12pt みんな取り巻きですわ
ある程度勝負は続いていく。炎勝だって頑張ってはいるのだ。
だが、
「もう、無理。もう………………」
彼にはまだまだ野菜と言う名の地獄が待ち構えている。彼の瞳からは、元気あふれる子供では考えられないほどにハイライトが消えていた。
最初こそ勢いでどうにかできていたが、さすがにここまで長引いてくると耐えきれなくなってくるのだ。頑張った方ではあるのだが、ただひたすら光の掌の上で転がされただけである。
「炎勝。野菜を食べたくないなら、私の取り巻きになれば良いだけなんですのよ?」
「お、俺は………」
「無理はよくないですわよ。まだまだビンゴは続きますの」
光の甘い言葉。それが炎勝の頭の中に侵入し、負けたくないという感情を打ち消しむしばんでいく。
長い葛藤の末、
「俺、取り巻きになる」
「おぉ~。それはよかったですわ……………いい選択ですわね炎勝。これで、もう野菜をここで食べる必要はないんですのよ」
「お、おぅ………………」
燃え尽きたとでもいうような雰囲気で、光の言葉に空返事をする炎勝。
こうして光は、1人目の取り巻きを確保するのであった。
《悪役令嬢ポイントを30pt獲得しました》
悪役令嬢ポイントもこれにより獲得。実はこの圧倒的に光が有利な勝負を仕掛けた段階で40ptも獲得していたりしたので、合計70ptも獲得したことになる。
勝負を仕掛けた段階で紫金作弥を下僕にしたときと同等のポイントが得られていたりする。
これを考えると、光もポイントを得られる条件などの悪役令嬢っぽさの基準が分かってくるような気がした。
感覚でしかないのだが、それを得られたのは今後のためにも大きい。
さらには、
「で?どうしますの?私は取り巻きを得られるようになりましたけど」
「ん。そうだな………では僕も取り巻きになることにする」
取り巻きを作るのが面倒くさいと言っていた零里の勧誘にまで成功した。
これにより、
《悪役令嬢ポイントを30pt獲得しました》
――よぉし!あとで向こうの財閥とかが動いて取り巻きではなくなるかもしれないけど、とりあえずポイント貰えただけでも大きい!!
赤子の頃に予定を立てていたいくつもの取得予定だったスキルたち。今回のポイント取得で、それらが予定通りとまではいかなくても獲得できるチャンスではあるのだ。
間違いなく大切なポイントである。
そして、さらに幸運は続く。
なんと、
「あ、あのぉ。わ、私も、それに参加していいかな?」
「あら?赤金の?良いんですの?」
「う、うん。小百合だよ。私、お父さんから光ちゃんが何かするときにはできるだけ参加しろって言われてるから」
「ふむ。では、小百合も取り巻きにして差し上げますわ!」
赤金財閥の令嬢である小百合。少しおどおどしているものの、挨拶は返してくれたので一定以上の好感を光は持っている。
基本的に今までの行動を見る限り人とかかわるのは避けているようで、光以外とあいさつですらまともにしているのは確認できていなかった。
――とはいえ礼儀がないわけでもないし、かかわるのは問題ないね。
《悪役令嬢ポイントを30pt獲得しました》
これにより既に取り巻きは3人となっている。財閥の者達がいる中で、一時的といえど3人も取り巻きにできたのは非常に大きなことだ。
さらに、
「下僕!あなたも私の下僕なんですから、強制的に取り巻きでしてよ!」
「え?あ、うん。わかったよ?」
分かってはいなさそうだが、下僕こと紫金作弥も取り巻きにする。これで取り巻き4人で、集団のボスとなる光を合わせれば5人。
この財閥が集まる中で5人もいるとなると大所帯だ。
この流れが生まれるとなると、
「お、俺もやりたい!」
「私も!」
「僕も!!」
よく分からないけどみんなやってるから自分もやりたい。なんて考える者たちが出てくるのだ。
人に流されて地獄に行こうとしているのである。
「あら?これ以降私の取り巻きになったら、私の命令は絶対で取り巻きから外れるには罰金が発生しますわよ。よろしくて?」
「良いからやりたい!」
「別に何でもいいよぉ!」
やりたいがために、光の注意すら効果はない様子である。もちろん彼女も本心から心配して忠告しているわけではないのだ。
で、こう流れができてしまえばあとは簡単である。
「それでは全員、今日から私の取り巻きですわ!」
「「「「いぇ~い!!!」」」」
《悪役令嬢ポイントを30pt獲得しました》
《悪役令嬢ポイントを30pt獲得しました》
《悪役令嬢ポイントを30pt獲得しました》
《悪役令嬢ポイントを………………
ポイントもがっぽりである。この日だけで100日分近いポイントを稼げてうっはうはな光なのであった。
もちろん、
「あっ。他財閥からお金が入ってきてますわ」
「あぁ~。それ、取り巻きから抜ける罰金だってさ」
すぐに取り巻きでなくなるものが続出したが。
それでも金とポイントを特にリスクなく得られたのだから充分であったとはいえる。




