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② 密猟者は何処だ?




***




〔困り事、悩み事、荒事、無料で相談受け入れます!!!!!]


 そんな胡散臭い折り畳み式プラスチック製看板を掲げて、霊幻はスタスタとシカバネ町北区歓楽街を歩いていた。


 怪しさ満点な霊幻の行動だが、町の人々が気にする様子は無い。


「さあ、町民諸君! 吾輩へ相談するが良い! 何でも解決してくれよう!」


 高らかに響く声に町民達は「はいはい」と言った態度でチラリと霊幻を見る。


 中には「ああ、また、うるさいのが来たよ」と顔を顰める者達も居たが、霊幻の行進を止める者は誰一人として居ない。


 狂笑(きょうしょう)の霊幻と言えばシカバネ町の有名キョンシーだ。


「そこのゲーセンで遊んでいるJK達よ! 何か困り事は無いかね!?」


「写真一枚良いですか?」


「よかろう!」


 パシャリ! 途中途中で記念写真を撮られながら、霊幻は歓楽街を隅から隅まで練り歩く。後にSNSにピースサインをしたJDJKJC達に囲まれる霊幻の写真が多数アップされ、例によって京香がお叱りを受けるのだが、それはまた別の話である。




 午後三時、霊幻の懐のスマートフォンがピーピーとアラームを鳴らした。


「……ふむ?」


 霊幻は立ち止まり、結局今日は役に立たなかった看板を傍らに置いてスマートフォンを見る。アラームは着信を告げており、そこには京香の名前があった。


 ピッ。すぐに耳に当て霊幻は京香からの連絡を聞く。


「どうした?」


『密猟者のアジトを一つ見つけたわ。合流したら場所を教えるから、葉隠邸に来なさい』


「了解。十五分で行く」


 ピッ。霊幻は看板を折りたたみ懐へ入れ、パシャパシャと写真を取ってくる学生達に手を振り返した後、一息にダンッ! と跳び上がり、三階建ての服屋の屋上へと着地した。


「良し」


 バチバチバチ! 霊幻の体が細かく帯電し、数秒後、その足元に強烈な雷撃が放たれた。


 バッチィィィィィィィィィィィィィィィィィン!


 紫電を残して霊幻の体が空へと飛び上がり、その体は稲妻と化した。




 ズガアアアアアアン!  霊幻は葉隠邸の庭園に落雷した。


 強烈な轟音が響き、邸内からドタバタとメイド服を来た子供姿のキョンシー達が現れる。


 そして、最後に京香が出てきた。服は乱れ、疲れた顔をし、何故か口元を拭っている。


「密猟者達の居場所は?」


「一緒に行くわよ。ゴーサイン出すまでは大人しくしてなさい」


 何と非効率なことかと霊幻は「ハハハ」と笑い、蘇生符が帯電した。


「合流したら教えると言ったでは無いか」


「ええ、言ったわね」


 何故速やかに教えないのか。こうしている間にも、撲滅対象はのさばっているのだ。


 撲滅、撲滅、撲滅せねば成らない。一秒たりともこの世に存在しては成らぬ。


 だと言うのに、分かっているはずなのにこの相棒は撲滅対象の場所を吐かなかった。


「ほら、さっさと教えるが良い。吾輩が速やかに撲滅しに行こう」


 霊幻は京香を見下ろした。蘇生符が旋毛へとかかり、京香が不快そうな顔をする。


「ここで無駄に時間を使うのと黙ってアタシに付いて来る、どっちが良いか選びな」


 瞬時に霊幻の脳は予測する。こうなった相棒と争って得られるリターンはどれほどか。


「……良いだろう。京香、お前に従おう。案内しろ」


「はいはい」


 京香がちらりと出てきた葉隠邸の襖の奥を見た。記録からの予測をすると、そこにはスズメが居る。震えながら蹲り、聞き耳を立てて霊幻が去るのを待っているのだろう。


 スズメは大人と話せない。正確には京香以外の大人の前に出ることができないのだ。


 過去、シカバネ町の市民だったスズメは脳特殊開発研究所という組織に誘拐された。


 この組織の目標は超能力の開化。生体ランクがAだったスズメはそこでありとあらゆる極悪非道な人体実験を十年近くに渡って受けた。身体中の内臓は焼け爛れ、子宮からの細胞でクローンを何体も生成され、脳に四六時中電極が刺さっていたこともあったらしい。


 実験の副作用でスズメの体は十二の頃から成長が止まっている。


 トラウマからか肉体の不具合からか足腰が弱り、長時間立つこともままならない。


 そんなスズメが救出されたのは三年前。第六課の主任と成った京香の初仕事の時だった。


 霊幻はその場を見ていなかったが、救われたスズメには京香が女神に見えたのかもしれない。


「さっさと行くわよ霊幻。あんたがここに居るだけでスズメは過呼吸に成るんだから」

次回戦闘回です。

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