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ダンジョンマスターと生贄の少女  作者: 緑 素直


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21/111

19:ダンジョンマスターは商館の建築を始める

 抜けるような青空、は、ダンジョンなので見えないが、それがあるだろうことを容易に想像できるほど、暖かな陽の光で満たされた迷宮都市ダンジョンタウンが中央広場、《水晶の広場クリスタルガーデン》。


 あのあたたかな飲み会から一夜明け、タツキはお抱え商人トーマスのための商館建築について頭を悩ませていた。


 チェリはエルローネと常識の勉強中。後で、復習の意味も込め、タツキはチェリからそれを習う予定。ロベルトは本日のつまみ、もとい食料の調達のためダンジョン外周辺で狩りに挑戦中だ。


 よって今日のお供は参謀(仮)であるウォルフである。


「なぁウォルフ、商館ってのは、倉庫と宿泊施設って理解でいいのか?」

「…はい。加えて…取引ができる…部屋と、場合によっては…店舗にできる…空間もあると良いかと」


 相変わらずの話し方だが、今日の彼の声には張りがある。

 その原因は、ウォルフが大事そうに小脇に抱えている分厚い本だ。


『世界原書』と呼ばれるシリーズ物で、主に魔族系ダンジョンの宝箱から稀に出現する、文字通りの希少本らしい。発見されると好事家や研究者の手にわたってしまうらしく、図書館通いしかできない駆け出し冒険者であるウォルフには高嶺の花だったようだ。


 無論、タツキならばエリキシルが許す限り出し放題。

「まだ違うやつが何冊か出せそうだから、読み終わったら教えてくれ」

 今朝、そうウォルフに告げたところ、ロベルトやトーマスよろしく潤んだ瞳で忠誠を誓われてしまった。


「とりあえず、先に道を作っておかないとな」

 タツキは脳内で《ダンジョンマスターの本能》を展開する。

 創造するは、≫ダンジョン≫床≫舗装≫石畳_パーツランクE


「噴水周辺は皆の憩いの場にするとして――」

 ギュゴゴゴゴと、何かが凝固するような音を立てながら噴水を中心とした同心円状に石畳が広がっていく。


「――道路の幅はこれくらいか? メインストリートって感じだな」

「いえ…、もっと、広く…。馬車が余裕をもってすれ違えるくらいが…良いです」

「なるほど、馬車か」


 タツキはウォルフのアドバイスに従ってまずは道路を整備していく。

 今後の交易を考えると、あの崖を螺旋状に下っていく今の入口を見なおさなければならない。


 森側にドカンと空けるか。

 単純に考えていたタツキを見透かすように、ウォルフが口を開いた。

「それから…忠告、です」

「ん?」


 気持よく道路を拡張していくタツキにウォルフはいつもの陰気な表情で告げる。

「都市は…攻められる、事も、考慮して…建造、すべきです」


***


 さらに数日が経過。

 道路の敷設は完了し、いよいよタツキは商館の建築に入る。

 昨日までに、ウォルフやトーマス、エルローネの知識を合わせ、その青写真を完成させたのだ。


「ごはんは美味しいのがいいです!」

 というチェリの意見は、どう取り入れればいいかわからなかったが、タツキたちの生活スペースにおいて大変重宝している調理器具、曰く、灼熱床を応用したコンロ及び、氷結トラップを応用した保冷庫を厨房に標準装備することにした。


 その結果、商館は3階建てとなる。


 1階は吹き抜けのエントランスに、商談を行う応接間。さらには立食パーティーから舞踏会までこなせる多目的ホール。そして、その人数をまかなえるだけのスペースを持つ厨房。

 2階は客の宿泊施設だ。そして3階にトーマスたちの生活スペースと執務室を設ける予定。


 無論、別棟として十分な広さを持った倉庫を2棟。さらに、店舗として利用可能な建物も計画中である。


 結局の所、どこが「一等地」になるのか都市計画の知識のないタツキはさっぱりだったので、3階建ての商館は噴水広場から少し奥に入った所、ダンジョン1Fの最奥に建築した。


「タツキ…様、本来そこには、領主の館…を、建てるのではないでしょうか」

 と、ウォルフがやや呆れ顔で言っていたので、一等地であることはおそらく間違いないのだろう。


 入り口を崖側から森側に移したと仮定すれば、ダンジョンタウンに入って最初に見えるのが真っ直ぐな道路と、その先の優美な噴水。少し歩けば、水煙の向こうに、3階建ての立派な商館が見える寸法になる。


「よし、最終チェックだ」

>ユニット≫魔族≫魔人種≫インプ_ユニットランクE


 ダンジョンタウンの建設に際しても、ダンジョンマスターの魔技アーツは有用だ。

 タツキは、天井の適当な3地点に召喚したインプの視点を借り、道路がまっすぐ敷けているか、噴水広場の石畳をちゃんと同心円状に広げられているかを逐一確認しながら作業を進めてきた。


 故に、この作業を、あたかも都市建築系のゲームのような感覚に落とし込めているのだ。蝙蝠の視点は、ちょうど俯瞰視点になるので、その感覚が尚更強い。


――魔技アーツ:ユニット憑依を発動

《魔人種》カテゴリでは最弱ユニットである小悪魔インプ。

 タツキは仕上げとばかりにその1匹に憑依し、そう低くはない天井ギリギリを飛行する。

「やぁ、なかなかいいなぁ」

 紺色の、ゴムのようでありながらぬめりを帯びた肌。そして、コウモリの翼。その鋭い牙を持った口からタツキの言葉が漏れる。


 眼下に広がるのは、噴水広場を中心とした、十字架のように広がる道路。広場の周囲は商店街とすることを想定し、そのさらに外側に、噴水を中心とした正円を描く道路が走っている。


「馬車の動線と…人が集まる場所とを、重ねると…事故が増えます」との、ウォルフの言葉に従って、敷いた物資運搬路だ。

 その終着点が、十字架の先端に位置するトーマスの商館となる。


「確かに空から見ると領主の館そのものだな」

 土と石畳、そして噴水しか無い、茶色と灰色の世界だが、タツキはそこに活気あふれる街の様子を幻視する。

「よし、トーマスが帰ってくるまでに入口の場所を変え、驚かせてやろう」

 タツキは良い気分でそうひとりごちる。


 しかし、それを実行するには一つ解決しなければならない問題があった。


 ネイハムを弔った飲み会から3日目。

 そろそろトーマスがクワナズーマに着いただろうかという頃になって、ついにエリキシル残量がタツキの想定する危険域に達したのだ。


 己の命に等しいエリキシル。

 この何が起きるのか分からない世界で、減らしすぎるのは得策ではない。


「しゃーない、一旦作業を中止して、チェリと一緒に勉強してくるか」

 青写真は完成。場所も決定。そして骨組みとなる壁パーツの配置は終えた。

 となれば、あとはけがの2人をからかって、癒されるとともにエリキシルを補充するのが一石二鳥。


 憑依を解いたタツキは、転移するのも勿体無く、水晶を通して降り注ぐ暖かな陽光を浴びながら、てくてく歩いて下層の生活スペースへと向かうのだった。


***


 基礎工事を終えた感満載のトーマスの商館。

 今度は地上から、それを見上げる形でタツキは歩く。


 基礎と主要な柱、一部の壁が完成しているその建造物が水晶の広場クリスタルガーデン最奥だ。さらに奥にあるのは天井へと続く見事な岩壁のみ。湖に流れ込んだ土砂が堆積した後に隆起したのか、そこには地層が歪んだ縞模様として描かれている。


「攻められることを考慮、…か」

 岩壁には先に続く通路があった。もともとの、地下1階から2階へと続く階段だ。そこを下れば、元のダンジョン、もとい、タツキたちの生活スペースに繋がる。


 タツキはウォルフの言葉を反芻しながら階段を下る。

 このダンジョンは、都市として住人を募っている。その情報は、今、この世界の住人のどれくらいに行き渡ったのだろうか。


 タツキが宣言をした際、地上に居たのはトーマスの付き人たち及び冒険者ギルドの調査団だったという。

 順当に行けば、彼らとトーマスが、今頃このダンジョンから最も近い都市クワナズーマにたどり着き、その情報をもたらしている頃だろう。


 魔法のある世界だ。無論、何ら情報伝達の法術的「裏ワザ」も存在するかもしれないが、あまりに早くこのダンジョンにやってくる者達は、ここがダンジョンであるという情報しか持たない者、つまり、ダンジョンにとっての正規のお客様、単なる探索者である可能性が高いということになる。


 ウォルフはそれを見越して述べたのだろうか。

 あの痩せっぽちで陰気な法術師キャスターは口数が少ないため真意を読みにくい。もちろん、チェリやエルローネのように《けがれ》を持つわけではないので、感情面から察することも難しい。


「あー…。定番だが、ガーゴイルでも置いといて、門番代わりにしておくか」

 部下の情報を正確に把握するのは上司の責務。

 真意は後でキチンと聞くことにし、仮の対策を施しておくこととする。どこの世界においても、結局のところ報連相ほうれんそうが仕事の基本だ。


 ユニットツリーの《魔族》を展開。《魔人種》へと進み、ランクDのユニットであるガーゴイルを選択する。


 二重に歩く者ドッペルゲンガーも属するこの《魔人種》というカテゴリーは、ランクに比して高い戦闘能力と、それぞれの個体が何かしらの1芸を持っているのが特徴だ。ガーゴイルの特徴は、石の肌による硬質化と、それを利用した擬態である。


 一方で同じ魔族系統でもゴブリンやオークが属する《亜人種》カテゴリーは、特異な能力を持たない。その代わり、扱いやすく消費エリキシル量が明確に少ないという特徴を持つ。


 まるで一年戦争における***軍と連邦軍のような違いではないか。


 ならばついでに、紺色三連星として3匹のインプも残しておくことにしよう。

 固有名詞の出てこない脳内で、タツキはひとり盛り上がる。

 実際に魔技アーツで複数の《ユニット視点》を扱えるタツキにとって、天井からの視野を得られるのは大きなアドバンテージだ。


 残りエリキシル量を考慮しつつ、タツキは町の要所に数体のガーゴイルを配置。

 蝙蝠たちには待機ポイントを指示してから、2階層の生活スペースへと戻るのだった。


2016/01/02:

魔術師→法術師


2015/12/31:

モンスター、差し替えました。

あと、次話は予定通りの間隔であげられそうな雰囲気デス。


2015/12/28:

早速誤字を1個修正

表現を微調整


2015/12/27:

いつも読んでいただきありがとうございます。

自転車操業気味です。。。この話は改稿が増えるかも&次話はちょっと遅れるかもです。

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