スイーツかくめい☆すくいのかみのアップルパイ
パイには2種類ある。
1つは薄くパリパリの生地が幾重も重なった折りパイ。
もう1つは練りパイ。こちらは生地を作る時にバターも一緒に混ぜる。
どちらかというとクラッカーのようなサックリとした食感に仕上がる。
折りパイよりも練りパイの方が比較的早く作ることが出来る。
夕食時の厨房だというのに、他の料理人さん達は快くスペースを貸してくれている。もれなく全員顔色が悪い。
食堂の方も、静まりかえっている。そしてこちらも顔色の悪い人多数。
一刻も早く荒ぶる神に供物を捧げねば…!
◇◇◇
練りパイは小麦粉とバター、少量の水で作る。
水とバターは冷蔵庫でしっかりと冷やしておくのがポイント。
冷蔵庫から出したばかりの冷たいバターを小さく切ってボウルに入れ、粉を加える。
バターと粉を捏ねないように注意しながら混ぜる。
サラサラにまとまってきたら、冷やした水を注いで、木べらで全体を混ぜる。
ここでも練らないように気をつける。
この段階では完全に混ざらなくてもオーケー。
打ち粉をした台に生地を伸ばして、三つ折りにする。
そしたら一度キュウちゃんに預けて冷やす!
冷えたら、もう一度伸ばして、三つ折りしてキュウちゃんに預けて、を何度か繰り返す。
こうするとで、生地がだんだんなめらかにまとまってくる。
本当なら、ここで一晩冷やすんだけど、そんな事言おうものなら…食堂が本物の地獄と化すかもしれない。
キュウちゃん!惨劇を防げるかどうかは君の腕にかかっている!頑張って!
イワンさんが必死にパイ生地を作ってる横ではこちらも青い顔のクリスさんがりんごを煮ている。
お鍋にバターを溶かし砂糖とりんごを投入。
水分が出てきたらレモン汁を加えて更に煮る。
りんごがしんなりしてきたら、バットに移してあら熱をとる。
ここでもキュウちゃんが大活躍!ひゅー!カッコいいー!
パイ生地が十分冷えたら、伸ばしてパイ皿にのせる。
その上にりんごフィリングをこれでもか!とのせる。
多ければ多いほど荒神様のご機嫌がよろしくなるはず!きっと!たぶん!お願い!
余裕があればトップのパイ生地をかご編みみたいに可愛くするけど、今回はパス!1秒でも早く仕上げるのだ!
パイ生地が浮かないように縁をしっかりと押さえ、仕上げに水で溶いた卵黄を塗る。
ここまできたらあとは焼くだけ!
◇◇◇
「できまちた!アップルパイ!」
切る時間も惜しい!
荒神様の待つテーブルへ出来立てほかほかのアップルパイを丸ごと持っていく。
「こちら、あまくにたりんごをパイきじでつつんでやきまちたアップルパイでごじゃいましゅ」
僕が説明する横ではイワンさんがアップルパイをカットしてお皿に盛り付けている。
おお、急いでいても美しい盛付け。さすがイワンさん。
「「いただきます」」
険しい顔でアップルパイを口に運ぶジンさんとアルベルトさんを皆固唾を飲んで見守る。
「美味い!」
「美味しい!」
おおおおお!!
2人の「美味しい」と同時にあちこちから雄叫びが上がった。
食堂と厨房が謎の一体感に包まれる。僕とイワンさん、クリスさんも手を叩き合う。
やったー!やりましたよ!無事に荒神様を鎮めることが出来ました!よかった!本っ当によかった!
「さっくりとしたパイの中から出てくるりんごの芳醇な香り!とろけるような甘さと、じゅんわりと柔らかいりんごの食感!最高だわ!」
「美味い!美味すぎる!」
大絶賛する2人の姿に体の力が抜けた。
やれやれ、これにて本当に一件落着だわ。
今日は体力的にも精神的にもハード過ぎる1日だった。
気をきかせて他の料理人さんが作ってくれたサンドイッチを食べたら、そのままぱったり寝落ちてしまった。
そして翌日、タルトタタンと折りパイ生地のアップルパイも作ることになったのは、言うまでもないよね。
よかったよかった。一件落着。
アップルパイに限らず、フィリングはどっちゃりのってるのが良き。
シナモンはあってもなくても。どちらも美味しいですからね。皆違って皆良い。
今日も読んでいただきありがとうございます




