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ダンジョンマスターと生贄の少女  作者: 緑 素直


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幕間のダンジョンマスター3

 じりじりと焼けていく肉。

 閃く、タツキが褒章でわんさと出したフォークとナイフ。

「ちょ、それ、俺が育ててた肉っ!?」

「はっはっは、働かずして食う肉はうまいっ!!」

「ここは儂の領土だからな。おぬしらは入ってきてはいかんぞ。入国を許すのは心臓ハツのみだ」

「おーい、トーマス、それ、生焼け」


 今…、2次会だよな。なんでこいつらこんなに飢えてんだ?

「辺境に住まうもの、食える時に食い溜めするのが基本である!!」

 いや、そんなふんぞり返られても。

 てか、この中で辺境住まい、あなただけなのですか?


 そんな混沌とした野郎2次会である。焼いては喰らい、喰らっては酒で流し込む。飲むとあまり食わなくなるタイプであるタツキにとっては、異次元な人種たちである。

 パリパリと、サツキ産のどデカい干しエビをちびちびとかじりながら、これまたちびちび酒を飲むタツキ。


「はいはいはいっ! 成長期のタツキ殿はたくさん食べねばなりませんぞっ!」

 その前に置かれた皿に、どんどん肉が積みあがる。

 うかうかしていると欠食中年どもに搔っ攫われてしまうので、大半が生焼けなのがトーマスクォリティーだ。


「いや、俺は…」

 おっさんなんだが、と言いかけて、今生は外見年齢15~6歳くらいであったことを思い出す。

「ううむ」

 比較的火の通っているのを選び出し、一口食べるとあふれんばかりの野生のうま味がだくだくと滲み出てくる。滲みまくりすぎて、前世だったらきっと1枚でもういいやってなってたなぁ、とか思いながらも、確かにこの体、とてもおいしく頂ける。いや、美味い。もう1枚いっとくか?


「これが若さか…」

 どこかで聞いたセリフをつぶやきながらもぐもぐやっていたところ、

「ところで婿殿!」

「へぁ!?」

よくわからん、もとい、わかっては危うそうな呼ばれ方をしたので、弾かれたように発生源である、いきなり滂沱の涙を流し始めたゲオルグを見る。


「おやっさん、領主様って泣き上戸だったんすか?」

「ふぐぐっ」

 唖然とするロベルトが、ギースに問いかけると、なぜかギースまでが落涙状態。

「分かる、分るぞ。俺もルイーゼの奴が嫁に行くことを考えると、ふぐぐっ!」

「いや、その辺はあまり心配しなくていいんじゃないかと…」

「なにおぅ、それはそれで腹が立つ!」

「どっちだよっ!?」

 思わずロベルトが突っ込むと、ゲオルグがギースの肩に手を置いて、

「ギース殿もな、男手一つで娘を育てあげられた。俺の盟友なのだ」

と、感慨深く頷く。


「さいですか…」

 エールとともにロベルトが、その一言を軽く流しかけると、

「そして俺は――」


何やら領主様がタメを作り始め、かように吠えたのだ。

「――俺は、我が娘をタツキ殿に託す決心をしたっ!!」


 うわ、声でけぇっ!? 内容やべぇっ!!


 その親バカ酔っ払いのデカい声は、当然あたりに響き渡り、女子会会場がギャーってなって、周辺会場がおーってなって、一拍ののちに、割れんばかりの拍手が周囲に満ち満ちた。


「ワナジーマの民たちよっ」

「うわ、また演説が始まったぞ」

「いいぞ、やれやれ~!!」


 すっくと立ちあがるゲオルグ。

 ジョッキとともにこぶしを握り締め、それを掲げて大音声を発する。


「さして遠くない未来、俺の統治が終わった暁には、わが娘カミューと、その隣にイイモノのダンジョンマスター、タツキ殿が並び立つこととなるだろう! 次代のワナジーマに栄光あれっ!!」

「「「栄光あれーっ!!」」」


 そしてタツキは、

「俺の本拠地ってダンジョン・タウンなんだけど…?」

 さして遠くない未来に、名実ともに大拡張されることになったらしい己の領土に、目を白黒させるのであった。


***


 ゲオルグとギース、男親コンビも酔いつぶれ、捌いた分の肉類も、あらかた消費された頃。

 つまり、チェリが完全体になって、タツキの膝でうとうとし、右でカミューもタツキの肩に寄りかかって撃沈、そして背中にはサツキが眠る宴の終わり。


「あらぁ、もてもてね」

 そろそろ私たちもお暇するわ。と、カオルコとカータヴェルがやってきた。


「私たちは同盟機能で繋がったからぁ、何かあったら遠慮なく頼ってねぇ」

「遊びに来る際は必ずハツを持ってくるのだぞ、万魔殿パンデモニウム

「えぇ? カータヴェル様、ずるい。私にはタンをお願いねぇ」

 何なんだろうこのモツ系カップルは。

「あー、その時は牛1頭とギースさんをつれてきます」

 よく分からないので、とりあえずダンジョンマスター間の社交辞令なのだろうと想像して答えておく。タツキ1人ではお肉に解体することができないので、道連れも指名しておこう。


「それでねぇ」

 ふいに周囲の温度が下がり、カオルコがまじめな顔をする。


「前にも言ったけどぉ、スタンピードには気をつけるのよ」

 それはたしか、最初の去り際にもカオルコがつぶやいていた言葉だ。


「え? 俺は大暴走スタンピードを起こしたいとは思わないのですが?」

 サツキのゾンビ3,000体アタックは記憶に新しいところであるが、タツキが正常であれば、あのような選択は取りようがない。例えば想像もしたくないが、チェリや誰か親しい者を害されて、俺が暗黒面に落ちる鬱展開への注意喚起だろうか?


「ちがうわよぉ。私たちが起こすのは、その予行演習みたいなものよぉ」

「はい?」

 予行演習、それは、本番を想定した行為。


「本当の次元侵略スタンピードは、時々起きるから気をつけなさいなぁ」

「儂らはイロナシと、呼んでおる」

「別の次元からぁ、この世界のエリキシルを狙っている奴らがいるのよぉ」

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