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④ 逃亡劇の終焉




***




 ポスッ。倒れそうになる愛しい姉をココミはその全身で支えた。


 ホムラの体は身体改造を受けていないココミでも簡単に支えられる程に軽い。


 こんなにも小さな体で彼女は自分を守ってくれようとしていたのだ


「……」


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


 クラッとココミはふらついた。自分がこうなると理解した上でホムラを眠らせたのだ。


 これ以上ホムラを戦わせる訳にはいかない。大丈夫だと言っていたし、彼女自身そう思っていたが、ココミにはもうホムラが限界でそれはどうしようも無い物だと知っていた。


「……すー……すー」


 ホムラは規則正しい寝息をたてている。


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


 これはココミのPSIに依る物だ。


――もっと早く使うべきだった。


 ココミは後悔した。ホムラが使うなと言っていたけれど、その言いつけを無視すればこうもホムラはここまで傷付かなかった。


 左腕は痛ましく折れていて、休むこと無く使い続けた脳はグズグズだ。


 きっとホムラはいつこの町に来たのかさえ覚えていない。


 逃亡劇はここで終わりだった。


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


 もう、どうしようもない。


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


 自分達の力ではこの終わりをどうやったって変えられない。


――だけど、


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


――だけど、


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


 クラッ。クラクラッ。ココミの頭へ痛みが襲う。ホムラが寝ている代償だ。


――これで、良い。


 ホムラが今まで痛みを肩代わりしてくれていた。ここからは自分が痛みを貰う番だ。


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


 ココミは寝息をたてるホムラの首元へ顔を埋めた。


 彼女のための痛みならば愛おしい。


「……おねえちゃん、ごめん、ね?」


 聞こえていないと分かっていてもココミはホムラへ謝った。


 ホムラが使わないでと言ったPSIを今こそ使うと決めたからだ。







 ココミを中心として力場が広がっていく。


 形は糸。細く柔らかなイトは無数に生まれ伸びていく。それはまるで蜘蛛の巣の様だ。


 折り重なり、縺れ合い、枝分かれを繰り返しながら、イトは巣と成った。


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


 広く広く広く広く広く! うねうねと巣は世界へと広がっていく。


 五メートル、十メートル、三十メートル。加速度を持ってイトは世界を包んでいった。


 蜘蛛の巣に飲まれた蛍光灯や監視カメラ達が一斉に不具合を起こして機能を停止する。


 イトは家屋さえも呑み込んで、僅かな隙間から屋内へと侵入した。


 住民達はそれに気付かない。テレビや電子機器のラグや点滅が僅かな違和感だった。


 そして、それに気付いた時には既に終わりだ。


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】

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