17pt 他人の物も私の物
今まで誰も本気でやろうとはしなかった、犯罪組織の捜索。それを光は全力で行ったのだ。
その結果が、組織壊滅という事実である。
「向こうもかなり油断していたようですわね」
「当たり前だよ。誰もそこまでの金額をかけて本気でつぶしに来るなんて予想しないから」
父親は光のつぶやきに苦笑いを浮かべる。だが、それも当たり前のことだ。
父親だって光がそこまで力を入れて組織の壊滅に動くとは思っていなかったのだから。というより、そんなことをする人間がいるとは思っていなかったのだから。
ただ、終わってみると彼にも利益はあった。
犯罪組織なだけあって、
「いろいろとため込んでましたわね」
「そうだね。中には他財閥の裏取引のことに関する書類まであったんだから………いい収穫だったよ」
金銀財宝。光の使った資金以上の金額となる諸々が転がっていたし、他財閥の弱みも握れた。これはもう父親からご褒美がもらえるレベルである。
「といっても、欲しいものあるのかい?」
「うぅん。ただでさえ今いろんな仕事をしていますし、あまり会社が欲しいとも思えませんわね」
「だよね」
「となると、技術者とかですかしら?」
「というと?」
光にとってほしいものというのは非常に数が少ない。なにせ、本当に欲しいなら大抵は手に入れられるのだから。
では手に入れられないものがあるとするならば、光であってさえも簡単には見つけられない高度な技術を持つ人間、
例えば、
「ここからここ、だね?」
「ええ。そのあたりを私の配下としてほしいですわ」
「分かった。良いよ。ではここだけは開放しよう」
危険な存在を手に入れる許可を父親から貰う。
それは最近確保したばかりの、
「さて、あなた方は暗殺者な犯罪者ではなく、私の護衛になって頂きますわ」
「ほぅ?組織をつぶしたお嬢様が、恨みを買っている可能性まであるというのに護衛にするのか?」
「ええ。その通りですわ」
光が潰させた犯罪組織。そこにいた中で生き残り捕まえられた者達だ。
光が選んだのはほとんどが光と同年代とまではいわなくとも、少し上くらいの子供達。
中には光よりも年齢の低い者もいる。
そんな中、代表として光と話をするのは、唯一の大人。
「子供の中でも、選んだのは教育が完全には施されていない者達。こちらで教育を行なえば危険性は低いと考えますの」
「でも、俺は違うぞ?」
「確かにあなたは違いますわね」
大人であるからこそ、すでに組織による洗脳じみた教育は完了されている。下手に野放しにすれば、すぐに光が復讐されてしまう可能性も高い。
ように思えるが、
「でもあなた、組織の中では異質なことに、外の世界を知っていますわね?」
「っ!」
「あなたは主に表社会に潜入し情報収集を行っていた。ですから、組織に教えられた以外の生き方も知っているはずですの」
「……確かにな」
大抵の組織の人間は組織の拠点に閉じ込められ、そこから出ることはほぼない。
だが、そんな中で数は少ないが情報収集のために外へ出される存在もいるのだ。光はその中から、特に組織の教育へ強い疑いを持っているものを選んだのだ。
という感じになっているが、実際はスキルで選んだだけであって深い理由などはない。
というか逆に、理由など後付けである。
「その疑いをより深めてこちらの教育を受けさせれば、組織から心を離せるのではないかと思いますの」
「なるほど。まあそういうことなら納得しよう。ただ、納得するだけでお前の首を狙わないということではないのを覚えておけ」
「ふふっ。覚えておきますわ。あなたも、組織をつぶしたのは誰かというのを忘れないでくださいまし」
光は不敵にほほ笑む。そこには隠し切れない自信がうかがえた。
なぜかって?それは勿論、
「それではあなたたちは、今日から私の下僕ですわ!!」
《悪役令嬢ポイントを10pt獲得しました》
《悪役令嬢ポイントを10pt獲得しました》
《悪役令嬢ポイントを10pt獲得しました》
《悪役令嬢ポイントを10pt獲得し………
護衛という名目ではあるが、その実態は彼女の下僕に近い。そのため、下僕を作ることにより悪役令嬢が大量に獲得できるのだ。
――手には入ったけど、最初の下僕な作弥のときほどポイントが高くくないね。何か悪役令嬢っぽさに違いがあったかな?
同じ下僕を作る行為であっても、システムの管理者からは悪役令嬢っぽさに違いがあると判断された。
そこに疑問を覚えつつも、光は獲得したポイントの使い道と、今後の護衛となる者達への教育とその後の方針を考えていくのであった。
「戦闘面での教育を考えると、あなたは欠かせないんですわよねぇ」
「だろうな」
「ということで早く絶対服従してくださいまし」
「いや無茶ぶりすぎるだろ!あんなにこれから見せつけていくみたいな雰囲気だったのに!」
「うぅん。そういうことをするのは面倒ですし時間ももったいないですわ」
「そこを面倒くさがるなあぁぁぁ!!!」




