魔法の根源たる魂の訴え
師曰く
「詠唱とは、自己に眠る想いや心を言葉にしたもの。言葉であって言葉ではない。魂の訴えなのじゃ」
僕は現代日本で生を受け、先日20歳になったばかりの時にこの世界にきた。
僕がいた世界から見たら異世界という事だ。
その異世界では魔法が普通にあった。魔法は便利なものだ。でも使える人は限られる。その理由の一つが、師の言葉だ。
師とは、僕の師匠だ。魔法の師匠。
僕は異世界にきたとわかった時、嬉しい気持ちと怖い気持ち半々だった。
僕もアニメや漫画は好きだった。最近でていた異世界ものにも好きな話はあったから。
アニメや漫画みたいな冒険ができるかも知れないという嬉しさと、異世界に定番の魔物や魔法、戦争といった荒事に僕が対応できるのか、という怖さと不安があった。
だから僕は基本的に町で暮らす道を選んだ。
幸いにも僕には魔法の才能がほんの少しだけあったから、今の師匠に魔法の基礎を教えてもらいつつ、雑用をしながら日々を暮らしている。
「師匠、僕って魔法の才能ないんですかね……」
「ふん、なにを言うておる。魔法の才がないものは、そのコップ半分ほどの水すらも出すことはできんぞ」
師匠は僕が唯一できる水魔法で出したコップ半分ほどの水を顎で指し、めんどくさそうに答える。
「でも……師匠の言う想いや心の言葉ってのがまったくわかりません」
「それが簡単にわかればみな魔法使いじゃ」
師匠といつも通りのやりとりをして今日の修行が終了する。
修行といっても僕ではコップ半分ほどの水を出せば、その日はもう魔法は使えない。魔力がない、という訳ではないらしいので、師匠の言うように自分の心の声が聞こえていないって事なんだろう。だから修行ってのはもっぱら師匠の話を聞いて、自分と向き合う事だ。
「おぬしは少し頭が硬すぎるのう。コップ半分とは言え、詠唱なく魔法が使える弊害かの?」
師匠はそう言って、いつものように水魔法のお手本を見せてくれる。師匠からしたら簡単な、コップを水で満たす魔法だ。
「水の女神マールマンモ様、清流の音を流し、不浄なる空気を清めたる水を我コルマドが乞い求めん」
師匠がそう言うと、目の前にあったコップに水が満たされる。
何度見ても不思議だ。この水はどっから来るんだ? 空気中の水分を集めてるのか? その辺師匠に聞いてもわからないんだよね。魔法とはそういうもの、らしい。
ちなみに水の女神マールマンモ様ってのはこの世界の神様なんだけど、僕が同じ詠唱をしても、もちろん水は出ない。コップ半分どころか一滴もでない。
「そりゃそうじゃ。詠唱とは、自己に眠る想いや心を言葉にしたもの。言葉であって言葉ではない。魂の訴えなのじゃ」
つまり詠唱ってのは、その人だけの魔法使用方法ってことだ。希少な魔法使いの師匠に僕が簡単に弟子入りできたのも納得だよね。ちょっとだけとはいえ、詠唱なしで魔法使えるんだから。




