↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰雪のベルクレア  作者: ラッキー中学生
旅立ち編②
PR
54/54

第53話 『初めての武器』


 受付まで辿り着いたところで、クルエルは外套の内ポケットに手を入れた。

 そして、一つの巻紙を取り出す。


「討伐証の換金を頼みたいんだが...」


 そう言って、クルエルはギルドの受付嬢へ討伐証を差し出した。

 僕とティエラは、二人のやり取りをじっと見守った。


「討伐証の換金ですね。かしこまりました!」


 そう言い、受付嬢は討伐証を広げ中身を確認する。


 中央に描かれたナシランハイエナの絵。

 その下に記された魔物の説明。

 刻まれている【C】の文字。


 受付嬢は慣れた手つきで視線を走らせ、すぐ頷いた。


「確認いたしました。討伐型Cランク。こちらは、ナシランハイエナの討伐証でお間違いありません」


 そう言いながら、受付嬢が討伐証を『クルクルッ』と巻いていると、クルエルがそれを指差して尋ねる。


「この討伐証一枚で、どのくらいだ?」


「はい。ナシランハイエナの討伐証ですと、持ち込み数が比較的多いものになりますので、銀貨三枚に銅貨十枚といったところになります」


「やっぱり、そんくらいか」


 提示額が気に入らなかったのか、クルエルはほんの少しだけ天井を見上げた。

 もう少しだけ、高値で買い取って貰えると思っていたのだろうか。


 ややあって、クルエルは納得したように頷いた。


「よし、ならそれでいい。換金を頼む」


「かしこまりました! 少々お待ちください」


 受付嬢は笑顔でそう言うと、討伐証を持って、後ろにある階段を駆け上がっていった。


 その間に僕は、お金について尋ねた。


「なぁクルエル。金貨と銀貨、銅貨ってどのくらい価値が違うんだ? 俺、そこんとこだいぶ曖昧でさぁ...」


「お前盗人だったろ。盗った金使ったことないのか?」


「使ったことないわけじゃないが、あんま価値の差を知らずに使っていたんだ」


 そう言うと、クルエルは腕を組んで考え込むような表情を見せた。


「そうだなぁ。例えるなら...」


「金貨一枚あれば、質を選ばれなければ武具一式。銀貨一枚なら、二人ほどが宿で一晩休めるくらい。銅貨一枚なら、一般的な食料や雑貨を少し買えるくらいだ」


「そんなにも違うのか...」


「あぁ違う。だから、金貨を普段から持ち歩く奴なんてのは、よっぽどの金持ちか不用心なバカだけだ」


 Cランクの討伐証で、得られる銀貨はたったの三枚。

 ダンジョン難易度が低いから、仕方ないか。


 でもナシランハイエナの討伐証は、持ち込み数が比較的多いと言っていたから、持ち込み数が比較的少ないものであれば、銀貨十枚や金貨だって得られるのかもな。


 とはいえ、確実に金貨一枚を手に入れたいなら、最低でもBランク以上のダンジョンで、魔物の討伐証を得る必要があるのかもしれない。


 きっと、そうに違いない。


 そんなことを考えていると、階段から先ほどの受付嬢が降りてきた。

 両手には小さな巾着袋を持っており、袋の中で硬貨が触れ合う音が、微かに鳴っていた。


「お待たせいたしました! こちらが討伐証の換金額、銀貨三枚と銅貨十枚になります。ご確認ください」


 クルエルは巾着袋を受け取り、中身を軽く確かめる。

 それから「どうも」とだけ言って、袋をしまった。


 それを見て、受付嬢は丁寧に頭を下げた。


「またのご利用をお待ちしております!」


 この受付嬢は、終始とても愛想が良かった。

 それに比べ、周囲の視線は相変わらず冷たいまま!


 だから僕たちは、すぐさまギルドを後にした。


 外へ出ると、朝の空気がやけに澄んで感じられた。

 おそらく、ギルドの中に溜まっていた敵意と嫌悪から解放され、息がしやすくなったからだろう。


 締め付けられていた胸が緩んだことで、酸素が肺の奥深くまで流れ込んでいくようだった。


 とたん、胸の高鳴りが表に漏れ出るような顔つきで、ティエラは言う。


「これから、鍛冶屋に向かうのよね!」


 その顔は、ギルドでの緊張を忘れたみたいに明るかった。

 そんなティエラを見て、クルエルは口の端を上げた。


「楽しみか?」


 その問いに、ティエラはすぐに言葉を返した。


「もちろんよ! 私初めての武器なのよ!」


 その言葉で、ドロームでのティエラが頭を過った。


 ティエラが抱えるように持っていた大きな剣。

 あれは、彼女自身のものではなかったのかなと。


「ドロームで抱えるように持っていたあの大剣。あれは、ティエラのじゃなかったのか?」


「あー、あれは私のじゃないわよ。店主から借りたの」


 彼女は、僕にそう言った。

 たしかにあんな重たそうな剣を、小柄な彼女が振り回すことなんて出来ないだろう。

 それを考えれば、彼女自身のものではないと分かる。


「お前たち、ここがさっき話した鍛冶屋だ」


 突然そう言って、クルエルが急に足を止めた。


 僕たちの目の前にある建物は、さっきのギルドと比べれば然程大きくはない


         ――けれど。


 通りに面したその建物からは、ただならぬ存在感が漂っていた。


 粗く削った石を積み上げた外観。

 入口の上には、槌と剣を交差させた鉄の看板。

 煤に黒ずんだ煙突。

 そして、そこから立ち上る細い煙。


『カンカンカンカンッ!』

『カンッカンッ!』


(ここで、武器が作られているのか...)


 人を守るため、魔物を殺すための武器が。


 ティエラは、鍛冶屋から聞こえるその音に、耳を澄ましながら目を輝かせていた。

 でもなんだか、彼女がそんな表情になってしまう気持ちが、僕にも少しだけ分かる気がする。


 今から僕たち冒険者にとって、欠かすことのできないものを手にするのだから。

 彼女にとって初めての、自分だけの武器を。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

図々しいお願いで恐縮ですが、評価やブックマークで応援いただけると、飛んで喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。