S1-6 アフタヌーンティーの前に
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「目当ての物は買えましたネ」
「素晴らしい茶葉です。茶葉自体に甘みがあります。明日は甘さ控えめのシュークリームを作りましょう」
「エクセレント。マカロンも作りなサイ」
ヤマダ達はシカバネ町の北区の茶葉専門店、『董風花葬』から出てきた。ここは緑茶、青茶、紅茶、黄茶、白茶、黒茶と、ありとあらゆる茶葉を販売する専門店である。茶葉は全て一級品であり、ヤマダは厚い信頼を寄せている。
テクテクテク。一歩後ろのセバスに茶葉が入った紙袋が抱えさせ、ヤマダはこの後のことを考えていた。
「さて、早く帰って、この紅茶を楽しむのも良いのですガ、アフタヌーンティーには早過ぎますネ。モーニングティーには遅過ぎマス」
「本日は良い天気です。この辺りを散策してみるのはいかがでしょう?」
「なるほド。雑踏は好きではないのですガ、たまには良いですかネ」
予定を決めて、ヤマダはキョロキョロと辺りを見渡した。北区は全域がほとんど歓楽街である。何か良い感じに時間を潰せる場所は無いだろうか。
そして、眼に止まったのは歓楽街で一際高い八階建てアミューズメント施設『有楽天』。最上階の映画館を筆頭に食事処からゲームセンターまで大体の娯楽が密集している場所だ。
「セバス、あそこに行きましょウ」
「承知いたしました」
*
十時半頃、ヤマダは有楽天を一階から歩いていた。一階には本屋や服屋、持ち帰れるスイーツ等を販売した店、そしてゲームセンターなどがあった。ヤマダはとりあえず目に付いた本屋に入り、適当に目に付いた文庫本を二冊購入した。
文庫本をセバスに持たせて、ヤマダ達は二階、三階、四階と上がっていく。
階を上がるごとに一通りの店をチラ見し、テクテクテク。五階にあった雑貨屋にヤマダの眼は止まった。
その雑貨屋は家具店で、機能性などをかなぐり捨てた家具を売っている様だ。
「セバス、これを見てくだサイ。この椅子、八本足ですっテ。収納しにくそウ」
「ふむ。これはこれは、蛸をモチーフにしているようでございますね。中々興味深いデザインです」
「買いますカ?」
「お嬢様が買うとおっしゃるのであれば、このセバス、渾身の模様替えを披露いたします」
「冗談ですよ、冗談」
ケラケラとヤマダは笑う。普段と違う場所に行くと言うのは中々に愉快だった。
「興が乗りましタ。この店で何かを買いましょウ。セバス、あなたも選びなさイ」
「承知いたしました」
チリンチリン。ヤマダ達は入口のベルを鳴らして、このオシャレ全振り家具屋へと入店する。
「あらまア、期待以上のカオス」
店の中は想像以上に訳の分からない空間だった。ここが現代アート美術館の展示室と言われたら、百人中九十人は信じるだろう。残りの十人は回れ右して逃げるに違いない。
ピョコピョコピョコ。店の奥から可愛らしい足音が聞こえた。踏むと音が鳴る幼児用の靴の音だ。
「「ご来店、ありがとうございまーす!」」
だが、現れたのは極彩色のアフロをしたごつい二人組だった。
「でっカ」
思わずヤマダは呟いた。霊幻より頭半分大きく、どう考えても日常生活には不便なほど肥大したアフロヘヤは天井を掠っている。
「おお! 可愛いメイドさんだぞ兄貴!」
「ああ! 綺麗なメイドさんだな弟よ!」
極彩色のアフロ店員は双子の様で、彼らの胸に付けたバッチには〝店長!〟と力強くペイントされていた。
「「ようこそ! 虹村兄弟の極彩ファニチャーへ!」」
モッサモッサ、アフロを揺らしながら二人の虹村店長はヤマダとセバスの周りをグルグル周回した。




