2-20 もじゃもじゃヒゲの白髪の老人
***
「Whip、Whip、Whip」
オオオオオオおおおオオおおおオオオおオ! オオオオおオオオおオオおおオおおおオオ!
オオおおおおおおオおおオおおおおおオオ! オオオオオオおおオオおオおオオおおおオ!
力球を躱しながら、セバスの肩口から数本の血の触手が産まれ、敵へと伸びる。
血の鞭は正確に関節部を捉え、敵のキョンシー達は体勢を崩した。
ガッキイイイイイイイイイン! とハンマーが地面を砕き、雪が舞い上がった。
身体能力でもPSI出力でも敵のキョンシー達の方が上だった。
セバスのハイドロキネシスは自分に触れていて、尚且つヤマダの血が混ざった液体以外は操れない。とても戦闘向きではない。
ラプラスの瞳を用いた未来計算。ヤマダ以外でこの戦闘を継続できる人間は居ないだろう。
──一手間違えればチェックメイト。
「ぞくぞくしマス」
ヤマダは嘯く。セバスと共に溶け合えるこの時間が何よりも好きだった。
「うおおおおおおおおおおおお!」
背後で恭介の叫び声が聞こえる。あちらにも力球は放たれている様で、ホムラのパイロキネシスの音もしていた。
敵のキョンシー達の意識は恭介達に向いている。アネモイとココミ両方を狙っている様だ。
「Gown、Spear」
──指示を出してる人間は何処に?
セバスに抱えられ。高速に回転する視界の中、ヤマダは敵のキョンシーへ指示を出している人間を探した。
グルグル、タンタン、グルグル、タンタン。
ステップと回転をめちゃくちゃに挟みながら、視線がある人影を捉える。
気象塔から五十メートルほど離れた場所、建物と建物の間の裏道、双眼鏡の様な物でこちらを見ていた。
ジジジ。ラプラスの瞳の右のダイヤルを回し、その姿をズームする。
そこに居たのは白髪の老人だった。もじゃもじゃヒゲで顔当たり自体はとても優しそうだ。
その老人の顔にヤマダは見覚えがあった。
──あれは、
そう思い当たった直後、視線に気づいたのか、もしくは観察が終わったのか、老人は裏道の奥へとその姿を消した。
──……追手を出す余裕はありませんね。
ここに京香が居れば話は別だったが、彼女が来るのにまだ三十秒程かかる。
「この場を乗りきるのが先決ですネ」




