表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/23

10pt 野菜を食べなさい

「うおおおおぉぉぉぉ!!!デケェェ!!!俺これにするぜぇぇ!!!」

「それ僕のぉぉぉぉ!!!!」

「俺も欲し゛いぃぃぃぃぃ!!!!!」


光が権利書を当てた後もビンゴは続く。

現在は光の次にビンゴした子が例の巨大な箱を要求して、他の子供たちもそれが欲しかったと騒ぎもめているところだ。

司会者も今回はさすがにビンゴだしルール通りにやらないとマズいと止めに行っている。


が、そんな光景はどうでもいいと言わんばかりなのが、


「30兆だそう。ぜひとも売ってくれ」

「いや、我が財閥に譲ってくれないか?代わりにそちらの欲しがっていた土地をいくつか譲ろう」

「例の技術、提供する用意がこちらにありますよ」


大人たちである。

光として要らないものであった権利書だったが、大人たちにとってはどうやら重要なものだったらしく。

権利書を渡された父親が、各財閥の人間から交渉を受けていた。


当然そんな状況であれば交渉で優位に立てるのは父親であり、


「ハハハッ。せっかく娘が当てた景品だというのに、すぐに手放してしまうのは親としてねぇ」


「だ、だったら50兆でどうだ?娘と思い出を作るのにも娘の機嫌を取るのにも余裕な金額だろ?」

「譲る土地にテーマパークも一緒に作っておこう。娘も満足すると思うぞ」

「ふむ。娘さんの会社を大きくできる技術もつけましょう」


光まで使って条件を引き上げていた。

雰囲気を見る限り、本人としてはそこまで欲しがってはいなさそうに見える。ただ、交渉のためだけに持っているかのようだ。


 ――あんまりしっかり見れなかったけど、どういう土地なんだろう?ほかの財閥が欲しがるってことは、場所が良かったりするのかな?もしくはかなり広いとか?


光にはなぜ各財閥がそこまでしてほしがっているのかは理解できない。

だが、1つ間違いないことは、


「ふむ。まあいろいろ言ってもらっているが娘と話もしなければなならないし、後日個別に相談させてもらおうか」


「まあ、致し方ないか」

「むぅ。こればかりは頷くしかないな」

「良いでしょう」


父親がさらに交渉で引き出そうとしていること。

個別の交渉ということは他がどういった条件を出しているのかわからず、確実に結果を出すためには対価を必要以上に大きく示さなければならない。

だがそれでも、それを理解していても彼らはうなずくしかないのだ。


 ――いや、そこまでして欲しいものって何!?


土地の権利書をもう少しじっくり読むべきだったと今になって後悔する光なのであった。



「なぁなぁ」


光が大人たちの醜く汚い部分を眺めていると。

突然後ろから声をかけられる。聞き覚えのある幼い声に振り返ってみれば、


「あぁ。黄金。でしたかしら?」


「おう!そうだぜ!でも、炎勝って呼んでくれ!」


「分かりましたわ炎勝」


挨拶を返してきた数名の中の1人。黄金(こがね)炎勝(えんしょう)

彼はほかの子供達よりはましなように思えるが、彼は子供たちがじゃれあってるときに率先して加わりに行って暴れていた。光にとっては評価が難しい相手である。


「で?何か御用ですの?」


光は単刀直入に用件を尋ねた。

けんかっ早い印象のある彼には光もすくなくない警戒を抱いているのだ。今のところ彼女は、何1つとして戦闘には役立つスキルも持っていないわけだし。

そんな彼女の心の内を知るわけもなく、


「ん~。暇だから遊ぼうぜ!」


炎勝はそんなことを言ってのける。実に面倒な話だ。

いつ癇癪を起こして暴れだすかもわからないものの相手をしなければならないのだから。


「遊ぶ……まあ構いませんが、何をしますの?」


「ん~?………………なんだろうな?」


光の問いかけで炎勝は首をひねる。どうやら何も考えていないようだった。

2人でしばらく考え、


「では、数字当てなんてどうですの?」


「数字当て?」


「ええ。今やってるビンゴで、次に出る数字が何かを予想するゲームですわ」


「ほぇ~」


よくあるゲームだ。

が、さすがにそのままでは駄目だと光は考えている。単純で面白みが足りず、さすがに途中で飽きてしまうはずだ。

となれば、


「当てたら好きなものを1つ食べてよくて、外したらそこの野菜を食べる、とかどうですかしら?」


「うげっ!野菜!?」


炎勝が顔を大きくしかめる。どうやら彼も子供らしく野菜嫌いなようであった。

ちなみに、光は特にそういった好き嫌いはない。辛味や苦みの強いものとなると話は別だが、野菜程度では何も問題なかった。

そのためこれはただ炎勝をいじめるだけのゲームとなる。


「別に当てれば食べなくていいんですわよ?……というかあなたまさか、野菜食べれませんの?まさか黄金財閥の者が野菜すら食べられないなど、あり得ませんわよねぇ~?」


「くっ!た、食べれるし!全然余裕だし!」


光のあおりにより、煽り耐性皆無な炎勝は掌の上で転がされる。

その結果、


「じゃ、じゃあ、やってやるよ!もし食べられなかったら、取り巻きな!!」


「取り巻き?」


何か妙な流れになった。

が、ただ炎勝が余計に自らを地獄に突き落とそうとしているだけなようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ