状はないとのことです」
「ふむ、それは良かった。それで、肝心の子供から何か話は聞けましたか?」
「いえ、本人には記憶がないようです。自分の名前も森にいた経緯も分からないと言っていました。ですので今のところは何も。それと、個人的な所感ではありますが以前より虐待を受けていた可能性が高いと思われます」
「ふむ、記憶喪失に虐待疑惑ですか。穏やかじゃありませんね。ふむ。所長もまだ戻ってきませんし、ひとまずは子供の回復を待ちましょうか」
ひとまずとはいえチビの滞在が許可されたことに安心する。
早くチビの所へ戻りたいと内心ソワソワしていると、それを見透かされたのだろう、副所長にため息をつかれた。が、その口元には笑みが浮かんでる。
クソ、面白がってやがる。こういうとこが苦手なんだよこのオッサン。
「ふむ。もう戻ってかまいませんよ。警備部隊の方には私から連絡しますから、貴方は子供についていてあげなさい。但し報告書は明日中に提出すること」
「了解しました。失礼します」
頭を下げて副所長室を出ると、医務室へ戻る。
心配なのも確かだが、今はあのチビに癒されたい。
◇◇◇
「ふむ。あの男がずいぶんと愉快なことになってますね。これからどうなる事やら。報告書が楽しみです」
ジンを見送った部屋の主は面白そうに笑うと席を立つ。
「ふむ。隊員達はどんな顔をするでしょうね」
呟きながら警備部隊の詰所へと向かうその顔は非常に楽しそうだった。
ちょっとだけイイ性格のおじ様です。気に入っていただけるでしょうか。皆様、今日もありがとうございます。




